2022/02/20
書物から読み解くマウザーKar98k【兵士の入門書】
副読本から読み取るKar98k
前回はドイツ軍の制式小銃マウザー Kar98k(以後Kar98kと記す)の概要と、新兵の小銃に対する姿勢、そして座学の概要を紹介したが、今回は座学の詳細をドイツ陸軍で教範の副読本として使われていたライベート(REIBERT)から紹介する。なお、本稿では弾薬の点検に付随して小銃弾についても少し記しているが、これは本来の座学の順番とは異なっていることをあらかじめお断りしておく。
小銃について(Beschreibung des Gewehrs)
上図はライベートの「武器と装備の知識」より。「小銃について」と題されたページは写真の通り、銃身と照準装置の解説から始まり、次ページでチャンバーブロックとボルトについて図版と共に記されている。具体的には「銃身にはライフリングが切ってあり、発射される弾頭に回転を与える。(操作については、「射撃訓練」の項を参照)」と始まり、続いてライフリングについて説明されている。
照準装置の次に記されているのは、ファイアリングピンとリコイルスプリング、セーフティの解説で、これも写真のような図版が付されている。そしてこの項の最後には本体内の固定式弾倉を含む機関部の断面図が掲載されていて、小銃の構造が理解できる。こうした座学を元に実習で分解結合を学ぶ訳だが、断面図の下から始まる「小銃の取り扱い(Behandlung des Gewehrs)」には、「兵士は絶対に必要な場合以外小銃を分解してはならない」とあり、分解または取り外しが許されているのはボルト、弾倉、クリーニングロッド、銃口カバー、ライフルスリングのみで、取り外した部品は布の上に置くこととされ、これ以上の分解は武器係の範疇とされていた。
小銃の取り扱い(Behandlung des Gewehrs)
このページでは、ボルトの外し方と分解、そして組み立てと挿入の手順、その後に弾倉の分解と組み立てについて記されている。続いて「損傷回避のための順守事項」の見出しがあり、「小銃は、衝撃、転倒、装弾不良、銃口と地面の接触から保護する必要がある。銃口カバーは常に小銃に装着する必要がある。銃口カバーは照準を合わせるため、および装填する前にのみ取り外すことができる」とあり、細かい注意事項、小銃の保管法に続いて「射撃時の順守事項」では図のように「凹みや弾頭の陥没とゆるみ、汚れた弾薬の使用は禁じられている」とある。写真ではクリップに収めた7.92mmx57小銃弾を当該ページに置いてみた。
小銃弾(Patrone)
第2次世界大戦時のドイツ軍では多種多様な7.92mmx57マウザー弾が使用されていたが、小銃弾としては主に重尖頭弾(Patr.s.S.)と尖頭徹甲弾(Patr. S.m.k.)が使われていた。写真は小銃用にクリップに収められた重尖頭弾の15発入り紙箱で、弾薬盒ペアには60発収納できたのでこれが4箱必要だった。紙箱のラベルには弾種の他にメーカーと製造年、装薬や薬莢、弾頭、雷管の情報が印字されている。ちなみに「i.L.」の赤文字はクリップ付きを意味する。また、箱の下にある布袋は弾薬盒の弾数以上の追加弾薬を携行する際に使用された弾薬袋である。
TEXT & PHOTO:STEINER
この記事は月刊アームズマガジン2021年7月号 P.148~149より抜粋・再編集したものです。