2020/11/19
【実銃】リアルガン対決!「1911 VS Glock」
1911とグロックシリーズ。数あるセミオートピストルからのチョイスとしては、もっともポピュラーな2大巨頭といえよう。だが、どちらが優れているかと言われれば、現場の刑事ですら意見が分かれるほど難しい議題だ。今回はSWATチームオフィサー、ジェイソン・デイヴィス氏にその違いを訊ね、レポートした。
※このレポートは月刊アームズマガジン2018年6月号に掲載されたものを再編集したものです
目次
ベテランポリスオフィサー
Jason Davis(ジェイソン・デイヴィス)
今回の論争に意見を述べてくれたのはLA近郊シティポリスのSWATスナイパー、ファイアアームズインストラクターであるジェイソン・デイヴィス氏だ。20年以上のオフィサー経験を持ち、ウェポン全般における造詣が深い。このたびFBIファイアアームズインストラクターコースを修了して、FBIインストラクターの肩書きも取得した。
そんな彼はデューティガンとしてコルト1911(. 45ACP)、バックアップ/オフデューティガンとしてグロック19を使用している。まさにこの比較にはうってつけの人といえる。早速、彼の愛用のハンドガンを紹介しよう。
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Colt MKⅣ/SERIES70
彼がデューティガン(職務を遂行する際の銃)として使用している1911だ。ジェイソンが18年間使い続けたモデルで、2度のオーバーホールをくぐり抜けている。ホルスターによる擦れで、表面仕上げだけでなく各コーナーが磨り減っているのがお分かりいただけるだろう。
装填されている銃弾は大きなホローポイントが目立つフェデラル 230グレイン JHP 45D。これもデューティアモだが、現在はHST+Pに移行している。
ジェイソンが握ると小さく見えるが、フルサイズの1911だ。「1911はこうしてホールドすると、自然にターゲットがフロントサイトに載ってくる」
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Glock 19
ファウラー インダストリーズ カスタム
ジェイソン愛用の銃であるグロック19。バックアップガン/オフデューティガンとして使用している。彼曰く、サイズ、装弾数、リコイルのバランスが優れているのだそうな。ポリスの中には.40S&W口径を推す人もいるが、その必要は感じないとジェイソンは語る。フレームの整形からフロントセレーションの追加、前後サイト交換、トリガーチューンなど、徹底的に使いやすいようなカスタムが施されている1挺だ。
微妙な削りこみによって、さらなるハイグリップを実現している。ジェイソンのでかい手が何とか収まっているが、1911と比べると少し小さいサイズに見えてしまう
ジェイソンのベストデューティガン
彼は勤務するPD(ポリスデパートメント)の制式銃であるコルト1911によるトレーニングを続けており、バックアップガンとしてここ3年ほどはグロック19を使う機会が増えてきているという。この2挺を使いこなす彼に、どちらが優れているか訊ねてみると、彼は1911を選ぶことを薦めた。
彼はその理由について、詳しく語ってくれた。
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シングルアクショントリガーによる優位性
「これは非常時における初弾のヒット率に如実に現れてきます。実際にシュートアウトが起きた際、やはりオフィサーは動揺しています。ガンを抜き、初弾を確実にヒットさせるというのは、いくらトレーニングを積んでいても至難の技なのです。ここで1911の持つ3.5-4.5ポンドの短くはっきりとしたシングルアクションのトリガープルが、真価を発揮します。グロックのセミダブルアクションともいえる重く長いトリガープルと比べると、初弾のヒット率が格段に高いのです」
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.45ACP口径による威力の優位性
「昨今の弾頭テクノロジーの進化により、9mm口径の威力が格段の進歩を見せています。多くのPDで制式採用されているフェデラル社の9mm 147グレインHSTは、その精度といい威力といい、信頼できる性能を持っていますが、.45ACPもさらなる進化をしています。重量にものをいわせたストッピングパワーは、やはり.45ACPのほうに分があるのです。ポリスワークでは、あらゆる可能性と優位性を積み重ねることによって、より安全に事件を解決する必要があります。私は、この点で1911が優位にあると考えています」
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精度と信頼性のバランスが優れている
「一般的に、グロックの精度は25ヤード(約22.5m)で4-6インチ(約10-15cm)といわれています。これはデューティガンとしては充分な精度といえます。しかし、現行のコルト1911は、箱出し新品の状態でも25ヤードで3インチほどに集弾する性能を持っているのです。それでいてジャム率も低く押さえられてきたので、その信頼性には定評があります。グロックに比べれば汚れなどに弱い部分もありますが、戦場ではなく、我々シティポリスがデューティガンとして使うには何も問題のないレベルだといえるでしょう」
1911の試射。大口径ならではの迫力だ
グロック19の試射。1911と比べると、迫力が控えめだ。それが如実にストッピング力として関わってくる
ジェイソンのベストオフデューティガン
以上の理由から、彼は自分にとってのベストポリスデューティガンは1911だと語った。だが、オフデューティガン(職務外、非番の際の銃)においては話が違ってくるという。その理由も詳しく彼は語ってくれた。
「グロックならば、このフロントサイト周りだけをカバーするホルスターに入れ、直接肌に触れる状態でいても一向に違和感はないし、スティップリングを施したグリップ周りのハンドリングは、ベルト周りやTシャツとの収まりを考えても抜群だったのです。私にとってのODGは、TPOによって使い分ける存在です。カジュアルな服装でTシャツならグロック19を選びます」
ジーパンに入れて運んでいたグロックを速やかに抜くことができる。わずか3秒で構えて発砲できるのだ
威力テスト 1911 VS グロック19
ジェイソンの意見の他にも判断材料を増やすべく、実際に撃って.45ACPと9mmの目に見える威力をテストしてみることにした。パイナップルやコンクリートブロックを撃ち、その実力を確かめる。では、早速その模様をお伝えしよう。
コンクリートブロック実射比較
- 1911(.45/Fed 230グレインJHP)
さすがの45口径。フェデラル230グレインJHPがその重量を生かしたパンチ力を発揮し、1辺を破壊する威力を見せている
一辺目を粉砕するのに、そのほとんどのエネルギーを使っている
- Glock19(9mm/Fed 147グレインHST)
やや慎ましやかなインパクトの瞬間。ぎりぎり1辺を貫通している
口径なりの穴が開いた。2辺目にはコンクリートの破片が付着していた程度だった
パイナップル実射比較
- 1911(.45/Fed 230グレインJHP)
インパクトの瞬間。パイナップルのセンターからチョイ下にヒットしたが、弾頭が変形して下方向にコースを変え、ボトル下部にヒットして、左下方向に抜けてしまった
思ったほどのインパクトではなかった
- Glock19(9mm/Fed 147グレインHST)
パイナップルを破壊したあと、1ガロンボトルをここまで弾き上げた。パワーを使い切っている。2本目は無傷だった
パイナップルはほぼグチャグチャの状態。変形したブレットは、1個目のボトル内にあった
実射を終えて
今回の実射では、それぞれの特徴がよく出ていた。特にパイナップルの実射ではフェデラルHSTの弾頭が着弾とともに綺麗にマッシュルーム化を果たし、果肉をぐちゃぐちゃにする威力を見せた。9mm口径の威力が格段に進歩している、とジェイソンの意見がよく分かる結果であった。
技術が進化し続ける以上、この両者の対決に終止符がつくことはないのかもしれない。
教科書どおりにマッシュルーム化した口径9mmのフェデラルHST 147グレインブレット。この効果がパイナップルを粉々にした。最新のテクノロジーで鉛部分とジャケットが離れない
Text & Photos: Hiro Soga
この記事は月刊アームズマガジン2018年6月号 P.38~43より抜粋・再編集したものです。