2019/01/12
CUSTOM GLOCK WORLD/SHIN 【2019年2月号掲載】
実用性とカッコよさを兼ね備えたグロックカスタムの魅力
ポリマーフレームオートのデファクトスタンダード
米国の法執行機関の65%が採用するという、ほぼ独占状態にあるグロックピストル(以下グロック)。1980年にオーストリア軍にP80として採用されたグロックは、オーストリアのガストン・グロックによって設計され、ブローニングタイプのロッキングメカニズムを持つショートリコイルオペレーションと、ダブルカアラムによる多弾装マガジンを備えたオートマチックピストルだ。グロックは、それまでのハンドガンとは徹底的に異なるファブリケーションを備えているのが特徴である。ポリマー製フレーム&マガジン、ボクシーなスライド。民間市場を意識したスタイルの良さや装飾はまったく感じられず、まさに「常識に囚われない」デザインであった。ポリマー製フレームは金型による射出成型によって作られており、シリアルナンバーとスライドが触れるレール部分には金属プレートがインサートされている。スライドはCAD / CNC加工を使い、誤差なく均一な品質のスライドを人間の手を煩わせることなく製造することができた。銃器デザインの歴史において奇抜なアイデアの製品が成功することは稀であるが、グロックだけは例外であるといえる。グロックの登場以降、「ポリマーフレームオート」はその利点の多さから各社が競って開発する人気分野となった。
グロックカスタムの世界
シンプルなスタイルのグロックは、豊富なカスタムパーツとシンプルな構造からカスタム加工が追加しやすく、ユニークでオリジナルなモデルを生み出すことができる。グロックのカスタムの方向性は多々あるが、多くの人が滑りやすいと感じるグリップへの滑り止め加工がもっともポピュラーである。そして次にトリガーを軽く引きやすくするためのスプリングやコネクターと呼ばれる部品の交換。トリガー前面が平らな「フラットトリガー」へと交換するのも流行している。さらに今回紹介するZEVやエージェンシーアームズ、セイリアントといったハイエンドグロックを製造するメーカーによるスライドの肉抜き、軽量化もグロックをユニークなスタイルへと生まれ変わらせる。グロックカスタムは、オーナーが行なうDIYレベルから、専門のガンスミスによるカスタムまで幅広い。
今回は、グロック19をベースとしたシンプルなタクティカル向けカスタムを始め、スティップリング加工のやり方、そして複数のユニークなグロックカスタムを紹介しよう。
ZEV Technologies GLOCK CUSTOM
ZEVテクノロジーズ(ZEV)はハイエンドなグロック用カスタムパーツで知られる。トリガー周辺などのスモールパーツだけではなく、バレルやコンプリートスライドなど幅広いパーツを製造している。ここで紹介するモデルは、グロック17 Gen3をベースにZEV製パーツをふんだんに組み込んだナイトファイターカスタムグロック。残されているオリジナルパーツはフレームぐらいである。ほとんどのパーツがカスタムパーツへと交換されたハイエンドなモデルである。
サイレンサーコー製オメガ9Kサプレッサー。コンパクトながら消音効果の高いサプレッサーだ。
グリップにはスティップリング加工が施され、トリガー、マグウェルだけではなく、内部パーツもバレルもZEV製カスタムパーツとなっている。
サプレッサーをつけた状態での実射。グロックのようにショートリコイル作動のオートピストルではサプレッサーとの相性が良いものと悪いものがある。グロックはリコイルスプリングの調整が必要になるが、それ以外は快調な作動をみせる。
Agency Arms GLOCK CUSTOM
この銃は本誌にも以前登場したタクティカルトレーナー、ウィリアム・ペティ氏が使用しているエージェンシーアームズによるグロックカスタムだ。タクティカルトレーニングの場で激しく使用されても作動し続ける高い信頼性・パフォーマンスを備えたカスタムだ。
エージェンシーアームズは、新鋭のカスタムグロックメーカーである。CNC加工によって独特なテクスチャーを持つスライドと、丁寧なグリップへのスティップリング加工で、多くのシューターを魅了している。
Salient Arms International (SAI) GLOCK COSTOM
特徴的な肉抜きとともにフロントコッキングセレーションが追加されたスライド。軽いスライドは素早いフォローアップショットの助けになる。小型のシュアファイア製CX1ウェポンマウントライトが装着されている。トリガーは同社のストレートトリガーとなっている。夏場、IWBホルスターでキャリーした時にスティップリングが地肌に当たらないよう、グリップ左側はスムーズに仕上げられている。
スライドは大きく軽量化されている。
GLOCK PISTOL CARBINE
グロック34をベースにストック型アームブレイス、ALG製6セカンドマウントを使ってドットサイトとウェポンマウントライトを追加。さらにAAC社製サプレッサーを追加したグロックピストルカービンだ。サプレッサーはAAC製。147grの亜音速弾を使用すると着弾音のほうが大きく聞こえる。
スライド後部にはチャージングハンドルを追加。
ストック型アームブレイスによって肩付けしカービンとして使用できる。
GLOCK19 CARRY OPTICS CUSTOM
スライドに直接小型のドットサイトを装着する「キャリーオプティクス」カスタム。ドットサイトを装着することで素早くかつ正確に照準できる。マイクロドットと呼ばれる小型ドットサイトのサイズは年々小型化しており、強度も向上。現在では実用的なレベルに到達している。多くの特殊部隊のサイドアームに見られるカスタム加工であり、実戦でも多く活用されている。今回はグロック19Gen3をベースに、スライドへのトリジコン製RMRマイクロオプティクスの取り付け、フレームへのビーバーテール追加、スティップリング加工、マグプル製マグウェルの取り付けを行なった。
フロントサイトはドットサイトが故障した際のバックアップとして使用できるようにハイプロファイルタイプとなっている。
D.I.Y. Stippling
Stippleとは点画法を意味し、主にグロックを中心とするポリマー製グリップやパーツに熱したコテで点画を描く様に滑り止めを刻むことを「スティップリング」と呼ぶ。スティップリングは手軽に行なえて効果の高いカスタム加工であり、多くのカスタムメーカーが行なっている。またハンダごてを使って手軽に行なうこともできるので、自分好みのパターンを目指してチャレンジしてみてはいかがだろうか。
※本誌記事では作業手順もくわしくご紹介しています。ぜひあわせてご覧ください(WEB編集担当)
まとめ
グロックの成功はその基本性能の高さとともに、様々なカスタムを受け入れることのできるバーサタイルさ(汎用性の高さ)にもあると言える。シューターは目的、好みに合わせて多く用意されたカスタムパーツとの組み合わせ、DIYでのグリップへのスティップリング加工によってオリジナルのカスタムグロックを組み上げる事ができる。今回の記事が、エアガンをベースに自由な発想で自分だけのカスタムグロックを作り出す参考になれば幸いだ。
TEXT&PHOTO:SHIN
この記事は2019年2月号 P.108~115より抜粋・再編集したものです。