エアガン

2021/03/09

東京マルイ「ガスブローバックガンUSP」【毛野ブースカの今月の1挺!】

 

「月刊アームズマガジン」編集部の毛野ブースカがおくる『毛野ブースカの今月の1挺!』 。今月は東京マルイのガスブローバックガン『USP』をご紹介!

 

前回の「今月の一挺」はコチラ

 


 

 

 季節は冬から春へと変わり、いよいよサバゲーシーズン到来だ。今月はサバゲー用ガスブローバックハンドガンとしてお薦めの東京マルイの「USP」を紹介しよう。

 

 実銃のUSPはヘッケラー&コック(H&K)が1993年に開発したオートマチックピストルだ。USPが登場するまでのH&KのオートマチックピストルはVP-70やP7、P9Sなどユニークなメカニズムを採用した独自路線の強いものばかりで、どの銃も成功作とは言えなかった。それに対してUSPは「U=ユニバーサル・S=セルフローディング・P=ピストル」という名のとおり、メカニズムについてはダブルアクショントリガー、オーソドックスなブローニングタイプのティルトバレル式ショートリコイルを導入している。とは言え、そこは世界に冠たる銃器メーカーであり技術屋のH&K、ポリマー樹脂製フレームや、ユーザーの使用環境にあわせて複数用意されているコントロールレバー(セーフティ/デコッキング機能)、センターレバー式のアンビマガジンキャッチ、さらにフレーム前部のアンダーレール(マウンティンググルーブ)を世界で初めて採用するなど、他社にはない革新的な機能も盛り込まれている。

 

直線基調のスライドや、アンダーレールと大型トリガーガードが付属するポリマーフレームなど1990年以降に登場したH&KのオートマチックピストルはすべてUSPが基本となっており、一見してH&K製のオートマチックピストルだとわかる

 

 余談だが、同時代に登場したアサルトライフルG36シリーズも、MP5やG3と同じくウェポンシステムとして展開できるモジュラリティを持ち、強化プラスチック製のレシーバーやマガジン、アンビコントロールレバー、フォールディングストックを採用するなど革新的な特徴がある一方、発射方式に関してはコンベンショナルなショートストローク・ガスピストン方式を採用するなど、メカニズム上の冒険を敢えて避けている。1990年代以降のH&Kの路線変更は、メカニズムに対して強いこだわりを持つ昔のH&Kを知る人間からすると寂しいと感じる反面、その後のH&Kの活躍を見れば間違っていなかったのだろう。

 

実銃から採寸されたボディや、エキストラクターは金属製の別パーツとなっているなどリアルさにもこだわっている。実銃のアンダーレールは独自規格だが、現在の主流にあわせてピカティニースペックのオプションレールが付属している

 

 話をUSPに戻すと、USP以降に登場したMk23ソーコムピストル、P2000、P30、HK45、そして自衛隊に制式採用されたVP9(SFP9)に至るH&KのモダンオートマチックピストルはすべてUSPを元にデザインされており、VP9が撃発方式にストライカーファイア式を採用するものの基本的なメカニズムは変わっていない。サイズやデコッキング機能の有無などの違いはあるものの、操作性に関しても共通部分が多く、持ち替えても違和感なく扱える。まさにユニバーサルデザインのオートマチックピストルなのだ。

 現在のオートマチックピストルマーケットを席巻しているグロックピストルに比べればUSPは地味な存在だが、ダブルアクション/ハンマーファイア/ポリマーフレームのオートマチックピストルとしては最も成功している。
 

専用にセッティングされた直径15mmの大口径シリンダーとダイキャスト製マガジンのおかげでトップクラスのリコイルショックとブローバックスピードを実現している。いい意味で裏切られるこの撃ち味こそUSP最大の魅力と言っても過言ではない

 

 東京マルイのUSPも同社の人気モデルであるグロックシリーズやハイキャパシリーズの陰に隠れがちだが、ガスブローバックハンドガンとしては高い実力を備えている。USPより先にリリースされたUSPコンパクトをベースに、実銃から採寸したデータを元に、直線基調の特徴的なフォルムを忠実に再現。アンダーレールはH&Kの独自規格なので現在主流となっているピカティニーレールに対応するオプションレールが標準装備されている。コントロールレバーは左側のみだが、セーフティとデコッキング機能がすべて備わっているするバリアント1仕様となっている。もちろんリアルディメンションなので実物ホルスターに収納できる。

 

大型のトリガーガードはグローブを着用した手でもトリガーに指をかけやすい。トリガープルは重くなく、ダブルアクションからでも引っかかりなくスッと引ける

 

 一方、内部メカニズムに目を移すと、USPコンパクトと同じ直径15mmの大口径シリンダーを採用しているブローバックエンジンはUSP専用にセッティングされており、ブローバックフィーリングは同社のガスブローバックハンドガンの中でもトップクラス。手にビシッとくるリコイルショックとスピーディーなブローバックスピードを両立させている。さらにダイキャスト製マガジンは冷えに強く、連射してもブローバックスピードがダレにくい。可変ホップアップシステムはスライドを外さなくても調整ができる。命中精度の高さは言うまでもない。

 

USP以降のH&K製オートマチックピストルの特徴と言えば、利き手を選ばず操作できるセンターレバー式のアンビマガジンキャッチだ。ガバメントやグロックピストルのように押し込むのではなく下げる感覚なので最初は慣れが必要だが、慣れれば素早く操作できる

 

 ボディサイズはグロック17やP226レイルに近く、重量は720g(マガジン含む)なのでオートマチックピストルとしては平均的なサイズ。グリップはやや角ばっているものの、滑り止めの効果もあり握りにくくはない。大型のトリガーガードはグローブを着用した手でもトリガーが引きやすい。コントロールレバーは程よいサイズで、不意に動いてしまうこともなく、かと言って操作しにくいこともない。マガジンキャッチはアンビなので左利きの方でも操作しやすい。ユニバーサルという名のとおり使い勝手はよく、ガスブローバックハンドガンとしての完成度も高い。

 実銃同様、質実剛健な作りで実力がありながらも地味な存在の東京マルイのUSP。もしサバゲー用ハンドガンを選ぶのに迷っていたら、ぜひUSPを候補に加えてほしい。

 

東京マルイのUSPはバリアント1のコントロールレバーがチョイスされている。まずはハンマーダウン/セーフティオンの状態。レバーを跳ね上げるとオンになる

 

次にハンマーコック/セーフティオンのいわゆるコックアンドロックの状態。バリアント1はハンマーダウン(デコッキング)、ハンマーダウン/セーフティオン、ハンマーコック/セーフティオンの3つのセーフティポジションが備わっている

 

ハンマーコック状態からレバーを下げるとハンマーがハーフコック状態にデコックされる。セーフティオンと操作方向が逆なのと、デコックにやや力が必要なのでセーフティと間違って操作してしまうことはないはずだ

 

前後ストラップに施されたチェッカリングの効果は大きいものの、やや角ばったグリップは好みがわかれるところ。手の小さい方は握りにくいと感じてしまうかもしれない

 

ダイキャスト製マガジンの装弾数は25発。M92FやP226Rよりやや幅があるので、カイデックス製やポリマー樹脂製のマガジンポーチの場合、USPのマガジンに対応しているものを選ぶこと

 

 


 

[プロフィール]

 

アームズマガジンの編集ライター。エアガンシューティング歴35年。数多くの国内シューティングマッチ入賞経験に加えて、1999年、2000年に開催されたIDPAナショナルズ参戦、シグアームズアカデミーや元デルタフォース隊員のラリー・ヴィッカーズのタクティカルトレーニングを受講するなど実弾射撃経験も豊富。今まで24年、280冊以上のアームズマガジンと関連MOOKの制作に携わる。

 

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