2019/12/21
トイガンリアル仕上げ術「P226」
トイガンに模型の塗装術を応用し、使い込まれた実銃の持つリアルさや凄みを表現する……そんなテクニックをご紹介していく本コーナー。
今月は東京マルイのガスブローバックガン、P226レイルをベースガンとして用意。実銃ライター・SHINは自身が所有するP226を資料として各部を考察しながら、プロモデラー・國谷忠伸が塗装を施し、実銃の雰囲気に近づけていく。
■実銃のディテールをチェック
まずは実銃のSIG SAUER P226をよく観察してみよう。写真の銃はおなじみ本誌銃器ライター・SHINが所有するもので、フレームにレールを備えたP226としては比較的初期のモデル。ベースガンとして用意した東京マルイのP226レイルとも仕様が近いため、参考資料としては申し分がない。
このP226はドイツ製フレームを米国に持ち込み、ニューハンプシャーのSIG USAが米国製スライドと組み合わせて完成させた。そのためレーザー刻印で刻まれたフレームのマーキングは初期型独特のものとなっている(現行品はフレームも米国製)。
光の当たり具合によってはハードアナダイズド処理されたフレームと、メロナイト(塩浴軟窒化処理/シアン酸塩と炭酸塩の混合塩による表面効果処理)仕上げされたステンレス製スライドの色の違いがわかる。またスライドはホルスターと接触するエッジ部分が剥がれて金属地が出ているのがわかる。
テイクダウンレバー、トリガーはMIM/メタルインジェクションモールディング(鋳造)、マガジンキャッチとハンマーはスチールからの削り出し、デコッキングレバーとスライドストップはプレスと、それぞれ必要な強度や精度を満たしつつコストダウンするため製法が異なる。そのため表面は同じブルーイング処理ながら微妙に表面の質感、色合いが異なる。
ウェポンライトを装着し、スライドを引いた状態。アルミフレームとステンレス製スライドの仕上げの差、小パーツのポリッシュ&ブルー、ポリマーグリップのシボ質感がいい具合にマッチングしている。
■塗装&ウェザリングでリアルな雰囲気に
ひととおり実銃を観察したところで、今度は東京マルイ製ガスブローバックガン、P226レイルを実銃の雰囲気に近づけていく。今回は各部で異なる質感や色合いを塗装で表現し、さらにウェザリング(汚し塗装)を施して実銃の使用感を演出してみよう。
着手する前のベースガン。ちなみに担当編集遥の私物で、サバゲ等で使っていたためそれなりに使用感がある。
まず塗装するために分解し、塗装するパーツ(フレーム、スライド、バレル、グリップ)を中性洗剤等で洗浄して脱脂しておく。また、サイトはカスタムパーツが装着されているため、マスキングしておいた。塗装しないパーツは無くさないようにまとめて保管しておこう。
フレーム各部に残っているパーティングラインで、実銃には存在しないものは削って処理する。あと、部分的に平滑感が足りないところはヤスリで面出して平らに均しておく。
スライドはエジェクションポート周りにゲート跡とバリが残っていたので、ヤスリで削って処理。
アウターバレルのパーティングラインを処理する。曲面なので削ったところが平面にならないよう力加減に気をつけよう。マズルのバリ取り、チャンバー部分の面出しも行なった。
トリガーや各種レバー類の使用感を演出する。トイガンの場合この手のパーツはだいたい黒染め亜鉛ダイキャストパーツなので、実銃写真を見ながらヤスリでエッジを削って金属地を出すことで表現してみた。
スライドにはガンショップ・インディのパーカーシールを塗装。これが実銃写真のステンレススライド(メロナイト仕上げ)の印象に近かった。
アウターバレルはチャンバー部を擦って金属地を見せたかったので、まず下地として模型用塗料より被膜強度が高いキャロムショットのステンレスシルバーを塗装。実銃のバレルはスライド同様メロナイト仕上げだが、ツヤありなので質感も色合いも異なる。
フレームにはエアブラシでMr.リトルアーモリーカラーのアルマイトブラックを塗装。この塗料は絶妙なメタリック表現で、実銃のハードアナダイズド処理されたアルミ製フレームとイメージが近かったためにチョイスしている。
レーザー刻印の表現だが、実銃フレームでは刻印のエッジ部分が僅かに削られていることで下地が出て、明るめの色でスミ入れしたように見えた。そこで、タミヤエナメルのシルバーでややはみ出すくらいにスミ入れしてから黒で細くスミ入れ再現しようとしたのだが、うまくいかなかった。
そこで一計を案じ、見た目が似たような雰囲気になればと、タミヤエナメルのジャーマングレーとバフを混ぜてスミ入れしたら、それっぽくなった。このように視覚的効果を利用して近づける、というのも手だ。
スライドのマズル付近についたホルスターとの擦り傷を再現する。ここは実銃写真を見ながらMr.カラーのシルバーを筆塗り。
チャンバーの擦れ跡の再現はデザインナイフやヤスリで削って下地の金属色を出す。使用感を演出するいいアクセントになった。
■完成
スライドに塗装したパーカーシールは、下地に金属色を置かなくても単体で金属のような重みを感じさせる質感が得られた。操作系パーツはトイガンも金属製なので、エッジを少し削れば使用感が出る。
パーティングラインを処理し、下地に金属色を塗装してから黒く塗装したアウターバレル。ここは実銃写真にあったような擦れ跡は描き込まなかったが、使ううちに自然に擦れて下地が出るのを期待しよう。
フレームの刻印もスミ入れしたことで、精密な工業製品を思わせるアクセントになっている。こだわる方なら一度刻印を埋めて均し、実銃のレーザー刻印を再現するという方法もあるだろうが、これだけでも充分雰囲気は出ている。
シューターに使い込まれた実銃のP226を思わせる雰囲気に。
【注意】WARNING!!
- トイガンの分解や塗装など、カスタム行為はすべて自己責任の上で行なってください。
- 本コーナーでご紹介する仕上げ術は、ある程度のトイガン分解および模型製作の経験・知識があることを前提としています。
- トイガンの分解を行なうとメーカーやショップの保証は受けられなくなりますのでご注意ください。
実銃写真・解説/SHIN
塗装・解説/國谷忠伸
作例監修・分解組立/毛野ブースカ
この記事は月刊アームズマガジン2020年1月号 P.74~81より抜粋・再編集したものです。