ミリタリー

2022/02/14

ドイツ軍兵士の相棒「マウザーKar98k」とは?【兵士の入門書】

 

第二次世界大戦のドイツ軍兵士の相棒

 

 今回解説するのは、第二次世界大戦のドイツ軍の兵にとって欠かせなかった存在、マウザーKar98k小銃だ。この銃についてどのような教育を施されていたのか、当時の歴史的資料を交えてご紹介しよう。

 

マウザーKar98k(Mauser Kar98k)の基礎知識

 

 

  • 口径:7.92mm×57マウザー弾
  • 全長:1,100mm
  • 銃身長:600mm
  • 装弾数:5発
  • 重量:単材銃床で3.9kg、積層材銃床で4.2kg
  • 有効射程:500m

 

 主力小銃 マウザーKar98kは、帝政時代の1898年に制式採用されたGewehr 98(98年式歩兵銃、Gew98)を元に開発され、国防軍誕生(※1)直後の1935年6月に制式採用された。Kar98kは「Karabiner 98 Kurz」、つまり98年式“短騎兵銃”の略であり、ボルトハンドルが下向きに湾曲し、負革(スリング)が側面に配置された騎兵銃の特徴を持つ。また、小銃の短銃身化は当時の世界的潮流であり、これは機動的な軍を指向していた国防軍の方針にも合致するものであった。

 

※1:第1次世界大戦後、ドイツはヴェルサイユ条約による軍備制限下に置かれていたが、1935年にヒトラー政権は条約による制限の破棄を宣言した(再軍備宣言)。

 

小銃に対する姿勢:Einstellung zu Gewehren

 

 軍隊では1挺の小銃と1人の兵士が紐づけられ、自分の小銃のクセを知り、習熟することで射撃精度を高めることが期待された。また、いかに優れた小銃であっても、適切な操作と手入れ無しにはその性能は発揮できない。そこで、新兵に対しては「自分の小銃を恋人と思って扱え!」との教育がなされていた。

 

 

 上の画像は、当時の有名な漫画家バルロークの絵葉書で、小銃を抱えて兵営のベッドで寝ている新兵が描かれている。絵の下には「練兵場からご挨拶、私は新たに最愛の人を得ました」とある。最愛の人とはもちろん小銃のことを指している。


軍歴手帳:Wehrpas

 

 

 ドイツ兵には本人が携行管理する身分証兼給与支給帳(Soldbuch、ゾルトブーフ)と、部隊が管理していた軍歴手帳(Wehrpas、ヴェアパス)があった。上の写真は軍歴手帳の表紙と訓練済みの火器を記入するページである。「Karabiner 98 K(Kar98k小銃)、l.M.G.13(MG13軽機関銃)、Pistole 08(P-08拳銃)」の記載がある。軍歴手帳に記載される主な事項は、生年月日、本籍地、宗教、続柄、両親の生年月日と職業などの本人と家族に関する事柄から始まり、所属部隊と昇進の履歴、授与された戦功章、なども記載されている。

 

座学の概要:Uberblick die Vorlesung

 

 次の写真はドイツ陸軍で教範の副読本として使われていたライベート(REIBERT)の表紙と、「武器と装備の知識」の最初のページである。

 

ライベート(REIBERT)の表紙

 

「武器と装備の知識」

 

 掲載されている武器は小銃に始まりP-08拳銃、信号ピストル、MG34軽機関銃と重機関銃、手榴弾およびMP-38・40機関短銃などである。書き出しには「兵士は貸与された武器や装備について徹底的に知り、規則に従ってそれらを扱い、確実な手入れを施すことが義務付けられている」とある。小銃はKar98b騎兵銃、Gew98歩兵銃、Kar98k騎兵銃について各部の名称や取り扱いについて記載されている(※2)。

 

※2:Kar98kの採用後も、旧式のKar98bやGew98は引き続き訓練などで使用されていた。

 

続きはこちら

 

TEXT & PHOTO:STEINER

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年6月号 P.150~151より抜粋・再編集したものです。

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