2021/08/23
ドイツ軍新兵の日常生活に迫る!【リエナクトメントのススメ vol.22】
月刊アームズマガジンにて連載の「リエナクトメントのススメ」。そこでは「リエナクトメント」を歴史的な事象の再現と定義し、テーマを第2次世界大戦としている。現在、世界中で第2次世界大戦をテーマとしたさまざまな「リエナクトメント」が行なわれているが、比較的参加しやすい国内のイベントを中心に紹介するとともに「リエナクトメント」の楽しさを伝えたいと考えている。
WEB版第22回では、2017年10月7日・8日に行なわれた、Kaspar Lueder u. Pohi主催のイベント「Lueders Kaserne」から、ドイツ軍新兵の兵営における生活を再現した様子をレポートする。
ドイツ軍兵営体験イベントレポート ~その2~
「ドイツ軍新兵の兵営生活」
今回は前回に引き続き、2017年10月7〜8日に御殿場市の乙女森林公園キャンプ場で実施された、Kaspar Lueder u. Pohi主催のドイツ軍兵営体験イベント「Lueders Kaserne」初日のレポートである。
このドイツ軍兵営体験イベントでは、新兵の兵営における生活様式、座学、教練に焦点を当てるため、模擬戦闘や演習は実施しなかった。海外ではこうした日常面に注目したイベントを行なっているグループがあるが、国内では珍しいイベントであったと思われる。なお、座学のテキストや教練内容は一次資料を翻訳し、解説を加えたものを使用した。
ゾルトブーフ:Soldbuch
写真は「ゾルトブーフ:Soldbuch」支給の再現シーンである。ゾルトブーフは、各自の写真が貼られた身分証明書と給与支払記録を兼ねた物で、各自の所属部隊や階級、家族などが記された身分証明と、支給された給与のほかに、被服・装備の記録や、それらの支給の際に必要なサイズなども記されていた。
ベッドメイキング: Bettenbau
ドイツ陸軍の「歩兵操典副読本:REIBRT」の内務要領に記載されている、ベッドメイキングの再現シーン。ドイツ陸軍では起床後に寝具を乾燥させるための午前中のベッドメイクと、午後の通常ベッドメイクがあるが、写真は午後の通常ベッドメイクを再現している場面である。ブルーのチェック柄の毛布カバーと中の軍用毛布は当時の実物を使用した。右の方が一段高くなっているのは、下に枕が入っているためである。
報告:Meldung
写真は、新兵教育の進捗を中隊先任下士官に報告する教育係の伍長である。ドイツ軍では中隊先任下士官のことを「シュピース」とも呼んでいた。シュピースは通常中隊の古参の下士官が務め、戦闘指揮以外の業務のまとめ役として各係下士官を統括していた。兵隊たちの生活に密着した事項の世話役的な役職であったことから、「中隊の母」と表現されることもある。訓練大隊では営舎に居住し、新兵だけではなく各係下士官の目付け役でもあった。
座学:Unterricht
座学では、兵士の心得やドイツの歴史の講義が行なわれた。内容は当時の教範に沿ったものであったが、受講時の姿勢や受け答えの方法、また歴史に関しては当時の歴史的な背景の解説にも多くの時間が割かれた。これは、当時のテキストを翻訳しただけでは、受講者の理解が難しいとの判断から行なわれた。
自由時間:Freizeit
実際の軍隊での「自由時間」は必ずしも好き勝手なことができる訳ではない。装備や武器類の清掃点検、整備などの、やるべきことができていなければ、それを自由時間に行なうのである。
写真は、支給された被服類に各自のネームタグを縫い付けている新兵たちである。戦前のドイツ陸軍では、各種被服や装備に部隊名のスタンプを押すと同時に、各自のネームタグを縫い付けていたことを再現している。
TEXT&PHOTO:STEINER