2020/11/23
【実銃】SWATスナイパーも使うグロックカスタムの実力【FOWLER INDUSTRIES】
ストライカーファイア/ポリマーフレームのピストルといえば、まず思い浮かぶのがグロックだろう。ミリタリー&ポリスを中心に世界中で使い込まれ、その信頼性は高く評価されている。基本性能に優れたグロックを、さらに魅力的にするのが、カスタマイズだ。数あるカスタムグロックの中から、今回紹介するのはFIのモデルだ。
※このレポートは月刊アームズマガジン2018年10月号に掲載されたものを再編集したものです
目次
カリフォルニアのグロック事情
1986年のUSリリース以来、今や5代目(ジェン5)まで進化したグロック。しかし、規制の厳しいここ米カリフォルニア州では、2018年時点ではガンショップで手に入れられるのはジェン3モデルしかないのだ。ジェン4や5を手に入れたければ、合法的にこれらを手に入れられる法執行機関の関係者から個人売買で買うしかない。ほとんど市場に出ることはなく、その値段も驚くほど高い。要するにカリフォルニアではジェン3が未だにニューモデルなのだ。
グロック社の最新モデル、第5世代G17は、それまでのモデルに比べて格段の進歩を遂げている。個人的には「箱出しに状態で使い倒すことのできる、初めてのモデル」に仕上がっていると考えている。そのジェン5にしても、フレームのスティップリングなどいくつか手を入れたいポイントがある。それゆえ全米に散らばるグロックのカスタムガンスミス達は、引く手あまたなのだ。
グロックのカスタムポイント
では、グロックはどこにカスタムの手を入れるべきなのだろうか? 今回は特にジェン3&4における要カスタムポイントを上げてみたい。
- トリガーブル
固体によっては6ポンド(約2.7kg)以上はあるトリガープルは、重いだけでなくプリトラベル(引き始めから重さの変わるポイントまでの距離)と呼ばれる遊びも多く、リセット(発射後、次弾が撃てるまでトリガーを戻す距離やそのクリック音をいう)の長さも膨大である。トリガーの形や角度を含め、トータルチューンを施したい。
- サイト
オリジナルの前後サイトは変形しやすいポリマー製なので、金属製の強度を持ち、よりすっきりとしたサイトピクチャーを持つものに交換したい。
- フレーム
オリジナルフレームは、手に汗をかくとすべりやすい上に、バックストラップ下部のふくらみが気になる。できる限りリシェイプして、全面にスティップリングを入れたい。
- スライド
オリジナルのままで問題ないが、個人的にはフロントセレーション(両サイドと上部)を追加し、マイクロドットサイトを搭載したい。
- バレル
実用上問題ないが、ジェン3&4までは鉛弾頭の撃てないポリゴナルバレルだった。ここは精度の高いバレルを信頼性を損なわない程度にフィットさせたい。
贅沢を言えばきりがない。だが、そもそもグロックは基本性能が高いので、前後サイトの交換とフレームのカスタマイズのみで段違いに使い勝手が向上する、というのが通説だ。ストックのトリガープルは、5000発も撃てば、スムーズさや切れ具合が向上するので、そのままでもいいのだが、筆者のように何百発も撃つような使い方をすると、その重さは徐々に耐えがたくなってくる。ここはせめて4〜5ポンド(2kg前後)に収め、より短くはっきりとしたリセットを持つトリガープルにカスタマイズしたくなってくる。
理想を形にしたグロックカスタムメーカー
FOWLER INDUSTRIES
そこで今回紹介するのが、グロックのプロダクションモデル競技のチャンピオンとして有名なローガン・ファウラー率いる「FOWLER INDUSTRIES」である。
ガンスミスその人がシューターであること。それもプロダクションモデルクラスのチャンピオンであるというのは、重要なポイントだろう。競技に特化したレースガンではなく、基本的にはガンショップで売っているストックモデルを使って、クラス優勝をしている。つまり、プロダクションモデルが、競技という限界に挑戦する場でどのように機能するかを知り尽くしていることになる。そのデザインセンスと工作精度は卓越しており、一流シューターであるが故の「的を射た」カスタマイズだ。
では、そのFIによる作品を二挺紹介しよう。
FI G17GEN4 MK1
まず、一目を引くのは、スライドのマルチカムセラコート。カラーのブレンドが素晴らしく思わず見とれてしまうほど。リアサイトはFIデザインで、緊急時にはベルトや靴でスライドをオペレートできるようになっている
アグレッシブなフロントセレーションが個性的だが、細部をみるとバレル部分のポケットやリアセレーションなどディテールに気を使っているのが判る。スライドのセラコートは“NG”という新進気鋭の専門会社がこなしている。トリガーもセラコートが施してある
バレルはFIのオリジナルで、バレル自体の精度は30ヤードで1/2インチ以下にまとめることができるのだという。前後サイトもFIのオリジナルデザインだ
トリガーはこの位置でリセットされた状態だ。プリトラベルはほとんどなく、4.5ポンドほどのトリガープルでクリスプに切れる。トリガーフェイスは微妙な面取りがしてあり、指先にはこのセンターの細い部分が繊細にタッチする。削り上げられたトリガーガードはハイグリップを容易にし、リコイルの軽減にも役立っている
G17のトリガープルは、10回平均で4ポンド4オンス、つまり4.25ポンド(約1.93kg)だった。タクティカルユーズには理想的な重さだろう。重さもさることながら、リセットの長さ、スプリングテンション、くっきりと聞こえるリセット音には好感が持てる
FI G34 MK3
マルチパーパスウェポンとしてデザインされたG34 MK3。サプレッサー用スレッドを備えた6インチバレルのフィッティングはそこそこタイトだ。マズルのスレッドカバーをアンスクリューすると、ねじ山が現れる
ねじ山にサプレッサーを装着。このセットアップなら室内でもイヤプロテクションは必要ない。レーザー、ライトのコンビネーション点灯はワンタッチだ
このスレッドは結構繊細なので、サプレッサーを装着しないときはスレッドガードでプロテクトする必要がある
ピラミッドセレーションと名づけられたリアのセレーション。セレーションの幅が広くシャープになって引きやすい
なんとも見目麗しいG34 MK3モデル。ただし、個人的な好みを言わせてもらうと、軽量化目的のウィンドウは異物の進入を防ぐ意味から埋めてしまいたい。以前、ミリタリーのある部隊が、G34の元々ある軽量化ホールを溶接で埋めて一部採用するという話があった
グロックカスタム実射!
見るだけでもその魅力が伝わってくるグロックカスタム。今回はそれを現役ポリスオフィサーのジェイソン・デイヴィス氏にお願いして、PDのインドアレンジを使わせてもらった。彼もまたこのグロックカスタムを愛用している。彼は以前「1911 VS Glock」のレポートでそれについて触れているのでそちらもぜひご覧いただきたい。
さて、早速実射に移ろう。用意した弾は、プライム社の124グレインFMJと、フェデラル社の147グレインHSTである。PDのトレーニング時間が迫っていたので、充分な時間が取れたとはいい難いが、ジェイソンとふたりでそれぞれ100発ずつ撃った。
実射! FI G17GEN4 MK1
結論から言うと、撃ち心地たるや、ストックのG17が裸足で逃げ出すほどのものであった。フルロードの重量級弾頭を撃っているにもかかわらず、そのリコイルがマイルドで、フロントサイトがターゲットに素早く戻ってくるのだ。これは軽量になったスライドや、ハイグリップが可能になったフレームのモデファイと掌に吸い付くような全面スティップリング、そして軽くて直接的に感じるトリガープル等が織りなすハーモニーなのだろうが、まるで自分が上手くなったように感じてしまう。
このG17はまだ届いたばかりでテストファイアもしていない状態だったが、ふたりで200発撃って、ジャムはなし、精度テストは時間の関係上できなかったが、ラバーターゲットの弾痕を見る限り、15ヤード(約13.5m)から撃ってスローファイアではほぼワンホール、1秒2発のダブルタップでも拳大にはまとまっていたので、必要充分以上であろう。
G17も手の大きなジェイソンがホールドすると、G19のように見える
リコイルはミニマムだ。ただし、私が撃つとマズルはもっと上を向く。それでもその連射性能は卓越している
実射! FI G34 MK3
こちらの銃は銃身長が6インチとなるので、弾頭の初速は上がり、リコイルはきつくなるという予測を立て、シュアファイアのRYDER Tiサプレッサーを装着して撃ってみた。
フロントヘビーにもかかわらず、そこそこのリコイルはあるが、その音は耳にやや圧迫がある程度でしかない。室内で撃つ9mmフルロードの音など我慢できるものではないので、やはりこのセットアップは最高、という結論に達した。ただしガスの噴き戻しが結構あるのでアイプロテクションは必須だろう。
また弾との相性もあるだろうが、50発の内1〜2発のスライド閉鎖不良があった。どの場合も指でスライドの後ろを押してやれば再発射が可能だったが、このあたりは再チューンが必要であろう。
発射の瞬間。マズルを飛び出したブレットの軌跡がわずかに見える。このあとリコイルが襲ってくる
その後リコイルが来る。ジェイソンの万力ホールドだとリコイルはこの程度だが、一般人が撃つと意外なリコイルがある。顔面に向かう発射ガスが見えるだろうか
実射を終えて
グロックカスタムの撃ちやすさを何より実感した実射だったが、その中でも強く思ったのはドットサイト、レーザー付ウェポンライト、サプレッサーの組み合わせは最強であるということだ。カリフォルニア州でサプレッサーを所持するのは手続きは手間な上に、年間の登録料が桁違いにかかる点で非常に大変だが、その苦労に見合った効果はあることを実感した。
Text & Photos: Hiro Soga
FOWLER INDUSTRIES:https://www.fi guns.com/
この記事は月刊アームズマガジン2018年10月号 P.64~71より抜粋・再編集したものです。