2020/07/24
リエナクトメントのススメ vol.2【WEB版:糧食再現編】
月刊アームズマガジンで連載している「リエナクトメントのススメ」。そこでは「リエナクトメント」を歴史的な事象の再現と定義し、テーマを第2次世界大戦としている。現在、世界中で第2次世界大戦をテーマとしたさまざまな「リエナクトメント」が行なわれているが、比較的参加しやすい国内のイベントを中心に紹介するとともに「リエナクトメント」の楽しさを伝えたいと考えている。WEB版第2回では糧食をテーマに再現したイベントを紹介することにする。
テーマを限定したリエナクトメント「糧食編」
前回は、リエナクトメントにもさまざまな形態があることを紹介した。今回はその中から「テーマを限定したリエナクトメント」について述べることとする。
通常、リエナクトメントイベントと言うと、レギュレーションに則した被服装備を揃えないと参加できないが、「テーマを限定したリエナクトメント」にはもっと気軽に参加できるものもある。その1つが「糧食再現イベント」である。この手のイベントでは、参加者サイドに知識や体力は不要で、提供者サイドにも「糧食」というテーマに集中できるメリットがある。今回は過去に行われた実際のイベントの一部を紹介する。
南ドイツの営内食再現
【朝食】
日本でも地方によって特色のある食べ物がたくさんあるように、ドイツにも地方色のある食べ物がある。ドイツ軍では出身地ごとに部隊が編成され、その地域から食材が補給されていた。また、こうした故郷の味の有無は兵士たちの士気に影響するので、前線でも所属部隊によって糧食メニューは異なっていた。
これは南ドイツ、バイエルンの営内食再現である。朝食がパンにスプレッド、コーヒーというのはドイツ陸軍共通のメニューであるが、小麦にライ麦を混ぜて作られた南ドイツのパンが特色である
【昼食】
ドイツ軍では昼食時に温食が供されていた。メニューはスープとサラダ、肉料理のメインディッシュと塩ゆでジャガイモやマッシュポテトで構成されていた。
メニューはオートミールのスープ、キュウリのピクルス、牛肉のグーラシュとマッシュポテトに南ドイツ(ミュンヘン)のビールである。ドイツ軍で昼ビールが供されていた訳ではないが、このイベントでは好きな飲み物を選択できるようにしていた
【夕食】
ドイツ軍の夕食は、カルテスエッセンと言われる冷食であった。内容は基本的にパンにスプレッド、加工肉やチーズ類などの一品、そして飲み物で構成されていた。
南ドイツのパンにリンゴと玉ねぎ入りラード、ソーセージとキュウリのピクルス、そして代用コーヒーである
【楽しみ方】
この手のイベントの楽しみは、何といっても実食できることであろう。そして、イベントに軍装で参加した場合でも、好きな時に好きなものを食べられるのも魅力だろう。屋外で行なわれるリエナクトメントイベントでは、通常敵方の糧食を食べることは叶わないし、スケジュールの中で喫食しなければならない。
参加者は糧食提供者と直に交流することもできる。言い換えれば、提供者側は事前のリサーチなどの研究成果を伝えることができるのだ
北ドイツの糧食再現
【昼食】
今回は北ドイツの部隊の野戦食を再現したもので、メニューはライ麦パン(黒パン)とマーガリン、ケーニヒスベルク風肉団子と代用コーヒーである。
ケーニヒスベルク風肉団子は、牛ひき肉の団子を甘酸っぱいホワイトソースで煮たもので、オストプロイセン(東プロシャ)の郷土料理である
【夕食】
ドイツ軍の夕食は、カルテスエッセンと言われる冷食であった。内容は基本的にパンにスプレッド、加工肉やチーズ類などの一品、そして飲み物で構成されていた。
画像は南ドイツのパンにリンゴと玉ねぎ入りラード、ソーセージとキュウリのピクルス、そして代用コーヒーである
糧食の食べ比べ
この画像はロシア人女性による赤軍糧食の再現である。メニューは「カーシャ」というソバ粥で、赤軍の糧食では定番メニューの1つであったもの。屋外イベントなどでは敵方の糧食を喫食する機会はないが、この手のイベントではさまざまな再現糧食の食べ比べも可能だ。
コロナ禍の元にある現在では、こういったイベントの開催は難しいが、いずれ再開されることを望むものである。
TEXT&PHOTO:STEINER