2021/02/07
【実銃】ガスディレイドブローバック方式ハンドガン「ステアーGB」
オーストリアのセミオートピストル、ステアーGBは実銃の世界では比較的マイナーな部類のハンドガンといえる。この銃はハンドガンでは珍しいガスディレイドブローバック機構を搭載し、当時としては革新的なアイデアが盛り込まれていた。だが、トライアルで強敵たちに阻まれ、民間市場でもセールスに失敗してしまう、まさに「不遇の銃」となってしまった。今回はその銃の魅力をレポートする。
ステアーGB
- 口 径:9mm×19
- 全 長:216mm
- バレル長:136mm
- 重 量:845g
- 装弾数:18発
「不遇の銃」ステアーGB
ステアーGBはオーストリアの銃器メーカー、Steyr Mannlicher GmbH & KG(ドイツ語ではシュタイアー・マンリヒャーと発音)が開発したダブルアクションのセミオートピストルである。ガスディレイドブローバック機構を持ち、モデル名「GB」も「Gasbremse(英語でGas Brake=ガス制動式の意味)」に由来。GBはアルミプレスのフレームを備え、全体的にパーツ点数を抑えてシンプルかつ軽量に設計されているのが特徴だ。
この銃は1960年代後半にオーストリア軍のワルサーP38やコルトP11の後継として開発がスタートするも、1970年代初頭に完成した試作型のPi 18はオーストリア軍に採用されなかった。そしてアメリカの民間向けも模索されるがPi 18の粗悪コピーが作られてしまうという問題が生じ、紆余曲折を経て改良を重ね1981年にようやく完成。「ステアーGB(Steyr Modell GB)」と命名され、翌年行なわれたオーストリア軍次期制式拳銃トライアルに提出された。ステアーは1978年にオーストリア軍に制式採用された同社のアサルトライフル、AUGと同様、GBで次期制式拳銃の座を狙っていたのである。だが、そのトライアルではグロック17に敗北、アメリカ軍の次期制式拳銃トライアルではベレッタ92に敗北してしまった。さらに、アメリカの民間向け市場での不振も重なってセールスは不調。法執行機関での採用例もわずかで、結局2万挺程度が製造されたのみで1988年にステアーでの製造は終了し、「不遇の銃」というレッテルを貼られてしまったのである。
ガスディレイドブローバックとは
セミオートピストルが発射時のエネルギーを利用してスライドを後退させ、排莢と次弾装填のプロセスを繰り返すのはご存知の通りだろう。その際、発射と同時にスライドが後退すると、装薬が完全に燃焼しないまま発射ガスが噴き出てしまうという問題が生じる。装薬のエネルギーが弾頭に充分伝わらない上、漏れた高温のガスは射手に危険を及ぼす。
そこで、弾頭が銃口を飛び出すまでスライドを固定させるため、さまざまなロック機構が開発されている。スライドを重くすることで後退を遅らせるシンプルブローバックや、バレルとスライドを一緒に後退させ、一定の位置でロックを解除してスライドを後退させるショートリコイルなどがそれだ。
では、ステアーGBで採用されているガスディレイドブローバック機構がどういうブローバック機構かというと、弾頭が発射された際、発射ガスをバレル内に充満させることによってそのガス圧でスライドの後退を抑え込むのだ。弾頭が銃口を離れるまではスライドがフレームに固定されているため、命中精度で有利となる。
ただし、燃焼ガスがスライドやバレルの外にあるシリンダーに充満するため熱を持ちやすく、連射し続けるとグリップできなくなるほど熱くなりかねない。また、バレルにガスシリンダーを備え、装弾数も18発とハイキャパシティにしたことでサイズが大きくなってしまったことは欠点と言えそうだ。
では、続いてこの銃の実射インプレッションを紹介しよう。
TEXT & Photos:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
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この記事は月刊アームズマガジン2021年3月号 P.114~121より抜粋・再編集したものです。