エアガン

2021/12/31

C.A.T.「AR-15 Legend 10" CAT-01電動ガン」【毛野ブースカの今月の1挺!】

 

「月刊アームズマガジン」編集部の毛野ブースカがおくる『毛野ブースカの今月の1挺!』 。今回はC.A.T.の『AR-15 Legend 10" CAT-01電動ガン』だ。

 

【番外編パート5】ファルコントーイ「ルガーP-08」はコチラ

前回の「今月の一挺」はコチラ

 


 

 

 2021年はM4カービンタイプの電動ガンを2挺も購入してしまった。しかも外観、メカニズムともに対照的な2挺だ。ひとつはこのコーナーで紹介したBCM AIRの「BCM MCMR 11.5インチ電動ガン」。BCMのオフィシャルライセンスドモデルとして実銃同様の刻印はもちろんBCMガンファイターパーツがフル装備され、VFC製電動ガンの最上位機種に採用されている電子トリガーシステム「Virgo」を搭載したモデルだ。もうひとつが今回紹介するC.A.T.の「AR-15 Legend 10" CAT-01電動ガン」だ。このモデルの特徴はアグレッシブな外観もさることながら、電子制御に頼らない機械式かつ可変プリコック機構が搭載されたモデルだ。

 

バレル長は10インチ。M-LOKハンドガードや大胆に軽量化されたレシーバーとあいまってバランスがよくて取り回しやすい。マガジンはスタンダード電動ガンM4系が共用可能だ

 

 近年の電動ガンのトレンドを挙げるとするなら電子制御による発射モードの切り替えやトリガーストローク、コッキングポジョン(プリコック)のコントロールだろう。もともと電動ガンの電子制御(電子化)はカスタムショップのチューニングメニューから始まったが、2010年代半ばくらいから主に台湾のトイガンメーカーを中心に、量産品へ電子トリガーシステムやMOSFETが標準装備され始めた。当初はセッティングが甘い部分もあったが、年を追うごとにブラッシュアップされ、今では当たり前のものになりつつある。2021年夏に発売されて話題になった東京マルイの次世代電動ガンMP5A5にもFETとマイコンによって各モードを制御するシステムが採用され、いよいよもって電動ガンにデフォルトで装備される時代がやってきた。そんな潮流の中でC.A.T.は敢えてメカニカルな方式によるプリコック制御を採用したのだ。

 

ストレートトリガー、バーチカルアングルのグリップ、折り畳み・伸縮可能なストックなど随所にトレンドが凝縮されている。細かな部分にも配慮が行き届いており完成度は非常に高い

 

 この記事を読んでいただいている方の中には「プリコック」をご存知ない方もいるかと思うので、まずは電動ガンの仕組みからプリコックを解説しよう。通常の電動ガンの発射プロセスは、トリガーを引いてからモーターが回転→ピストンをコッキングする(ピストンを後退させる)→BB弾が発射される。つまりモーターが回る前はピストンがコッキングされておらず、BB弾を発射するまでにタイムラグがわずかに生じてしまう。これは電動ガンの基本構造がフルオートを基準として作られているからであり、セミオートのレスポンス向上は電動ガンチューニングの永遠のテーマといっても過言ではない。このタイムラグを解消するために、トリガーを引く前にピストンがあらかじめコッキングされた状態(後退位置で保持された状態)、いわゆる「プリコック」状態にしておくのが理想的なのだ。プリコック状態にした場合のプロセスは、トリガーを引く→ピストンが前進してBB弾が発射→モーターがピストンを後退させる。トリガーを引くまでピストンはコッキングされた状態で保持される。トリガーを引くと即座にピストンが開放され、素早いセミオート連射が可能になるのだ。

 

軽量かつスリムさにこだわったLegendモデルのM-LOKハンドガード。写真は10インチタイプ。上面のレールは前後を残してオミットされている

 

 電子制御ではモーターの回転に対して電気的にブレーキをかけることでプリコック状態を実現しており、ピストンのポジションは電子的にセッティングできる。一方、C.A.T.はAIRSOFT97の技術協力により独自開発された意匠登録出願中のオリジナルパーツ「メカニカル・アジャスタブル・プリコック(MAP)」セクターギアを採用。世界で初めてセクターギアによってコッキングポジションをコントロールしている。構造を大幅に変えることなくメカニカルなアプローチからセミオートのキレにこだわったのだ。ピストンがコッキングされたままだとスプリングのテンションが弱ってしまうので、それを防止するための逆転防止ラッチ解除機構の採用。さらに付属の専用ツールを用いてテイクダウン状態からプリコック強度の設定変更ができる。
 

 

Legendモデルはメタル製のアッパー/ロアレシーバーが大胆に肉抜きされて軽量化が施されている。セレクターレバーやマガジンキャッチはノーマルタイプ

 

 両システムの大きな違いとして挙げられるのがトリガーフィーリングだろう。これはあくまでも個人的な見解であり、製品の個体差やメーカーによる違いがあるので明確な表現はできないのだが、電子制御の場合、トリガーを引いてからピストンが前進、BB弾が発射されるまでの抵抗感(メリハリ)がなく、実銃用語で言うところのレッドオフのタイミングが掴みにくい。それに対してC.A.T.の場合、実銃の2ステージトリガーに近い感覚で、メリハリのある自然なトリガーフィーリングを実現している。実銃射撃経験のある人間にとってはC.A.T.のトリガーフィーリングのほうが馴染みやすいだろう。

 

 C.A.T.の特徴はこれだけではない。既存の電動ガンと同一のディメンション、一体成型のホップチャンバーを取り入れながらピストンストロークを短縮することでメカボックスのコンパクト化に成功。リアルなテイクダウン機能と上下分割式メカボックスが採用されている。伸縮・折り畳み可能なMPS(マルチ・パーパス・システム)ストックが標準装備されている。バリエーションは4タイプあり、好みに応じて選ぶことができる。今回私が入手したモデルは一般販売モデルに先駆けてリリースされた先行量産販売品となっており、このままでも充分な性能だが、一般販売モデルではさらに外観、性能ともにブラッシュアップされることが予想される。いずれアームズ誌面でレポートする予定なので楽しみに待っていてほしい。

 

ストロークがノーマルよりもわずかに短くなっているストレートトリガーは、AIRSOFT97オリジナルのIWSトリガーをC.A.T.メカボックス用にアレンジしたもの

 

JPモデルにはAIRSOFT97オリジナル国産カスタムモーター「INAZUMA」を標準装備。グリップ側のトリガーガード付け根部分に逆転防止ラッチが解除できるリリースレバーが設けられている

 

ストック基部のロックレバーを解除するとストックを折り畳むことができる

 

ストック左側後部のロックボタンを押すとバットプレート上部が開き、バッファーチューブ内に設けられたバッテリーコンパートメントにアクセスできる

 

ストックはバットプレートが交換可能なモジュラー式となっており、バッテリーストレージ(写真下)に換装すればミニSタイプの7.4Vリポバッテリーが収納できる

 

逆転防止ラッチを解除してピストンをリリース後、テイクダウンピンを抜き出せばテイクダウンできる。写真中央の「メカニカル・アジャスタブル・プリコック(MAP)」セクターギアによりプリコック状態を機械的に作り出している

 

上下分割式メカボックスなので、シリンダー/ピストンが収められたアッパーメカボックスを取り出せばインナーバレルとホップチャンバーが取り出せる

 

発売前から気になっていたC.A.T.。実際に手にしてみて満足度は非常に高い。特に機械式プリコックによるトリガーフィーリングは文句の付け所がない。メカボックス部分はチューニングの必要ないので、このあとインナーバレル周辺と外観を中心にカスタマイズしていく予定だ

 

注意
※写真は一般販売前の先行販売品です。実際に一般販売される商品とは異なる場合があります

 

[プロフィール]

 

アームズマガジンの編集ライター。エアガンシューティング歴36年。数多くの国内シューティングマッチ入賞経験に加えて、1999年、2000年に開催されたIDPAナショナルズ参戦、シグアームズアカデミーや元デルタフォース隊員のラリー・ヴィッカーズのタクティカルトレーニングを受講するなど実弾射撃経験も豊富。今まで25年、280冊以上のアームズマガジンと関連MOOKの制作に携わる。

 

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