2022/04/21
Kar98kの使用弾薬について学ぶ【兵士の入門書】
Kar98kの使用弾薬
今回はドイツ陸軍で教範の副読本として使われていたライベート(REIBERT)から、7.92mmマウザー弾(7.92mm×57)の部分を抜粋して紹介する。ちなみに、ドイツ軍では小数点以下を省略して8mm弾とか7.9mm弾と表記する場合があるが、このライベートでも7.92mmマウザー弾を7.9mm弾と表記している。
弾薬の種類と機能(Munitionsarten und ihre Wirkung)
小銃と機関銃は同じ7.92mm口径の実包を使用する。この実包にはs.S.弾(schweres Spitzgeschoss/重尖頭弾の略で、所謂通常弾のこと)と特殊弾がある。特殊弾はs.S.弾と弾頭および装薬量は異なるが、同一形状で製造されている。右ページ左上の図1(Bild 1)は7.92mm実包の各部名称と構造、右上の図2(Bild 2)は弾底部断面図である。s.S.弾は雷管、装薬を備えた薬莢と弾頭から成る。弾頭は飛翔中の空気抵抗を低減するため、弾頭後部先端が円錐状に先細っている。弾頭は硬鉛の弾芯を銅合金で被覆してある。
特殊弾は、雷管周りの色と弾頭の色で識別できる。雷管周りの色は、s.S.(重尖頭弾)がグリーン、S.m.K.(尖頭徹甲弾)とS.m.K.L’spur(尖頭徹甲曳光弾)がレッド、そしてS.P.r(尖頭焼夷弾)はブラックで、弾頭色は、s.S.とS.m.K.がカッパー(弾頭のジャケットである銅合金の色であるが、原文にはイエロー/gelpと記載)、S.m.K.L’spurは弾頭先端がブラックで、S.P.r.の弾頭はカッパーかブラックである。ページ下の図3(Bild 3)は、7.92mm各種弾頭の外観と断面図である。左から、s.S.(重尖頭弾)、S.m.K.(尖頭徹甲弾)、S.m.K.L’spur(尖頭徹甲曳光弾)、S.P.r(尖頭焼夷弾)が描かれている。
特殊弾の機能は以下の通りである。S.m.K.(尖頭徹甲弾)は弾芯に鋼鉄が用いられており、装甲板のような強力な目標に対して使用される。S.m.K.L’spur(尖頭徹甲曳光弾)は弾道の軌跡が表示される。これにより、S.m.K.L’spurは、目標を指定したり、対空射撃に特に適している。S.P.r(尖頭焼夷弾)は野外でのみの使用とし、焼夷弾として運用する。
左ページ左上の図4(Bild 4)は、2種類の空包弾(Platzpatrone)の外観と構造である。左は薬莢に紙栓をしたタイプで、薬莢には2本の帯状の刻みがある。右(断面図)は赤い木製弾頭を持つタイプで、木製弾頭と装薬の間に紙栓が描かれている。本文によると「小銃および機関銃用空包弾(図4)は、装薬を紙栓で封入した薬莢と、木製または紙製の弾頭で構成されている。弾頭は発射直後に破砕するが、事故の発生を防ぐため、25m未満に人がいる場合の空包射撃は厳禁とする」とある。
中央の図5(Bild 5)は、2種類の訓練弾(Exerzierpatronen)の外観である。左が薬莢部分にリブがあるタイプS・(エスプンクトと発音)、右が薬莢に穴が穿たれているタイプs.S.で、本文には「訓練弾には照準訓練用のS・と、s.S.(重尖頭弾)と同じ重量で、銃の装填装置のテストに使用するs.S. (Werkzeug/工具)訓練弾がある」とある。
弾薬の種類(Munitionsarten)
写真左から1番目は、鉄製薬莢の重尖頭弾。鉄製薬莢は少なくとも1939年の開戦時には生産されており、写真の物は1940年製である。左から2番目は鉄製薬莢の重尖頭弾の断面。弾芯には硬鉛(鉛とアンチモンの合金)が使用されている。下の薬莢の底部、雷管の周囲が重尖頭弾を示すグリーンに染められている。3番目は尖頭徹甲弾で、弾芯は鋼鉄、ジャケットと弾芯の隙間は硬鉛で、薬莢の底部、雷管の周囲が尖頭徹甲弾を示すレッドに染められている。4番目は尖頭徹甲曳光弾の断面で、鋼鉄の弾芯の下に曳光剤を封入したケースがある。この弾頭は先端部1cmが曳光弾を示す黒染が施されており、外観で識別できる。右の2発は照準訓練用のS・訓練弾。メーカーや生産時期でさまざまな形状の物が生産されており、写真の真鍮製以外に鋼製や樹脂製の物もあった。左は旧式のラウンドノーズ弾頭のようなシルエットで、右の方が尖頭弾のシルエットに近い。
7.92mmマウザー弾は、15発入紙箱に入れられ、さらにそれを20箱まとめた300発入紙箱、これを5箱入れる1,500発入木箱に収めて補給されていた。それぞれの箱には入数(無記載もある)、弾種以外に、装薬、弾頭、薬莢、雷管の種類、メーカー、生産ロット、製造年、等に関する詳細情報が5ないし6行で記載された紙ラベルが貼り付けられていた。写真左の箱の赤い文字「i.L.」はin ladenstreifenの略で、クリップ付実包を示しており、右の箱の青いラインは鉄製薬莢、赤い文字Lackierte Hülsenは鉄製薬莢がラッカー塗装仕上げであることを示している。
TEXT&PHOTO:STEINER
この記事は月刊アームズマガジン2021年10月号 P.236~237より抜粋・再編集したものです。