2019/01/19
PM-63 RAK【2019年2月号掲載】
マシンピストルの傑作、その魅力を再確認する!
旧ソ連衛星国時代のポーランドで生まれ、ソ連製のスチェッキンからPDWの座を奪ったPM-63RAKは、1965年の配備から半世紀に渡り戦車などの車輌や航空機のクルーなどに配備されてきたマシンピストルの傑作だ。その異彩を放つ形状や機構からくるキャラクター性から、日本でも意外と人気の高いこの銃の魅力を再確認してみよう。
「ポーランド生まれのPDW」
マシンピストルにはアサルトライフルやSMGよりも、何か特別なワクワク感がある。ストックを付けてフルオートで撃てたり、そのストックに本体を収納するなどのギミックが男心をくすぐるのだろう。ルガーP08やモーゼルM712のように、第一次大戦の頃から不安定なピストルへのストック装着は考案されてきた。そして拳銃弾をフルオート射撃できるMP40やステンMkII、トンプソンM1A1といったSMGが第二次大戦で活躍し、戦後もMP5やUZIなどの傑作SMGが誕生した。その一方で、要人警護や車輌・航空機搭乗員の護身用としては一般的なSMGでは大きすぎる場合もあり、よりコンパクトかつフルオートの火力を発揮できるマシンピストルが注目されたのである。ポーランドのラドムが開発したPM-63 RAKも、ポーランド軍の車輌乗員や航空機の搭乗員向けのPDW(PersonalDefense Weapon)として開発された、いわゆるマシンピストルの一種である。
今回の撮影では、久々に元気な姿で再会できたハンガリー人のジョーズー氏(Gyozo Hidvegi)に協力いただいた。用意されたポーランド製PM-63 RAKはハンガリー軍でも採用されており、この銃は幸いなことにフルオート射撃が可能なオリジナル状態を維持していた
PM-63の登場前までPDWとして採用されていたスチェッキンAPSマシンピストル。着脱式の木製ストックはホルスターも兼ねているのが特徴だ。ちなみにこれはジョーズー氏所有の銃
PM-63を製造したラドムは、ドイツに占領されていた第二次大戦中はドイツ軍向けにガバメントのクローン、VIS wz1935などを製造。東側陣営となった戦後は自国軍向けにAK47のクローンKbkg wz. 1960やAK74のクローンKbk wz.1988 タンタル、Kbs wz. 1996/2004 ベリルなどを製造してきた。現在ではポーランド軍の新たなモジュールライフルMSBSの製造やワルサーP99のライセンス生産なども行なっている。
筆者は数年前にスロバキアでPM-63に出逢い一目惚れした。それは民間向けのセミオート仕様だったが、いつかフルオートで撃ちたい! と願っていた。その願いが、今回ハンガリーでの撮影でついに叶ったのである。
「見た目は大きく、リコイルは小さく」
PM-63はラドムが独自開発した個性的な銃である。グリップ周りのスタイルはUZIやイングラムとも似ているが、ボルトをレシーバーに収めずピストルのようなスライドを採用しているため大きめのピストルのようにも見える。上側がカットされ前方に伸びたスライド一体のマズル部は、この銃の形状を特徴づけているポイントだ。これは発射ガスを上方に逸らすことでマズルジャンプを抑えつつ、マズルを何かに押し付ければコッキングすることもできる。
折りたたみ式のフォアグリップはH&K MP7に似ており、ストックは後ろに引き出すテレスコピック式。メカはシンプルブローバックで、フィールドストリッピングはスライドをコックした状態(ホールドオープン)でバレルを回転させるとロックが外れ、バレルを抜き出しスライドを外すことができる。バレルは従来のスチェッキンのものよりも20mmほど長く、銃口初速も向上している。
「肝腎なのはエイミングよりばら撒く弾の量」
スチェッキンにしてもPM-63にしても、ピストルのように両腕を伸ばしたエイミングなら問題ないが、ストック使用時にはリアサイトが目に近づき焦点を合わせづらい。老眼が進めば尚更である。またスライドが激しく前後に動くため顔に当たらないか不安になるが、オープンファイアのPM-63の場合はスライドが後退した位置からの射撃となるため、後退時のスライド後端と顔とのクリアランスは射撃前に掴むことができる。
ストックを伸ばし、フォアグリップは閉じたたままでの射撃スタイル。これでも充分安定した射撃ができる
見にくいサイトを一生懸命のぞき込んでトリガーをゆっくり絞り、まずはセミオートで撃つ。セレクターがないPM-63はセミ/フルオートの切り替えをステアーAUGと同様、トリガーの引き加減で行なう(浅く引くとセミオート、引ききるとフルオート)。銃の重量とストックの恩恵でリコイルやマズルジャンプも少なく、フルオートが気持ちいい。最初の射撃で銃をコントロールできると判断し、次はマガジンに25発の9mmマカロフ弾を目一杯詰め込んで、一気にフルオートで撃ち込んでみる。コントロールは容易だが、前後に激しく動くスライド上のサイトを目で追うことはできない。それでも至近距離で敵と遭遇した際の護身用ならば、敵に向けて弾をばら撒くことができるこの銃は充分PDWとしての役目を果たせそうだ。
筆者もPM-63を射撃してみた。より小口径のMP7と比べても撃ちやすい。25発、一杯に詰め込んだマガジンを一気に撃つ快感…
マガジンチェンジし、今度はマズルをテーブルに押し当ててみたところ、リコイルスプリングが柔らかいこともあり実にスムーズにコッキングできる。その後ストックを収めてフォアグリップを折り畳み、ピストルスタイルにして射撃してみた。弾を含めて1.5kgほどと重く両手保持も大変だが、セミオートなら問題なく射撃できる。ホルスターから抜いてまずセミオートで射撃し、敵が怯んだ隙にストックとフォアグリップを展開し本格的な射撃に移行するやり方が、無駄弾を使わずに済みそうだ。
ストックを収納しピストルスタイルでの射撃。銃本体が重く保持は辛いがセミオート射撃なら問題なく撃てる。フルオートは不安定だが9mmパラベラムほど暴れることはない
PM-63のフルオート射撃シーン。小さな9mmマカロフなのでリコイルは軽くフルオート射撃時のコントロールは容易だが、9mmパラではこうはいかないだろう。H&K MP7の発射サイクル(950~1,000発/分)と比べPM-63は遅く感じるが、無駄弾は減らせそうだ
「現代にも受け継がれたPM-63の遺伝子」
舌を突き出したようなマズルを持つPM-63の個性的なスタイルは、愛嬌すら感じさせる。50年以上前に開発された時代遅れの銃かもしれないが、樹脂が多用され似通ったデザインの現代銃たちと並べてみれば、異彩を放つことは間違いない。なお、1984年に登場した後継のPM-84はレシーバー内にボルトを収める一般的なSMGスタイルとなったが、スリムな形状やストック、フォアグリップ周りの機構などはPM-63の特徴を受け継ぎ、現在ではその改良型となるPM-98やピカティニーレールを装備したPM-06がポーランド軍や警察で採用されている。その原型となったPM-63は、やはり時代を超越する魅力がたっぷり詰まったマシンピストルと言えるのではないだろうか。
TEXT & PHOTO:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
この記事は2019年2月号 P.128~135より抜粋・再編集したものです。