2018/10/03
Beretta M9A3 REALGUN REPORT【2018年11月号掲載】
モダナイズされたM92Fシリーズの最新版
1970年にイタリアのベレッタにおいて開発がスタートしたベレッタM92(ベレッタの表記では92だが、ここでは日本における一般的な表記であるM92とする)は、ダブルカアラムマガジンによる15連発の多弾装、ダブルアクション&シングルアクションとデコッカーをかねたセーフティを持つ、当時最新のハンドガンとして完成した。
1985年、数々の改良を受けて進化したM92FSが、それまで1911年から70年間もの間、米軍サイドアームとして君臨したM1911ガバメントに変わり米軍制式採用拳銃となる。1985年の採用後、湾岸戦争に始まり、アフガニスタン戦争、イラク戦争などの大規模な戦闘に加え、世界各地での小規模な対テロ戦争が繰り返された戦乱の時代を経て、M92FSは米軍採用サイドアーム「M9」として多くの戦闘を経験し、バトルプルーフされたコンバットハンドガンとして高い評価を得ているのである。
そして採用から29年が経ち、M9が武器としての寿命に達したと判断され、2014年12月、米陸軍は次期採用ピストルトライアルであるMHS(モジュラー・ハンドガン・システム)を開始する。これにベレッタはM9を近代化したM9A3を提出した。それまで米軍に採用されていたM9ならば訓練、保守の面で優位であり、ベレッタの目論見は決して外れたものではなかったが、米陸軍がMHSで求めていたのは、より近代的なモジュラリティを持つストライカーピストルであり、残念ながらM9A3はMHSへ参加することはできなかった。
MHSによって採用されたのはシグP320シリーズであり、これがM17/M18として順次M9と置き換えられていくことになる。残念ながら米軍採用拳銃としての座を譲ることになってしまったM9ではあるが、現在でも評価の分かれる最新型のM17/M18よりも信頼の置ける拳銃であるとも言え、特にM9A3はバトルプルーフされたデザインに最新のスペックを詰め込んだ魅力的なモデルである。
M92FSとの相違点を解説
今のコンバットハンドガンはウェポンマウントライト/レーザーサイトを含めたエイミングモジュールや、信頼性と性能が大幅に進歩したサプレッサーが装着可能であること、グリップサイズの変更が可能なデザインであること、トリチウムナイトサイトがインストールされていることなど、必須ファクターが複数存在する。M9A3には、1985年に完成していたM92FS/M9をベースに、多くの近代化が行なわれている。その改良点をM92FSと比較しながら写真を追って紹介していこう。
M9A3のカラーリングはフレームはアナダイズド処理。その他のパーツは米軍指定のコーティングによって施されている。バレル基部やネジ部分など、作動に影響が出る部分はマスキングされており、コーティングされていない
マズル部分は延長されてサプレッサーが装着可能。アタッチメント部分にはプロテクターが取り付けられている
トリチウム入りのナイトサイト仕様のフロントサイトはドープテールによる取り付けとなっており交換可能。リアサイトもナイトサイト仕様の3ドットサイティングシステムとなっている
バックストラップはストレート形状となり、薄型のグリップが装備され、手の小さなシューターにも対応している。また、スタンダードなM9と同じ形状にすることもできるグリップも付属している
フレーム下部はピカティニーレールとなっており、ウェポンマウントライトやレーザーサイトの取り付け等が行なえる
マガジンキャッチは大型化され、片手での操作が容易となった。左右を入れ替えることで左利きにも対応している
マガジンは数ミリ延長されたことで2発増えて装弾数は17発。グロックに負けない装弾数となっている
米軍のMHSによる次期採用拳銃の内容を見ても、今はポリマーフレーム/ストライカーファイアがコンバットオートピストルの主流であると断言できる。だが、DA/SAのトリガーメカニズムと金属製フレームを持つオートピストルは、いまだ多く生産が続けられており、特にベレッタM92FSシリーズは29年に渡る米軍での功績からも愛好者が多い。
M9A3の市販向けパッケージ。プラスチック製のアモボックスを使用しており、凝ったパッケージングが気分を盛り上げる
今回はサプレッサーを装着しての実射レポートを行なっている。また、詳細な画像も数多くここには載せきれなかったが、その詳細はアームズマガジン本誌記事に任せることとしたい。
TEXT&PHOTO:SHIN
この記事は2018年11月号 P.76~83より抜粋・再編集したものです。