ミリタリー

2022/03/19

ドイツ陸軍による小銃クリーニング術を知る【兵士の入門書】

 

昔の銃器お掃除術


 前回に引き続き、今回もドイツ陸軍で教範の副読本として使われていたライベート(REIBERT)から、小銃の清掃に関する部分と、そこに記載されている34年型小銃用クリーニングキット(Reiningungsgerät 34)の現物を紹介する。

 

前回の兵士の入門書はこちら

 


 

 新兵達は前回紹介したように、小銃の取り扱いには細心の注意を払い、「小銃は、衝撃、転倒、装弾不良、銃口と地面の接触から保護する必要がある」と教えられたが、これに加えて清掃の重要性を教育された。小銃は清掃を怠ると本来の性能を発揮しないどころか、まともに作動しなくなってしまうからである。小銃の清掃についても他の訓練と同時進行で繰り返し実習が行なわれ、点検を受けるなかで自身の清掃が適切なものであるか否かを教えられた。小銃の清掃も習慣化するまで徹底して習得させないと、実戦に投入した瞬間に小銃のトラブルに見舞われかねないので、清掃を定められた手順に従って正確に行なうことは兵隊としての必須条件であったのだ。

 

小銃の清掃(Reinigung des Gewehrs)

 

 

 この項は「拳銃や機関銃でも同様に清掃を行なう」の書き出しで、個人に支給された34年型小銃用クリーニングキット(以下小銃用クリーニングキットと記す)の説明がされている。「小銃用クリーニングキットはクリーニングチェーン、クリーニングブラシ、オイラーブラシ、オイラー、栓抜き工具、各1個といくつかのクリーニングモップ、収納缶で構成されている」、「各清掃具について――クリーニングチェーンはブラシやモップを銃身に通す。クリーニングブラシは射撃後に銃身内に付着した火薬カスなどの残留物を除去するために、クリーニングオイルを塗布して使用する」と言った具合である。写真は当該ページと小銃用クリーニングキットの現物を写したものである。

 

 

 次に記されているのはオイルと関連用具の種類と説明で、「洗浄オイル(各種アルカリ混合油)は、銃身内部の洗浄および手入れに、射撃後の銃身から発生する有害なガスの中和に、鉄部の防錆に、装薬燃焼ガスにさらされた部品の固着防止に使用する」、「武器用グリスは、可動部の潤滑に使用する」、「木製ストックには亜麻仁油を使用する」、「きれいで乾燥した拭き取り布と細部の清掃用おが屑」とあり、清掃の種類に続く。小銃の清掃には「野外訓練後などで、射撃は行なわず、濡らさず、埃っぽい程度の時に実施する通常清掃」と「実包、空砲、訓練弾などの射撃後や、小銃を濡らした場合、ひどく汚れている時に実施する本格清掃」があり、その詳細が記載されている。右ページ上の図版は、クリーニングチェーンとクリーニングモップの使用法で、「クリーニングチェーンにクリーニングモップを装着し、ボルトを外して薬室側から通して、銃口側に引き抜く。これを数回繰り返して銃身内を清掃する」とある。

 

34年型小銃用クリーニングキット(Reiningungsgerät 34)

 

 

 小銃用クリーニングキットは、鋼板プレス製の収納缶【A】に、小銃の通常分解清掃に必要なキットが収められた物で、収納缶のサイズは、縦133mm×横86mm×厚さ23mmである。収納缶の内部は本体リブの部分で2室に分けられており、左の小さい方にはクリーニングモップ【D】(モップ状の紐の束)が入れられ、右の大きい方には銃身内の汚れを落とす真鍮製のクリーニングブラシ【F】と、銃身内にオイルを引くオイラーブラシ【G】、銃身内にブラシを通すためのクリーニングチェーン【B】、オイラー【E】、薬室内等をモップで清掃する際や、弾倉分解用の工具にもなる栓抜き状の形状をした、栓抜き工具【C】が収められている。

 

 

 小銃用クリーニングキットの収納缶は、戦前に生産された物はメッキ仕上げの鋼板プレス製であったが、戦時生産タイプは塗装仕上げに変更された。小銃用クリーニングキットは一般的には長距離行軍の場合は背嚢の中に、軽量行軍装備の場合はAフレームバッグに、そして戦闘装備では糧嚢(雑嚢)の中に入れて携行されていた。写真では糧嚢の上に2つの小銃用クリーニングキットが置かれているが、上が戦前タイプで下が戦時生産タイプである。

 

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TEXT&PHOTO:STEINER

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年8月号 P.154~155より抜粋・再編集したものです。

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