2020/12/22
【実銃】ベレッタが生んだストライカーファイアピストル「APX」とは
ベレッタといえば、ベレッタ92シリーズをはじめとした傑作銃を開発した銃器メーカーであることは言うまでもないだろう。今もなお、ベレッタ92の最新バージョンの92X PERFORMANCEなど新進気鋭の銃器を開発し続け、勢いを留まることを知らない。
ベレッタ92X PERFORMANCEについてのレポートはこちら
そんなベレッタが開発した銃器のうち、あのグロックと同じであるポリマーフレーム、ストライカーファイアピストルがあるのはご存知だろうか? 今回はそのピストル「APX」シリーズを改めて紹介しよう。
※このレポートは月刊アームズマガジン2018年10月号に掲載されたものを再編集したものです
目次
ベレッタAPX誕生の背景
ベレッタ92シリーズはアメリカ軍に採用されたことにより、爆発的な人気を得て多くの国の軍隊や法執行機関で採用が相次いだ。しかし、その後、別のキャラクターを持つ実戦用ハンドガン、グロック17に注目を集めた。
軽量なポリマーフレームや17発のマガジン装弾数、さらに独自のメカニズムを取り込んだトリガーシステムでグロック17は人気を博し、1990年代に入るとグロックと同様のポリマーフレームを装備するハンドガンを製品化するメーカーが現れ始めた。
ポリマーフレーム+ストライカーファイアピストルといった時代の流れの中、ベレッタもまたコンシールドキャリー用のピストル、ベレッタNanoを生み出す。実際にはこのNanoがベレッタ初のストライカーファイアのポリマーフレームというわけだ。9mmパラベラムの口径を持つが、あくまでもコンシールドキャリーのコンパクトピストルだったため、要望の多かったフルサイズのポリマーフレーム、そしてストライカーファイアピストルとして、このAPXを開発したのだ。
ベレッタAPXシリーズ
前述したように時代の流れとしてポリマーフレームでストライカーファイアピストルが世界の主流になりつつあった。APXの開発には、ベレッタのラインアップにそれがほしかったことと、パーツ点数が少なくコストを抑えて競争力を高めるという狙いがあった。開発はベレッタUSAで行なわれたが、本国イタリアのガルドネから送られたデザイナー達が指揮を執った。完成後すぐにXM17コンペティションに参加するも敗退。ターゲットはより広く展開することとなった。
ベレッタのポリマーフレーム、ストライカーファイアピストルということで注目された。アメリカ軍に採用されたM9のような大量発注はないものの評価は高いようだ。そこでAPXはバリエーションを増やしたのだ。
- APX Combat
- 口径:9mm×19
- 全長:217mm
- バレル長:125mm
- 重量:945g
- 装弾数:17+1発
マイクロドットサイトがスライドに固定されたモデル。バレルは延長され、サイレンサーに対応したフルサイズだ。ベレッタグループのバリスのドットサイトを取り付けてあるがもちろん他社のマイクロドットサイトも取り付け可能だ。
- APX special order model
カタログには載っていない、マニュアルセーフティ付きの特注品。フランスのようにマニュアルセーフティを好む法執行機関も多く、そういった要望にもベレッタは柔軟に対応できるのだ。
- APX Centurion
Centurionはフルサイズとコンパクトの中間に位置するモデル。バレル長が94mmとスタンダードモデルよりも14mm短い。グリップも短くなりマガジンの装弾数は15発となる。グリップにはフィンガーチャンネルもオミットされている。3.7インチバレルに15発のマガジン。.40SWのモデルと2種がラインアップ。
- APX Compact
APXではもっともコンパクトなモデル。Centurionと同じバレル長だがグリップがより短くなり装弾数は13発。コンパクトとセンチュリオンは9mmだけでなく.40SWも用意されている。グロック26と同様の位置づけだ。スタンダードの17発マガジンも使用可能だ。
ベレッタAPXの特徴
APXの一番の特徴はスライド全面に大きく配されたセレーションだ。この独特なセレーションは他になく、ひと目でAPXだとわかる。シンプルながらベレッタらしい味付けだ。見た目だけでなくスライドを引くときの感触もバツグンで、スライドの前方だろうが後方だろうが、素手だろうがグローブだろうが、確実に操作できるのがすごい。自然に手に馴染むだけでなく、スライドを引くときにうまく力が伝わるようだ。
さらに魅力的な点は、コンパクトモデルでもフルサイズのマガジンを使用することができることだ。メインにはスタンダードを、コンシールドが必要ならコンパクトといった使い分けができる。マガジンを共有できるのもAPXならではのメリットだ。
次のレポートでは、このAPXシリーズの実射レポートをご紹介しよう。これらのレポートを通じ、ベレッタAPXの魅力を知っていただければ幸いだ。
TEXT & Photos: 櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
この記事は月刊アームズマガジン2018年10月号 P.116~123より抜粋・再編集したものです。