実銃

2021/09/04

【実銃】自衛隊が選んだハンドガンのSFP9の最新バージョン「H&K SFP9 OR」

 

 現在、実銃のハンドガン市場でひしめくのはストライカーファイア/ポリマーフレームピストル。そのカテゴリーにH&Kが放ったのはSFP9/VP9だった。その中でも最新バージョンであるSFP9 ORをハンガリーで撮影することができた。今回はそのレポートを公開しよう。

 


 

 

H&KHeckler & Kochへの期待感

 

 ストライカーファイア/ポリマーフレームピストルの新型が発表されると聞くと、いつも胸が躍る。それがヘH&Kのような独創的なメーカーならなおさらだ。グロックの登場で同種ピストルの人気は飛躍的に高まり、あらゆる銃器メーカーが手を付けているが、どれも似たり寄ったりで大手メーカーすらグロックそっくりの製品を出す始末だ。だからこそ、「どんな個性を持ったピストルに仕上げてくるのか!?」と期待が膨らんでしまう。

 H&Kが2014年にアメリカで満を持してストライカーファイア/ポリマーフレームのVP9を発表した際は、その期待たるや並みのものではなかった。このVP(Volkspistole= ドイツ語で「国民拳銃」)9は、かつて同社が手がけたVP70を髣髴とさせたからだ。1970年に登場したこの銃はストライカーファイア/ポリマーフレームのデザインで先鞭をつけており、ストックと接続すると3点バースト射撃ができるユニークな機構を備えていた。当時はその未来的なデザインにワクワクさせられたものだ。

 

 

H&K SFP9 OR

  • 口径:9mm×19
  • 全長:186mm
  • 全幅:33mm
  • 全高:137mm
  • バレル長:104mm
  • 重量:723g
  • 作動方式:反動利用式セミオート、プリセットストライカー
  • 装弾数:15 / 17 / 20発

 

 このSFP9/VP9はドイツやアメリカなど各国の警察で採用されているほか、我が国、日本の自衛隊に新拳銃として採用された。トライアルは2017年頃よりグロック17 Gen5、ベレッタAPX、そしてこのSFP9の3機種で行なわれ、2019年12月に採用を公表。令和2年および3年の調達数では年間300挺程度の予算が計上され、陸上自衛隊で徐々に配備が進みつつある。また、H&Kによれば東京オリンピック2020を期に日本の警察でも一部でSFP9を採用する動きがあるようだが、日本国内では報道されていない。

 

この銃はSF仕様のトリガーで、キレのよさはストライカー式ピストルの中でもトップクラス。左側のスライドストップは大型で操作しやすい。その前方にあるのはテイクダウンレバー

 

セーフティはトリガーセーフティのみだが、サムセーフティ付きも選べる。マガジンキャッチはUSP以来のパドルタイプ(トリガーガードの付け根にある)で、左右どちらの指でも押し下げられる。アメリカンスタイルのプッシュボタン仕様も選択可能

 

ホールドオープンした状態。スライドストップはアンビで、グリップから手を移動させなくとも指だけで操作できる。右側の後ろに伸びたスライドストップは見た目に美しくないが操作性はいい。マガジンのボトムプレートが大きくグリップもえぐれているので、マガジンが引っ掛かっても引き抜きやすい

 

テイクダウンピンを時計回りに90度回転させることでスライドを分離でき、フィールドストリッピング状態にできる

 

フレーム内に収められたシャーシ。前後片側2カ所、計4カ所のガイドでスライドを保持している。トリガーバーは直接シアに繋がっておらずセカンダリーシアを介しており、こうして良好なトリガーフィーリングと安全性を確保している

 

 構造を紹介した通り、注目するのはトリガーフィーリングや操作のしやすさだ。次回のレポートではハンガリーで実射した手応えを解説し、その魅力を伝える。また、さらに詳細なSFP9 ORの構造解説は月刊アームズマガジン2021年9月号に掲載されているのでそちらもぜひ参考にしていただければ幸いだ。

 

 実射レポートはこちら 

 

Text & Photos:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

Special Thanks to GIS Technologies L.T.D:http://www.gistactical.com

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年9月号 P.52~59より抜粋・再編集したものです。

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