エアガン

2018/11/10

MOST POWERFUL MAGNUM HANDGUN【2018年12月号掲載】

 

世界最強の名を欲しいままにするマグナムハンドガンを撃つ!

 

 多くのハンドガンの中でも「最強のハンドガン」を選ぶとするならば、この2機種を挙げることになるだろう。オートマチックピストルならマグナムリサーチの「デザートイーグル.50AE」、そしてリボルバーなら「スミス&ウェッソンW500」である。

 

MOST POWERFUL MAGNUM HANDGUN

最強のオートマチックピストルであるデザートイーグル.50AE

 

 オートマチックは銃身と一体化したチャンバーを持ち、発射のたびに自動的に使用済の薬莢を排出し、次弾をマガジンからチャンバーへ送りこむ複雑な構造を持つ。それに対してリボルバーは、複数のチャンバーを持つ回転式のシリンダーを手動で回転させて次弾の発射準備を行なう構造のため、単純かつ頑丈に作りやすく、また強力な弾を使う場合に都合がいい。

 これまで複数のメーカーが、強力なマグナムクラスのカートリッジを使うには構造的に不利なオートマチックピストルで、あえてマグナムクラスのカートリッジを撃つモデルにチャレンジしてきた。「オートマグ」「ウィルディマグナム」「グリズリー」等が生まれては消えていった。これら.44マグナム弾かそれ以上の威力を持つカートリッジを使用するオートマチックピストルには実用性以上にロマンがある。このカテゴリーで現在最強のオートマチックピストルであるのが、専用の.50 Action Express(アクションエクスプレス)、通称 .50AE弾を使用するデザートイーグル50AEである。

 

MOST POWERFUL MAGNUM HANDGUN

最強リボルバーであるS&W500

 

 対して、リボルバーでも各社が「最強」の称号を求めて競い合い、その威力はますます大きくなっていた。1955年に誕生した.44マグナム弾は、映画『ダーティーハリー』シリーズの成功とともにもっとも知られるマグナムカートリッジとなった。その後、.454カスール弾といったより強力なカートリッジも生まれ、2003年には現在最強のハンドガン用カートリッジである.500S&Wマグナム弾と専用のリボルバーS&W 500が誕生したのである。今回は、最強のオートマチックピストルであるデザートイーグル50AEと最強のリボルバーであるS&W 500、この2挺の.50口径ハンドガンを紹介しよう。

 

MOST POWERFUL MAGNUM HANDGUN

左から9mm×19弾、.50AE弾、.500S&W弾。9mm×19弾は494ジュール。それに対して.50AE弾は2200ジュール、さらに.500S&W弾は3498ジュールを発生させる。一般的な9mm口径のハンドガンとは桁違いの威力を発揮するのがS&W500とデザートイーグル50AEである

 

■スミス&ウェッソンM500

 

 1971年にスミス&ウェッソンが発売したM29は当時最強ハンドガン用カーリッジである.44マグナム弾を使用し、もっとも強力なハンドガンとして大人気となった。その後、.454カスール弾の登場や、スタームルガーを始めとするメーカーが次々と.44マグナム弾を使用するリボルバーを市場に投入し、M29の独占的な市場は失われていった。2003年、スミス&ウェッソンはカートリッジメーカーのCor-Bon(コーボン)と協力し、.500S&W弾を完成させる。標準仕様の.500S&W弾は440gr(29g)の弾頭を1625ft/s(495m/s)で発射。対して.44マグナム弾は240gr(16g)の弾頭を1180ft/s(360m/s)で発射する。マズルエナジーで比較すると.44マグナム弾の2.5倍の威力を発揮する.500S&Wはスミス&ウェッソンがラインアップする最大のリボルバー(Nフレーム)を持ってしても使用することはできず、専用の巨大なXフレームを持つM500が完成した。これが一般市場に流通する量産された最強のリボルバー「M500」である。

 

MOST POWERFUL MAGNUM HANDGUN

巨大な圧力を発生する.500S&W弾を押さえ込むために充分な肉厚を持ったシリンダー。装弾数を5発とし、チャンバー間の肉厚を確保している

 

MOST POWERFUL MAGNUM HANDGUN

トリガー、グリップ、ハンマー、シリンダーラッチ等、人が操作する部分は通常のリボルバーに近いサイズとなっており、操作性は失われていない

 

MOST POWERFUL MAGNUM HANDGUN

発射の瞬間。ハンドガン最大の威力を持つM500は、最大のリコイルを発生させる。人間が耐えられる限界のリコイルとも感じられる強烈なものだ

 

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反動によってシリンダーラッチの角が親指の付け根に食い込んだ。強烈なリコイルによって手の平をバットで叩かれたような痛みとともに手首、肘、肩の関節にしばらく違和感を感じることになる(画像はWEB公開のためのボカシ加工済)

 

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M500を撃つと、恐怖感と興奮が混ざり合った体験をする。強烈なエネルギーが手の中で発生し、そのエナジーが手を通じて伝わってくる。他の銃では味わえない体験であり、5連射すると、なぜか皆幸せそうな笑顔になるのである

 

■IWI デザートイーグル.50AE

 

 デザートイーグルは米国M.R.I.社が考案し、イスラエルのIWI社が完成させ、製造しているオートマチックピストルである。1979年に発売された最初のモデルはリボルバー用の.357マグナム弾を使用するモデルで、オートマチックピストルでは作動が難しいリムドカートリッジながら、巧みなマガジンデザインで成功作となった。続けてより強力な.44マグナム弾を使用するモデルも発売され、入手が安易なリボルバー用マグナム弾を使用し、確実な作動が得られるマグナムオートピストルとして大きな成功を収めていった。1988年に開発された.50Action Express弾は、オートマチックピストル用として開発された最大のカートリッジであり、この.50AE弾を使用するデザートイーグル50AEは、最強のオートマチックハンドガンとなったのである。

 

MOST POWERFUL MAGNUM HANDGUN

イスラエルで生産されていた初期型(写真下)と、米国で生産されている現行型(写真上)の比較。仕上げやバレル上部のレール形状などが異なるがパーツの互換性などは保たれている

 

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デザートイーグルはマイクロロッキングラグによる閉鎖方式を採用し、高い圧力を持つマグナム弾でも安全に撃てる構造を持っている

 

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デザートイーグルは巨大なハンドガンだ。特にグリップのサイズは大きなマグナム弾を納めるマガジンを持つことから特に前後に長い

 

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デザートイーグル.50AEを撃つ。やはりリコイルは強烈だ。だが人間の限界に挑戦するような不快感はない。リコイルに依存しないショートストロークガスピストン作動なので反動が逃げてしまっても確実に作動するのがデザートイーグルのデザインの巧みさでもある

 

 M500、デザートイーグル.50AEのクラスの反動になると、1日に楽しく撃てるのは10発程度だと言えるだろう。それ以上は苦痛であるし、体へのダメージが大きい。今回の撮影のために友人に声を掛けたところ、M500とデザートイーグル.50AEが2挺ずつ集まった。どの銃もこれまでに撃ったのは20発程度。それも持っている本人ではなく「最強のハンドガンを撃ってみたい」という友人のリクエストに答えるかたちで撃たせてあげた弾数のほうが多いという。実用性を超えたコレクタブルアイテムとしての価値が高いのが、この手のハンドガンである。何と言っても、最大口径を持つ最大・最強のハンドガンを持つのは気分が良いものだ。

 

MOST POWERFUL MAGNUM HANDGUN

本誌では1ガロンの水ボトルを至近距離からそれぞれで撃ち抜いた模様も掲載している。撃ち抜くと言うよりも吹き飛ばすといったほうがふさわしいが…

 

TEXT&PHOTO:SHIN

 


この記事は2018年12月号 P.106~113より抜粋・再編集したものです。

 

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