エアガン

2021/04/12

G&Gアーマメント「電動ガンARP9」【毛野ブースカの今月の1挺!】

 

「月刊アームズマガジン」編集部の毛野ブースカがおくる『毛野ブースカの今月の1挺!』 。今月はG&Gアーマメントの電動ガン『ARP9』をご紹介!

 

前回の「今月の一挺」はコチラ

 


 

 

 前回のこのコーナーではサバゲーにお薦めのハンドガンとして東京マルイのガスブローバックガンUSPを取り上げた。今月はハンドガンに代わってメイン(プライマリー)ウェポンにお薦めのG&Gアーマメントの電動ガンARP9をご紹介しよう。

 

 G&Gアーマメントの日本における知名度・浸透度の高さは、海外メーカーの中でおそらく1位ではないだろうか。弊誌主催のサバゲ祭はもちろん多くのサバイバルゲーム大会で同社の電動ガンを見かける。豊富なラインアップを誇る同社だが、特に人気があるのは実銃が存在しないオリジナルデザインのエアガンだ。どちらかというとリアル路線が好まれる傾向の日本でも、ここ近年オリジナルデザインのエアガンが人気を博している。その潮流を作ったのはG&GアーマメントやICSエアソフト、ARES、クラシックアーミーといった海外メーカー勢だ。

 

短いバレル/ハンドガードとPDWストックを組み合わせたARP9。マイクロカービンというよりもサブマシンガンといったほうが通じやすいかもしれない

 

 台湾や香港を拠点とする海外メーカーは、日本のみならずアメリカやヨーロッパなどに大量に輸出している。全体の輸出量から見れば日本向けはわずか数%だ。そんな欧米諸国を対象にエアガンを輸出する場合、実銃メーカーに対して形状や刻印を再現することへの許諾を得るのが通例だ。オリジナルデザインのエアガンが誕生した背景には、そうした実銃メーカーへの使用許諾を回避するためである。もちろん自分たちが作りたいものを自由に作るというポリシーもあるだろう。むしろ今となっては後者の意味合いのほうが割合としては大きいかもしれない。

 

ストックを伸ばしたところ。一般的なPDWストックはコンパクトさを優先して構えやすさを犠牲にしているが、ARP9は構えやすさを優先して伸長時をやや長めに設定している

 

 そんな背景の中、G&Gアーマメントは主にM4カービンタイプのオリジナルデザインの電動ガンを積極的にリリースしている。オリジナルデザインとはいっても、実銃のM4カービンがカスタムによって自在にスタイルを変えられることから、形状から刻印まで忠実に再現しない限りはどんなものでもありといえばありなのだろう。ここで取り上げるARP9は、M4カービンを拳銃弾仕様にしたいわゆるPCC(ピストル・キャリバー・カービン)をモチーフにしたもので、エアガンにおけるPCCブームの火付け役といっても過言ではない。

 

クッキーカッタータイプのフラッシュハイダーに長さ5インチのM-LOKハンドガードのコンビネーション。写真のようにハンドガードの付け根とロアレシーバーを持つと構えやすい。フリップアップフロントサイトは標準装備されている

 

 実はこのARP9、G&Gアーマメントの製品中もっとも売れた電動ガンだという。2017年に発売されて以来、日本ではいまだに広く支持されている。実銃におけるPCCは弾代が安い、リコイルショックが少なくて撃ちやすいなどのメリットから人気だが、エアガンではさほどメリットにはならない。一部パーツに互換性はあるものの、マガジンは専用なのでM4カービン用と共用できない。ではなぜARP9が、特にサバゲーマーを中心にこれほどまで支持されるのか。その理由は絶妙なパッケージングにあると言える。

 

軽量で耐久性のあるナイロンファイバー製ロアレシーバーにはストレートトリガー、GOGピストルグリップV1、ワイドトリガーガードが装着されている。マガジンキャッチは左右どちらからでも操作できるセンターレバー式

 

 実銃のPCCは14~16インチのバレル長が主流だが、ARP9はハンドガード、アウターバレルともに長さ5インチとかなりコンパクト。短く縮められるPDWストックとあいまってインドアフィールドなどの狭い場所でも取り回しやすく、カバンなどに収納できて持ち運びしやすい。さらにレシーバーなど主要パーツはナイロンファイバー製(ハンドガードやアウターバレルはアルミ製)で重量は約2,000g。片手で構えられる軽くて女性でも構えやすい。持ち運ぶ際にも便利だ。ゼンマイ給弾式の専用マガジンは装弾数300発とインドアフィールドなら1本あれば充分。樹脂製なので複数携行しても重さは気にならない。ハンドガードやアウターバレル、グリップは電動ガンM4カービンと同規格なので自分好みの長さや形状に変更することができる。

 

従来のホップチャンバーに比べてホップのかかり具合が細かく設定できるロータリー式ホップチャンバーが採用されている。インナーバレル長は128㎜しかないが高い命中精度を生み出す

 

 内部を見ると、ギアボックスは汎用性の高いバージョン2タイプ。今や電動ガンでは当たり前となっているMOSFET&ETU(電子トリガー)が標準装備されている。可変ホップアップシステムはARP9から導入されたロータリー式で、短いインナーバレルながら高い命中精度を生み出している。ひと昔前ならカスタムガン並みのスペックが投入されている。ARP9の唯一のデメリットはバッファーチューブ内に設けられたバッテリーコンパートメントが狭いこと。収納できるバッテリーの種類は限定されるが、サードパーティー製のバッテリーエクステンションなどを使えば解決できる。

 

電動ガンではホップアップ調整時にしか使われないチャージングハンドルだが、ARP9はアンビタイプが装着されており、細かな部分にもこだわりが見られる

 

 このようにサバイバルゲーム専用エアガンとして考えた場合、非常にメリットが多く、箱出しのままはもちろん、外装カスタムやチューニングもしやすい。操作系はM4カービンの特性を生かしており、M4カービンから持ち替えても違和感なく使えるはずだ。さらに実勢価格で30,000円前後と比較的入手しやすくコストパフォーマンスに優れている。オリジナルデザインの外観は好みがわかれるが、もしサバイバルゲーム用の電動ガンが欲しい方は候補に入れてみてはいかがだろうか。

 

PDWタイプのGOS V5ストック。伸縮は2段階のみだが実用上まったく問題ない。ストックリリースレバーは誤操作を防ぐためかテンションがやや高めだ

 

ストックを外してエンドキャップを外すとバッテリーコンパートメントにアクセスできる。収納できるバッテリーは限られるが、使い勝手は悪くない

 

グロックのマガジンをモチーフにした樹脂製ロングマガジン。装弾数は300発

 

バージョン2タイプのギアボックスを取り出して分解したところ。MOSFET&ETUが標準装備されている。シリンダーやシリンダーヘッド、ピストン、ギア類、スプリングなどすべてのパーツが電動ガンM4カービン系が流用できる

 

コンパクトで軽量、安定した実射性能、オリジナルデザインながらエアガンとしての実用性をしっかり備えたARP9はサバイバルゲームのメインウェポンにピッタリだ

 


 

[プロフィール]

 

アームズマガジンの編集ライター。エアガンシューティング歴35年。数多くの国内シューティングマッチ入賞経験に加えて、1999年、2000年に開催されたIDPAナショナルズ参戦、シグアームズアカデミーや元デルタフォース隊員のラリー・ヴィッカーズのタクティカルトレーニングを受講するなど実弾射撃経験も豊富。今まで25年、300冊以上のアームズマガジンと関連MOOKの制作に携わる。

 

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