2019/09/09
コンパクトハンドガンとは?…実銃のお話【COMPACT HANDGUN PICKUP】
【特集:コンパクトハンドガン・ピックアップ】
手のひらサイズのハンドガンを侮るなかれ! 米国在住のライターSHINが、実銃におけるコンパクトハンドガンの現在を解説する。
コンパクトハンドガンとは?
ハンドガンには様々なサイズがある。サイズの分類は銃の種類によるが、一般的にフルサイズと呼ばれるのは5インチ程度の銃身長を持つ拳銃を指し、コンパクトは4. 5インチ程度の銃身長。そしてさらに短い3.5インチ程度の銃身長を持つものがサブコンパクトと呼ばれる。さらに小型化されたポケットピストルと呼ばれる分類もある。
今回の特集ではこのサブコンパクトタイプにカテゴリーされるリアルガンとエアガンを、(エアガンではハンドガンのサイズに関する細かな分類法がないため)一般的に通じやすい「コンパクトハンドガン」というタイトル名とした。
PPKはワルサーPPのグリップを短くすることで1931年に完成した往年のマスターピースだ。写真はワルサーのライセンスの元、米国のインターアームズによって生産されたアメリカ製PPK。口径は.380ACPであり、装弾数は6+1発
P365はシグザウエルが開発した最新のサブコンパクトハンドガン。同社P320のデザインを採り入れた新機軸のコンシールドキャリー向けハンドガンだ。9mmパラベラム弾を10+1装弾できる
「フルサイズからの小型化」と「専用設計」の違い
サブコンパクトタイプは手のひらサイズ程度のハンドガンを指し、服の下に隠して携帯する際の隠匿性を高めるために作られている。そのためフルサイズやコンパクトモデルに比べると撃ちやすさという面では劣っている。
グロック26はP365とは異なり、フルサイズのグロック17を短くして完成させたサブコンパクトタイプだ。9mmパラベラム弾を使用、グリップの向上と装弾数アップのため装着したエクステンデットマガジンは、12+1発の装弾数となっている
G26は手のひらサイズでありP365と同じ装弾数だが、フルサイズハンドガンと同じ厚さがあり、全長・全高は同じでも体積が大きく感じ、コンシールドキャリーのしやすさは劣る。だがフルサイズハンドガンとのマガジンの共通性、そして信頼性を受け継いでいる点が魅力だ
一般的にサブコンパクトタイプは、フルサイズハンドガンを切り詰めて小型化したモデルと、専用に開発されたモデルの2種類に分かれる。ミリタリー&ポリス向けに作られるフルサイズハンドガンの多くが9mmパラベラム弾かそれ以上の「フルサイズミリタリーキャリバー」を使用し、これらを切り詰めて作ったサブコンパクトハンドガンもやはり同じ強力なカートリッジを使う。
スミス&ウェッソンM&Pシールド。同社M&Pシリーズ中でもコンシールドキャリー用として小型・薄型に作られたモデルだ。9mmパラベラム弾を7+1発装填
高威力化と小型化は相反するファクターであり、サブコンパクトタイプから9mmパラベラム弾を撃てばリコイルは激しい。その中でもS&Wシールドは優れたデザインでコントロールしやすく、今もっとも人気のあるコンシールドキャリー用サブコンパクトハンドガンの1つに数えられている
それに対して最初からコンパクト化を目指して作られたサブコンパクトハンドガンの多くは.32ACP、.380ACPといった「サブキャリバー」と呼ばれるより威力とサイズが小さな弾薬を使うことで、無理のない小型化を行なっており、装弾数は6~8発程度となっている。
ほぼ同じサイズのP365とPPK。500gの重さしかないP365には12+1発の強力な9mmパラベラム弾が装填できる。対して635gあるPPKはサブキャリバーの.380ACP弾を6+1発しか装填できない。80年以上の技術の差を感じさせる
スミス&ウェッソンM442リボルバーはアルミフレーム仕様の装弾数5発、.38スペシャル弾を装填する軽量なモデルだ。M36チーフスペシャルのバリエーションの1つであり、同社リボルバー中で最も小さなJフレームを使用
法執行機関向けののスピアーLE .38スペシャル+P 135grゴールドドットホローポイント弾を使用。ショートバレルからでも高い威力を生み出し、対人用として優れた弾である
米国では「コンシールドキャリー」が流行中
まとめるとサブコンパクトタイプは、隠匿性を高めるために小型化されており、そのために威力、装弾数と扱いやすさには妥協がある。積極的に交戦するハンドガンではなく、あくまでも非常時に自衛用として使用できる最小限の威力を備えているものであると言っていいだろう。
.38スペシャル+Pは、通常の.38スペシャルよりも威力が高く、対人用として優れた135grのゴールドドットホローポイント弾を860fpsで撃ちだす。威力の面では、法執行機関向けの用の9mmパラベラムホローポイント弾に劣るのだが、シューターが怪我せずにコントロールできる限界の反動を発生させてしまう。この辺が軽量スナブノーズの限界点である
P365のグリップは大人の手だとやっと指2本がかかる程度の長さしかない。少し長い12連発エクステンデットマガジンを付けてやっと小指がかかる程度だ
ここ10年、米国では民間人が護身用に拳銃を隠匿携帯する「コンシールドキャリー」が大流行している。各州も犯罪抑止につながるため積極的にコンシールドキャリーを許可する方向にあり、現在ではほとんどの州で犯罪歴のない大人であれば護身用に拳銃を隠匿して携帯することが許されている。この流れの中で各銃器メーカーはコンシールドキャリーに向くサブコンパクトタイプの開発に力を入れ、魅力的なサブコンパクトハンドガンが多く生まれてきたのである。
TEXT&PHOTO:SHIN
この記事は月刊アームズマガジン2019年10月号 P.66~71より抜粋・再編集したものです。