2019/05/09
【リアルガンレポート】SIG SAUER P320 X-FIVE/SHIN
話題のP320をベースにしたハイエンドコンペティションモデル
2014年に米国のSIG SAUERが発表したP320は、同社のP250をベースとしたポリマーフレーム、ストライカーファイアのトリガーメカを持つセミオートピストルである。P320は2017年に米軍の制式拳銃「M17」として採用され、現在もっとも注目を浴びているピストルの1つである。
モジュラーシステムを持つP320ピストルは様々なバリエーションを持つが、今回紹介するのはその中でも競技用モデルとして多くの改良を加えられたハイエンドモデル「P320 X-FIVE」である。グロックにも同様のモデルとしてG34があり、スミス&ウェッソンのM&P、ワルサーのPPQシリーズにも競技用のハイエンドモデルが用意されている。その中でもP320 X-FIVEはシューターが求めるスペックの多くを箱出しで備えており、非常に高い評価を得ているモデルである。
米軍採用となったP320 M17(写真上)と競技用モデルのP320 X-FIVE(写真下)。ベースモデルは同じだが、目的に合わせて細かなセットアップが施されている
今回紹介しているのはP320 X-FIVEシリーズの中でも5インチ銃身を持つフルサイズのコヨーテタン仕上げモデルである
スライド先端部分にもコッキングセレーションが刻まれている。このフィーチャーはすでに一般的なものとなっている
リアサイトはフルアジャスタブルとなっている。サイトピクチャーはファイバーオプティクスのフロントサイトと合わせ、非常に狙いやすい
P320 X-FIVEは、単なるロングスライドモデルではなく、5インチのブルバレルと軽量スライドの組み合わせによるリコイルの低減、ファイバーオプティクスフロントサイトとアジャスタブルリアサイト、ストレートトリガーといった、これまではアフターマーケットパーツの組み込みが必要なカスタムフィーチャーが最初から組み込まれてくる。さらにフレーム内部に組み込まれたウエイト、金属製のマグウェルがしっかり取り付けられているX-FIVEフレームを標準装備。これらの細かなアップグレードによって、P320 X-FIVEは非常に魅力的なモデルに仕上がっている。
スライドストップはアンビとなっている。またエキストラクターはチャンバー内のローデットインジゲーターとしても機能する
トリガーはストレートとなっており、90度の位置で確実にストライカーをリリースする。リセットは比較的長いが、素早く正確にトリガーをコントロールできるデザインだ
金属製のマグウェルがフレームに確実に固定されている
マガジンは21発装填のエクステンデットがスタンダードとなる
筆者は仕事柄様々な種類の拳銃に触るが、P320 X-FIVEは持った瞬間に良い感触を感じられたモデルである。箱出しでシューターが求める多くのフィーチャーがすでに装備されており、さらに21連マガジンが4本付属する。この状態で$700の販売価格は、グロック34やスミス&ウェッソンM&Pプロなどを凌ぐ内容である。
通常分解された状態
フレームから心臓部であるFCUを取り出すにはテイクダウンレバーを引き抜く
スライド後部のプランジャーを押し、バックプレートをスライドさせると、ストライカーユニット、エキストラクター&エキストラクタープランジャーが取り外せる。フレームから取り出されたFCUとともに、ファイアコントロールは非常にシンプルなデザインとなっている
21発をフルに装填した状態でも確実にフレームに装着できる。大型のマグウェルによって素早い操作が可能だ
コントロールしやすいストレートトリガーと狙いやすいサイト、優れたグリップデザインで実に撃ちやすい。5インチ銃身はバランスも良く、高い精度での素早い連射が行なえる
実射を通して、非常に狙いやすく、撃ちやすく、命中精度が高いモデルであると感じた。P320シリーズは登場以降あまりパッとしない時期が続いていたが、ここ数年で大幅な改良を経てトップレベルのオートピストルへと成長したと言える。今回紹介しているP320X-FIVEは、その中でもトップに位置するモデルである。筆者にとってもこの銃は、競技射撃だけではなくタクティカルシューティングなど幅広いシチュエーションで使用でき、なんら追加のカスタム加工をする必要もなく充分に満足して使えるモデルであると言える。
TEXT&PHOTO:SHIN
この記事は月刊アームズマガジン2019年6月号 P.108~115より抜粋・再編集したものです。