エアガン

2018/11/05

CQB withエバン・フェイファー【2018年12月号掲載】

 

THE GUNFIGHT TECHNIQUES FROM EXPARTS

~プロから学ぶ最新実践的射撃術~

 

米国では西部開拓時代から現代まで、銃器のプロフェッショナルであるガンファイター達は注目を集め、その技術は時代と共に進化してきた。この連載では、米国の誇るガンファイター達のテクニックを、基礎から発展までひとつづつ紹介していこう。

 


 

 銃は扱い方を間違えば、大きな事故に繋がる武器である。だからと言ってむやみに恐れる必要はなく、道具として安全に扱うためのシンプルな「フォーファイアアームズセーフティルールズ(4つのセーフティルール」を守るだけで事故は防げる。

 

  1. すべての銃は絶えず装填されている
  2. 破壊したくない物には銃口を絶対に向けない
  3. サイトがターゲットに向くまで、引き金から指を離しておく
  4. ターゲットを確認し、そしてその背後に何があるのかを認識する

 

 4つの安全ルールのうち、1つが破られたとしても危険は起こらない。だが、2つ、3つと複数の安全ルールが同時に破られた時、意図しない発射(誤射)が起こり、事故に繋がってしまう。4つのルールは、例え実戦であっても守られるべきルールである。

 

CQB withエバン・フェイファー

 

 Evan Hafer(エバン・フェイファー)は、米陸軍に14年間所属、その内8年間を統合特殊作戦コマンド(JSOC)に属する対テロ部隊で過ごした。2011年にはDirect Action Resource Center(DARC)にて、米国務省特殊部隊のインストラクターおよび米国諜報機関のエージェンシー・タクティクス・インストラクターに就任。現在では、ビジネスマンとしてパテント登録を専門とするコーヒーショップ「Black Rifle Coffee Company」のCEOとして活動している。

 

CQB withエバン・フェイファー

CQBの訓練ではシュートハウス(実際の建物を模した訓練場)で現実的なシナリオをベースとしたトレーニングを繰り返し行なう

 

CQB withエバン・フェイファー

CQB訓練用に作られたシュートハウスには、屋根はなく上にキャットウォークと呼ばれる通路が作られている。各オペレーターの動きがわかりやすく、指導しやすい

 

 今のテロのスタイルは、人質をとっての立て篭もりから、民間人の短期間での大量殺戮を目的としたものに移っており、時間とともにその被害は拡大していく。そのため、包囲、被害の拡大防止、交渉、突入という従来の人質事件への対策を取ることができない。対応する法執行機関は1名でも積極的に突入しテロリストを追跡、無力化する必要がある。
 民間人は攻撃を受けたら素早くその場から離脱し、必要があれば自衛のための交戦を行なう必要がある。

 

CQB withエバン・フェイファー

圧倒的な数と火力で襲いかかる敵に対して、少人数のグループが携行できる武器のみでできることは少ない。時間とともに悪化する状況を脱するために最大のスピードで移動する

 

CQB withエバン・フェイファー

少人数が素早く移動する時、ローレディーやハイレディーといった動きをしている時間はない。視野を広く保ち、銃口を右目の真下に持ってくるようにする

 

CQB withエバン・フェイファー

移動する時、銃口は上げた状態にするが視界が限定されるため、スコープやドットサイトを覗いたまま移動してはいけない

 

CQB withエバン・フェイファー

戸口に近づく。部屋の内部を外側から極力確認し、排除できる敵は外から排除してしまう。部屋の中で敵と撃ち合いになれば、できることのオプションは少なくなってしまう

 

CQB withエバン・フェイファー

戸口に近づくにつれて銃口を体に寄せてコンパクトに構えながら、戸口を一気に通る。近くに敵がいた時はこのまま撃つか銃口で突いて倒す

 

CQB withエバン・フェイファー

部屋の中に入ったら素早くストックを肩にあて、より安定した射撃姿勢をとる

 

 フェイファー氏は言う。「CQBとはClose Quarters Battle(近接戦闘)」を意味し、近距離における敵との戦闘を意味している。軍や警察特殊部隊で行なわれるCQBのほとんどが、人質救出のためのCQBである。人質を取り立て篭もる犯人に、同時に複数の場所から大量の人員と火力を持って突入、制圧するのが目的となる」
「それに対して諜報活動の世界で使われるCQBは、建物の制圧、支配を目的としたものではなく、数人のオペレーターが敵支配地域において諜報関係者を安全に進入させ、守り、移動し、離脱することを目的としている。この移動のスピードで敵の隙間を抜けるスタイルは、乱射事件が多発している米国において、法執行機関や民間人が必要とするCQB技術でもある」と。

 

フォースオンフォーストレーニング

 

 実際に撃ち合う訓練であるフォースオンフォーストレーニングは、エアガンを使うことで安全かつリアルに行なうことができる。CQBは角度の戦いでもある。戸口や遮蔽物によって遮られた射界と視界をいかにしてクリアにし、敵の裏をかいて移動し攻撃を行なうかは、実際に人と撃ちあうことで多くを学ぶことができる。

 

CQB withエバン・フェイファー

制圧が目的となるCQBではなく、移動するスピードが重要となるCQBでは部屋の中に入らないという選択肢もある。部屋の外から見える敵を攻撃する

 

CQB withエバン・フェイファー

 

CQB withエバン・フェイファー

死角となるのが戸口のある面の角部分である。部屋の外から見えない部分がもっとも危険な場所であることを忘れてはならない

 

 「CQBの基本は安全にAからBへと移動する技術だ。敵に撃たれないように、周囲の環境を最大限に利用して移動する」とフェイファー氏は言う。
 「CQBの3要素はスピード(速さ)・サプライズ(驚き)・バイオレンスオブアクション(強烈な力の行使)。小さなエレメントであることを有効に使い、優位に立つ相手の合間をスピードですり抜ける。より大きな敵と対峙した時、時間とともに状況は不利になっていく。リスクを最小限に抑えつつ、必用最低限の交戦を行なう」。

 少人数で警戒しながら素早く移動することでスピードを味方につけるタクティクスは、特殊部隊が行なう強襲やホステジレスキューを目的としたCQBとは異なるテクニックが必要となるのである。

 

CQB withエバン・フェイファー

フェイファー氏は他にも、2名一組でのスピーディな実践的CQBテクニックを教授してくれた。くわしくは本誌記事でご確認いただきたい

 

TEXT&PHOTO:SHIN

 


この記事は2018年12月号 P.114~117より抜粋・再編集したものです。

 

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