実銃

2021/04/29

【実銃】スプリングフィールド製1911を超えた銃「STACCATO C2」

 

 USPSAなど競技銃の世界では一世を風靡したSTIの2011モデルが、ここ数年で9mm×19の法執行機関Law Enforcement向けモデルに変貌した。昨年には社名を“STACCATOスタカート”に変え、STACCATO 2011シリーズは急速にLEの間で浸透しつつある。今回はそのSTACCATO 2011シリーズのコンパクトモデル「STACCATO C2」をご紹介しよう。

 


 

 

STIからSTACCATOへ

 

 1993年、VirgilバージルTrippトリップSandyサンディStrayerストレイヤーという2人のエンジニアによって、ハイキャパシティ、ダブルカラムマガジンを備えた、1911プラットフォームの画期的なピストルがリリースされた。“STI (Strayer Tripp International) 2011”の誕生である。.45ACPなら12発、.40 S&Wなら18発、9mm×19なら20発もの装弾数を誇る2011モデルは、競技銃レースガンの世界を席巻していった。

 タイムプルーフされた1911プラットフォームにハイキャパシティマガジンという画期的な組み合わせではあったが、当初はミリタリーやLEに制式採用されることはなかった。最大の理由は“信頼性Reliability”の欠如。いくらメンテナンスをしたつもりでも、なぜか装弾不良のようなジャムが起きてしまう。それは、キモともいえるハイキャパシティマガジンのデザインと品質管理に問題があったためだ。

 STIはその後も、会社の離合集散を繰り返すなどの紆余曲折を経てきたが、数年前の組織改編でデザイナーやエンジニア、セールスにミリタリーやLE経験者を積極的に採用(全社員の25%)。そして2019年にはU.S.マーシャルのSOG(Special Operations Group)に、STACCATO 2011のスペシャルモデルが制式採用されるに至った。それまでSOGはスプリングフィールドのレール付き1911(.45ACP)を採用していたが、TACCATO 2011はSOGの過酷なテストを経た結果、ソフトなリコイル、多弾倉マガジン、精度、撃ちやすさ、そして信頼性が従来のスプリングフィールド製1911を大きく上回る評価を得たのである。

 今回紹介するのはそのコンパクトモデルである「STACCATO C2」である。

 

 

STACCATO C2

  • 口径:9mm×19
  • バレル長:3.9インチ・ブルバレル
  • 全長:7.5インチ(191mm)
  • 全高:4.94インチ(126mm)
  • 全幅:1.3インチ(33mm)
  • 重量:25オンス(709g)
  • 仕上げ(フィニッシュ):DLCブラック
  • リコイル・システム:3.9リコイル・マスターライト
  • グリップ材:2011 G2 Officer
  • フレーム材:軽量合金
  • 装弾数:16発

 

FBIスペシャルエージェントとして21年間勤め上げたヒルトン・ヤムのSTACCATO C2。
これまで2万発以上撃ち、バレル交換も実施。トリガーシューのみ彼の好みのパーツになっている。短く小さくトリムされたビーバーテールやハイグリップへの対応など、あちこちが洗練されている​​​

 

STACCATO C2撃発の瞬間。3.9インチバレルのコンパクトガンとしては、ソフトなリコイルだ

 

こちらはSTACCATO 2011シリーズの「STACCATO P」。グリップ以外は完全分解されている。各パーツのクオリティの高さが見て取れる

 

 ここで紹介したSTACCATO C2をはじめとしたSTACCATO 2011の躍進には目を瞠るものがある。LAPD SWATやテキサスレンジャーといったエリートチームの制式採用はもちろん、全米各地で280以上の警察Police DepartmentがSTACCATOの制式認定(警察官の携行を認める)に踏み切り、デューティガンとしての地位を確立している。

 次回のレポートでは、STACCATO 2011を制式認定しているPDのアーマラー(ガンのメンテナンスを担当するオフィサー)に向けた講義を紹介する。内部構造の講義や実射について解説しているのでぜひそちらもご覧いただければ幸いだ。

 

LEオフィサー限定の海外銃火器講義はこちら

 

Text & Photos:Hiro Soga

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年6月号 P.194~201より抜粋・再編集したものです。

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