2020/11/12
リエナクトメントのススメ vol.9【WEB版:オストフロント1944イベントレポート その5】
月刊アームズマガジンで連載している「リエナクトメントのススメ」。そこでは「リエナクトメント」を歴史的な事象の再現と定義し、テーマを第2次世界大戦としている。現在、世界中で第2次世界大戦をテーマとしたさまざまな「リエナクトメント」が行なわれているが、比較的参加しやすい国内のイベントを中心に紹介するとともに「リエナクトメント」の楽しさを伝えたいと考えている。
WEB版第9回では、前回に引き続き、2018年12月に行なわれたリエナクトメント・イベント「オストフロント1944 ~グナイゼナウラインの攻防」の2日目に実施された戦闘再現の様子を紹介する。
「オストフロント1944」イベントレポート~その5~
赤軍はドイツ軍陣地前面に敷設された障害の処理を実施し、いよいよ突撃を敢行した。この間、ドイツ軍は迫撃砲による攻撃準備破砕射撃を実施。赤軍の第1回攻撃は頓挫し、両軍とも態勢を整えつつ警戒しながらの昼食となった。
写真は砲兵による煙幕とDP-28軽機関銃(デグチャレフ)の支援を受けて、鉄条網に取り付く赤軍である
突撃前には鉄条網の切除が不可欠である。損害を省みずに行なわれた作業の結果、赤軍はついに2箇所で鉄条網を切除し、主要な突破口を得ることに成功した。
後退を援護するために残されたドイツ軍中隊には、味方砲兵による援護はなかったが、中隊には80mm迫撃砲2門を有する迫撃砲班があった。この迫撃砲は最大射程が2,400mあり、防御陣地の後方に展開して中隊長の指揮の下で運用された。赤軍の攻撃準備破砕射撃として「空撃ち」が行なわれ、赤軍側へ発射音による「砲弾落下」の現示を行なう事で、砲撃をシミュレーションした。
赤軍に攻撃命令が下達され、各分隊長が分隊員にさらに詳細な指示を行なった。赤軍歩兵は事前の障害除去で切断された鉄条網突破口へと突入、展開してドイツ軍陣地を強襲するも、周到に用意された機関銃陣地からの射撃と、迫撃砲による突撃破砕射撃の火網につかまり、次々と倒れていった。
防御側であるドイツ軍は、各陣地が敵襲に備えていた。赤軍が鉄条網へ取り付いたことを確認したドイツ軍小隊長は、各分隊に射撃を許可。4挺のMG-42軽機関銃が一斉に射撃を開始した。激しい射撃戦が繰り広げられ、赤軍の第1回攻撃を食い止めることができた。攻撃が頓挫した赤軍は後退、防御に成功したドイツ軍は、次の戦闘に備えて態勢を整えるところで午前中の戦闘は終了した。
第1回攻撃が頓挫した赤軍は一旦後退し、再度攻撃するための準備を行なった。攻撃準備中の赤軍には後方から昼食が運ばれてきた。メニューはライ麦パン、キャベツのスープと紅茶であった。配食は小隊員にまんべんなくわたるよう分量に気が配られる。量の多い・少ないはもちろん、具材(たとえば肉)の量に不公平があれば、部隊の士気にも影響する大きな不満の原因となるからである。
ドイツ軍の昼食は、本来温食が支給されるのであるが、今回のイベントの設定では後退戦のさなかであり補給組織が崩壊しているので、行軍用携行食(半食)を支給した。内容はツヴィーバックという乾パンに似た物が250gと、内容量が200gの肉の缶詰で、これに行軍用飲料を用意した。ツヴィーバックは保存性が重視されており、ともかく固い。昼食は状況中であったため、交代で警戒しながら摂った。
取材協力:関西ヒストリカルイベント運営事務局
TEXT&PHOTO:STEINER