ミリタリー

2022/08/24

【陸上自衛隊】第7師団・第11普通科連隊の89式装甲戦闘車&普通科隊員を解説

 

戦車に随伴ずいはんする普通科隊員と装甲戦闘車

 

 我が国において唯一の機甲師団である第7師団。前回はその要となる主力戦車について解説したが、陸戦の王者たる戦車といえど視界や射界などに制限があり、歩兵の待ち伏せ攻撃などには対応しきれない場合がある。その弱点を補うのに不可欠な存在といえるのが、装甲戦闘車などを装備し戦車部隊に随伴(行動を共に)可能な機動力を持つ第11普通科連隊だ。ここでは同隊の主要装備である89式装甲戦闘車と、この車輌に乗車する普通科隊員について解説しよう。

 

10式戦車&90式戦車についてはこちら

 


 

89式装甲戦闘車

 

砲塔には35mm機関砲KDEを装備。一般的な装甲車クラスなら一撃で貫徹できるほど強力で、対空射撃などにも用いられる

 

  • 製造:三菱重工
  • 全長:6.8m
  • 全幅:3.2m
  • 全高:2.5m
  • 重量:26.5t
  • 最高速度:70km/h
  • エンジン:液冷4サイクル直6ディーゼル600ps
  • 武装:35mm機関砲KDE×1、74式車載7.62mm機関銃×1、79式対舟艇対戦車誘導弾発射機×2
  • 乗員:3名+7名

 

 89式装甲戦闘車は戦車に随伴可能な機動力を持ち、本格的な乗車戦闘を可能としたIFV(歩兵戦闘車)である。90式戦車とほぼ同時期に開発され、平成元(1989)年に制式化された。車体は防弾鋼板の溶接構造で、砲塔にはスイス・エリコンが開発した35mm機関砲KDE、79式対舟艇対戦車誘導弾(重MAT)発射機を搭載。熱線暗視装置も備えるなど、採用当時の列国IFV(ドイツのマルダー、アメリカのM2ブラッドレーなど)と比べても高性能かつ大火力を有しているのが特徴だ。それゆえ高価となり、普通科教導連隊や武器学校など一部を除き、大部分が第11普通科連隊に集中配備されている。

 

主砲の35mm機関砲の向かって右側に、74式車載7.62mm機関銃を搭載

 

砲塔の両脇に79式対舟艇対戦車誘導弾発射機がある

 

車体両脇に6カ所、車内から小銃を射撃できるガンポート(銃眼)を備えている

 

車体後部には大きな乗降用扉が。こちらにもガンポートを1つ備えている

 


 

第11普通科連隊の普通科隊員

 

左から無反動砲手、小銃手兼LAM手、機関銃手、小銃手、小隊長(車長)、砲手、操縦手

 

 89式装甲戦闘車(89FV)を装備する第11普通科連隊は、陸自普通科の中でもトップクラスの火力と防御力を備えているのが特徴だ。一般的な陸軍では「機械化歩兵」と呼ばれるもので、89FVの場合は車輌を動かす3名の乗員と下車戦闘を行なう普通科隊員が数名乗車して分隊を構成する。

 

対装甲用の無反動砲、84mm無反動砲(84RR)を構える。スウェーデンのカールグスタフM2を豊和工業がライセンス生産したもので、対戦車榴弾、榴弾、発煙弾、照明弾等を撃つことができる。無反動砲手は自衛用に9mm拳銃を携行

 

LAMはドイツのパンツァーファウスト3をIHIエアロスペースがライセンス生産した携行対戦車兵器。重量は約12kg。ランチャーは使い捨て式で、照準眼鏡とグリップ部は再利用する。弾頭は先端部のプローブを伸ばすと対装甲用、そのままでは榴弾として使用できる

 

5.56mm機関銃MINIMIを構える機関銃手。分隊支援火器として高い射撃持続性を備えるのが特徴

 

隊員の背面には防護マスク、水筒、エンピ(スコップ)、救急品袋が装着されている。着席時に邪魔にならないよう、やや上の方に配置されているようだ

 

 月刊アームズマガジン2022年8月号では第7師団の編成・装備などについてより詳しく掲載されている。併せてご覧いただければ幸いだ。

 

Planning & Photos : 笹川英夫

取材協力:陸上自衛隊第7師団

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年8月号 P.112~115をもとに再編集したものです。

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×