エアガン

2022/09/13

【特殊部隊】ユーロサトリで見たフランス国家警察特別介入部隊、RAIDの実力

 

RAID

 

 陸軍、GIGNとフランスを代表する部隊がデモンストレーションを行なう、フランス国防省が開催するユーロサトリ。今回はそこで見たRAID、フランス国家警察特別介入部隊のデモンストレーションの取材レポートを公開しよう。

 

GIGNのデモンストレーションはこちら

 


 

フランス国家警察の特殊部隊はGIPNで、首都であるパリ周辺をカバーするのがRAID。国家憲兵隊のGIGNも含め複雑化したのでGIPNとRAIDを併せてFIPNが創設された。しかし、特殊部隊と警察、特に機動隊の間を埋めるBRIもあり余計に複雑化している

 

 最後にRAIDによるVIPプロテクションのデモンストレーションが行なわれた。フランス国家警察所属の特殊部隊であるRAIDは主にパリ周辺を担当しており、そのため豊富な予算が割り当てられ装備も最新のものが揃っている。隊員たちの給料もフランス国家警察で最も高いらしく、フランスの警察官は皆RAID隊員を目指すとすら言われている。それはともかく、「最新装備を見るならRAID」と言われていたので期待が膨らむ。

 

潤沢な予算を持つRAIDは最新鋭の装備を使うというのが定説だが、今回はかなり昔から使っているHK G36を使用していた。ちょっと前まではFN SCAR-Lだったのだが、一般警察でもG36が採用されたことから装備が一新されたのだろうか

 

RAIDのサイドアームもグロック。以前はグロック18を使い、32連マガジンを付けていた

 

 今回は博物館をVIPが訪問するという想定で、前日に周辺を警戒するところから状況が始まった。爆発物対策に、専門の訓練を積んだ犬を投入する。爆発物を発見しても犯人に気がつかれないように、吠えずに座って合図を送る。本来、前日のうちに危険物が発見されれば訪問は中止されるが、デモンストレーションのためミッションは続行される。

 

爆発物検知に特化した訓練を受けた探知犬。不審な物を発見すると犯人グループに悟られないよう、対象物の前に座ることで場所を知らせる

 

 翌日(という想定)、VIPが博物館を訪問。予定を終えて車輌でその場を離れる最中にテロリストの襲撃を受ける。VIPの乗った車輌がダメージを受け身動きが取れなくなったため、テロリストと抗戦しながら別の車輌へ移動。その際、後続車は他に脅威がないかドローンで周辺を警戒する。安全が確認されると、発煙弾で視界を塞いでいるうちにVIPを別車輌に乗り込ませてその場を離脱した。

 

VIPの乗った車輌が動かなくなったという一番やっかいな状況を想定してのデモンストレーションだ

 

もしこれがパリのど真ん中でも手榴弾を使うか疑問だが、耳が聞こえなくなるほど派手な爆発はこのデモンストレーション用にも思える。最後は煙幕を張りVIPを移動させる

 

ユーロサトリを開く意味とは

 

 このユーロサトリの初日、マクロン大統領が来場し、フランスが誇る軍事ビジネスを世界的に打ち出していくと発表した。元々フランスの軍需産業は巨大な収入源である。昨今の不穏な世界情勢を商機としているのだ。しかし、戦車や装甲車などの兵器以外に、軍や特殊部隊のデモンストレーションまでこの場で行なう意味とは何であろうか。国家防衛の力を見せつけるのは納税者の前だけでよさそうなものだが、わざわざ世界に見せつけるような形で実施するのはなぜだろうか。

 その理由はシンプルなもので、フランスにとっては特殊部隊すら商品なのだ。正確には、特殊部隊を運用するうえで培ったノウハウや技術、装備といったものを売り物にしている。テロや紛争の脅威にさらされながらも、高度な戦術を持つ部隊に乏しい国に対し「我々が訓練しましょう。値段は2週間で○○です」といった具合に営業をかけるわけだ。装備品によっては企業と特殊部隊が共同開発し、それを商品として展開しているものまである。一時期に比べると、コロナのおかげで…と言ってはなんだが、各国テロリストの活動はやや下火になりつつある。そのぶん、ロシアによるウクライナ侵攻が世界中の経済を圧迫し、先行きは未だ見通せない。下手をすればヨーロッパ全体まで火の手が回る可能性まである。そんな中で行なわれた今回のユーロサトリにはただの展示会以上の意味が込められているのだ。
 さて、今回はユーロサトリで行なわれたデモンストレーションを主に紹介したが、月刊アームズマガジン2022年9月号ではより多くの写真を掲載してこのイベントを解説している。気になった方はそちらも併せてご覧いただければ幸いだ。また、展示された新型の小火器は姉妹誌Gun Professionals9月号でたっぷり紹介している。ぜひそちらもご覧いただきたい。

 

 

フランス軍の銃器、部隊が気になった方はぜひ両誌をご覧いただきたい

 

Photo & Text:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年9月号 P.202~209をもとに再編集したものです。

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