これが全国大会に実戦投入するタナカのSAAモデルガンだ。一部が未仕上げのパーツによって組み上げられてはいるが、ベースの本体は中古で入手した旧型モデルガン。名付けて(仮称だが)「Newファニングハンマーカスタム」。この銃についても詳しくご紹介したい
ファストドロウ全国大会に向けて
今年もいよいよファストドロウの全国大会が近づいてきた。今年の開催地は福岡で、交通・宿泊も手配済。もう楽しみでならない。そして何たってタナカの新製品コルトSAA最新改良型モデルガン「R-model」だ。12月中旬発売予定。大会では私の手元にあるR-modelの試作品を全国のシューターにお披露目する予定だ。そして一足先に、私自身が新製品のファニングハンマーを搭載したモデルガンで出場する。そのために先日、タナカのSAA旧型モデルガンを入手した。
タナカ コルトSAA 2nd. Gen 旧型モデルガン
「速報!タナカ コルトSAAモデルガン 最新改良型」で「私は旧型モデルガンをハンマーがガスガン流用だったので1挺も買わなかった」と書いたが、実は買わなかった理由はそれだけではなかった。旧型モデルガンが新発売された2008年の当時は、今では信じられない人もいるだろうが、魅力的なSAAモデルガンが市場に溢れかえっていたのだ。そのためタナカのSAA旧型モデルガンが埋もれてしまったと言わざるを得ない状況だった。市場を賑わせていたのは主にランパント・クラシック(現在は活動停止)とクラフトアップルワークス(CAW)のSAAモデルガンだ。どちらも独自の方向性でリアルさを徹底追及、圧倒的なこだわりの新製品をリリースしていた。
今も定期的に再生産されるCAWのSAAモデルガンは、2nd.ジェネレーションのSAAモデルガンとしては最新の設計で(2003年発売)、実銃の1個体を完全採寸、完全再現し、スプリングのテンションも実銃とほぼ同じ重さにするなど、リアルさを徹底的に追求。製品バリエーションは基本、材質はヘビーウエイトのみでバレル長は標準の3種のみだが(バントラインやシェリフズは少数生産、ニッケルメッキのシルバーモデルは1度の生産で終了)、箱出しで快調作動、ファストドロウやファニングなどの激しいアクションにも対応した。専用のツーハンドハンマーは未発売だが、ファストドロウ向け仕様のモデルも発売され人気が高い。
一方のランパント・クラシック(第一期活動が1997年頃〜2003年頃、第二期が2010年〜2013年末)は、画期的な樹脂の材質(金属的な作動音がするロックライトや、鉄と同じ比重のハンマーロックライトSなど)や様々な仕上げとバレル長で、次々とすべて“数量限定生産”でリリース。それもSAAの2nd.ジェネレーションの樹脂製モデルガンだけでなく、1st.ジェネレーションの樹脂製モデルガンに金属製モデルガンもと、ものすごい種類のバリエーションを発売したのだ。ランパントは箱出しでは激しいアクションは無理だったが、SAAコレクターに熱烈に支持された。
そしてファストドロウシューターをはじめとするアクション派の間では、ハートフォード製が圧倒的に支持されていた。基本設計は1977年の古いモデルガンだが(初めは東京CMCで発売)、FDC(ファスト・ドロウ・カスタム)やツーハンドハンマーも発売され“遊ぶ”という観点では、いろいろな意味でナンバーワンの製品だった。
こういう状況でタナカは、ペガサス式ガスガン(初期型は1999年末に発売)の「デタッッチャブルシリンダー」をモデルガン化して新発売した。箱出し快調作動で決して悪い製品ではなかったが、ハンマーがガスガン流用で、正直こだわりを感じさせる製品ではなく、商品としての方向性もイマイチよく分からず、セールスポイントが弱い製品だったと言わざるを得ない。そしてタナカ自身も2010年発には1st.ジェネレーションのSAAモデルガンを新発売し(翌2011年にはガスガン化され、ビズリーモデルのガスガンも新発売)、こちらも箱出し快調作動、実際に激しいアクションで撃って遊べる唯一のSAA 1st.ジェネレーションの樹脂製モデルガン&ガスガンであったこともあり、こっちのほうが魅力的だった。こんなSAA飽和状態じゃ、旧型モデルガンの魅力・存在が埋没してしまったのは当然だったのだ。
今回、初めてタナカの旧型モデルガンを3挺ほど入手したが、改めて使ってみると全然悪くないどころか、箱出し快調作動で、かなり良い製品であったことが再実感できた。R-modelは旧型モデルガンを徹底的に改良し、文字どおり“進化”した新製品になっている。商品としての方向性も今回は明確だ。「実際に使って楽しめること」を重視した仕様だ。今も私は設計を担当するタナカの鈴木工場長と改良点や新しいアイデアのやりとりを続けていて「いいものを届けられるよう頑張ります!」とのこと。客観的に見ても、かつてのランパントやCAW以上のこだわりと情熱を感じている。R-model(とペガサス2)のSAAはタナカの技術の集大成であり、フラッグシップモデルとなる存在だ。次世代の“遊べるSAAモデルガン”の決定版であり、SAAで思いっきり遊びたいユーザーが買って間違いない製品であることは、私も保証したい。
WFDA-JAPAN主催のファストドロウ全国大会では3種の競技種目で個人の総合順位が決定する。その1つ目が「スタンディング ブランク」、モデルガンを使った風船1個割りだ(通称シングル)。写真は私だが、私はこの種目には長年ハートフォード(HWS)のツーハンドカスタムで出場している
トルネード吉田の愛銃
ハートフォード製SAAモデルガン
ファストドロウ ツーハンドカスタム
ベースはオールシルバーモデルで、同社製ツーハンドハンマー、ノンスキップド・シリンダーを搭載。フロントサイトレスに幅をトリムしたトリガーガード。サイズが大きめの木製グリップはホビーポート・カタヤマ製。バレルの刻印は「COLT SINGLE ACTION ARMY .45」だ
大会2つ目の種目が「スタンディング ワックス」、ガスガン1発撃ちだ(通称ワックス)。8フィート(約2.4m)先のターゲットへ1発撃つ。合図から一瞬(1秒未満)で撃つので、当てるのは結構ムズカシイ
ツーハンド(ファニングハンマーの銃)で撃つ時は、ガンベルトも競技用に特化したツーハンド用を使う。これは私が長年愛用するSPEED製の最高級カスタムリグで撃ちやすさも最高
トルネード吉田の最愛の1挺
タナカ製SAAペガサス式ガスガン
HAND ENGRAVED FAST DRAW SPECIAL
for All Japan Fast Draw Championship
私が愛と情熱を全力全開で注ぎこんで作った特別な全国大会用SAAガスガン。ベースはペガサスの初期型(六研の限定彫刻モデル)で、彫刻は井浦勝雄先生。HWS製ツーハンドハンマー搭載。普段の練習からコレを使うのはモッタイナイので、練習用にまったく同じカスタム仕様のプレーンなシルバーモデルも用意して使っている。新製品のファニングハンマーを搭載予定
最後の個人種目が「ダブル ブランクス」、モデルガンでの風船2個割りだ( 通称ダブル)。右利きのシューターなら左、右の順で撃つ。私はダブルが苦手で、過去にツーハンドカスタムでも出場したがミスショットが多いため、やり慣れた西部劇スタイル(ノーマルのSAAで初弾を片手撃ちのコック&ドロウ、次弾をファニング)に戻してしまった
トルネード吉田の愛銃
ハートフォード製SAA モデルガン
ファストドロウ チューンナップ
私が企画・監修したハートフォード×アームズマガジンコラボ商品の「COLT FRONTIER SIX SHOOTER .44-40」1st.ジェネレーション レイトモデルのマカロニシルバー。ハイブリッドハンマーへ交換し、2025年12月号で紹介したチューンナップを施した新しい愛銃。今年の全国大会のダブルは、これで出場すると決めていたが…
スラップコッキング
ツーハンドの撃ち方にはいろいろあるが、最も速く撃てるのが、この写真の「スラップコッキング」(Slap-Cocking)だ。銃を握ると同時にホルスターから抜くより先に、左手の中指でひっぱたいて(スラップして)ハンマーを起こす。抜く際に銃を前に出さず、後ろに引く(グリップをホルスター後方の下へ押し込む)ようにしてホルスターの真上から撃つのが、より速いタイムを出すためのポイントだ。なお、スパーが垂直のカスタムハンマーを「ツーハンドハンマー」、それを搭載する銃を「ツーハンドカスタム」、それを使った両手撃ちを「ツーハンドシュート」などと呼んでいるが、「ツーハンド」という言葉は完全な和製英語(笑)。本場アメリカでは通用しないが、皆さんが使い慣れた言葉なので今回は引き続き使用する
ハートフォードで好評発売中の新ハイブリッドハンマー。左がツーハンド用で、右がサミング用だ(各¥6,600)。新ハイブリッドハンマーはWFDAJAPANが公認・推奨する商品だ
ツーハンド用のハイブリッドハンマーを取り付けた状態。このハンマースパーの形状はWFDAのルールに適合しているが、私はこの形状との相性が悪く、全力でスラップコックすると左側の突起で左手の中指をザックリ切ってしまうのだ(2回もやってしまった)
そこでスパーの左側をすべて削り落とした(その上で再メッキ)。これで安心して全力で撃てるようになったが、スパーが小さいので、ダブルを初弾スラップコック、次弾ファニングで撃つと2発目で空振りしてしまうことが多い(空振りしないように左手を大きくかけるとファイアリングピンが手に刺さるという恐怖)。これがダブルだけ西部劇スタイルに戻した理由だ
HWSが以前、製造・販売していたタナカSAAペガサスガスガン用のツーハンド用ハイブリッドハンマー。もう品切れで購入できないし、この後、新製品でタナカからファニングハンマーが発売されるのでズバリ書かせてもらうが、このハンマーの取り付けには工夫や加工が必要で、初心者や銃のカスタムが苦手な人には扱える物ではなかった
このハンマーの最大の問題は、左右の厚みが足らないことだ(約1mmも薄い)。そのためハンマーとフレームの間に大きな隙間があるのが写真でお分かりになるだろうか
そこで私が考え出した対策が0.5mm厚のプラ板を、コンパスカッターとドリル、ヤスリを使って直径17mm弱のワッシャー(シム板)を2枚自作し、それをハンマーの両側に取り付ける方法だ。それとダミーのファイアリングピンは使っているとピンが緩んで抜けてきて、フレームに大きな傷をつけてしまうので、その機能をオミットした。確かハンドの長さも調整したはず。これでやっと使えるものになった
ここからがタナカの新製品の話だ。写真は最新改良型SAAモデルガンと同時に発売予定のオプションパーツのファニングハンマーだ(写真はモデルガン版で、ガスガン版もあり。各6,600円)。ノーマルのハンマーと入れ替えるだけで快調作動。スパーの形状は左右に飛び出した形で、高さ・幅ともWFDAルールに適合。スパーは可能なかぎり大きくしてあり「シューター個人で好みの形状にヤスリで削って使ってください」というコンセプトだ。商品名称は「ファニングハンマー」。これもWFDA-JAPANの公認・推奨の商品だ
タナカ製SAA ペガサス2 ガスガン
ファストドロウスペシャルNewファニングハンマーカスタム
お試し体験版
私はSAAペガサス2ガスガンに続き、今回の新型モデルガンの開発にもアドバイザー、フィールドテスターとして協力している。この銃はファニングハンマーのテストのために組み上げた1挺で、ベースは私が初回ロットで購入したペガサス2ガスガンのABSモデルだ。友人のトップシューター達にも存分にテストしてもらえるように、バレルのフロントサイトは完全に削り落とし、トリガーガードの幅もトリミング。これら以外はノーマルのまま。WFDA-JAPAN関東支部が主催する荻窪の東京キャロルでの練習会では、この貸し出し用の銃を使って全国大会3連覇のT.K.ヒーロー江田さんが0.295秒の超速タイムをいきなり叩き出したが、先日は全国大会2連覇のカードボード佐藤さんが、それを上回る0.286秒をマークした。もう言うことなし。みなさん、買ってね!
タナカ コルトSAA セカンドジェネレーション
旧型モデルガン(2008年発売)
中古で入手したものだが、ほぼ未使用の新品デッドストックに近いコンディションの個体。当時のペガサス式ガスガンの「デタッチャブルシリンダー」(2005年発売)をモデルガン化したもので、ハンマーはガスガンの物をそのまま流用している。改めて手にしてみると、箱出し快調作動の素晴らしい製品だった
ファニングハンマーのガスガン版。貸し出し用はそのままだが、「シューター個人で好みの形状にヤスリで削って使ってください」というコンセプトなので、私個人のテスト用の銃では、好みの形へ修正してみることにした
まずは練習用のガスガンでスパーを削ってみた。指の抜けがスムーズになるよう左側の前面の下を写真のように面取りした。あわせて右側の前面の下の角も軽く落としている。その結果、メチャクチャ使いやすい銃になった
好みの形に削ったガスガン用ファニングハンマーがあまりにも使いやすかったので、もうガマンできなくなって中古の旧型モデルガンを入手し、モデルガン版も作ってしまった次第だ。これがその形状修正したモデルガン用ハンマー
旧型モデルガンも全体的には調子がよく、とても良好な製品だと実感できたが、あわせて最新改良型R-modelで鈴木工場長が見直している弱点も実際に手にすることでわかってきた。そのひとつが、エジェクターチューブが外れやすいことだ。ご覧のとおりバレル側のナットが簡単に抜けてしまうのだ。瞬間接着剤でナットを固定しても再発。そこでHWSのSAAのナットとスクリューを移植して修理(ナットは熱して圧入)
フロントサイトは写真のとおり完全に削り落とし、耐水ペーパーで削った跡をきれいに消した
ファニングハンマーの銃をスラップコックでホルスターの真上で撃つ場合は、このような握り方(ハイグリップ)となる。人差し指の向きに注目してほしい
ハイグリップすると、そのままのトリガーガードではトリガーが引けなくなるので、写真のように幅(右側半分)を削って細くする。ただしトリガーがトリガーガードの幅からはみ出してはいけないルールがある
トルネード吉田の新しい愛銃
タナカ製SAA 旧型モデルガン
ファストドロウスペシャル Newファニングハンマーカスタム暫定版
旧型モデルガンはバレル根元の強度が弱いのも弱点のひとつ(R-modelでは強化済)。ファストドロウではバレルをホルスター内側に強くこすりつけながら抜くことになるので、バレル根元に強度がないとバレルが折れてしまう。そこで2025年12月号の当連載の「ハートフォードSAAチューンナップ!」で紹介したバレルの根元補強も施した。シリンダーはノーマルのままだが、ノッチはスキップしていない。いったんこれで完成だ。早速、8月の関東支部練習会で試してみたところ、何とダブルがバシバシと撃てるようになった!! 大きくなったハンマースパーによって2発目のファニングでの空振りがなくなったのだ。ハッキリ言って、緊張感MAXの全国大会では使い慣れた銃で出場するほうがいい成績を出せる傾向があるのだが、この銃を使い込めばダブルのタイムは今よりも速くなる確信がある。決めた!今年はこの銃でいく!! そして9月の試合形式の練習会では、元チャンプ達の欠席や不調もあって何と1位(笑)! 実に幸先のよいスタートだ。ファストドロウがますます楽しみになってきたー!!
新製品
タナカ コルト シングルアクションアーミー
2nd.ジェネレーション
ヘビーウエイト“R-model”モデルガン
価格■4-3/4インチ¥41,580、5-1/2インチ¥42,680、7-1/2インチ¥43,780(3挺とも2026年11月中旬発売予定)
*写真は試作品でバレルの刻印がない等、製品版とは異なります。あわせてオプションパーツのタフネスシリンダーが取り付けられています
最新改良型「R-model」はSAAを初めて買う人にもベテランヘビーユーザーにも、SAAモデルガンを思いっきり撃って楽しみたい人に絶対オススメの“遊べるSAAモデルガン”の決定版。もちろん外観もリアル。発売が本当に楽しみ過ぎる!!
タフネスシリンダー(¥9,900)の試作の最新版。超々ジュラルミン製のチップはシリンダーの表面とツライチになり、長く使うことによる摩耗でもトラブルが出ないようにノッチ穴の形状も見直し中。量産版はさらに改良されると思われる
今回のモデルガンからトリガーとハンマーに付いているプレス部品のプレートの表面処理が黒染めからSQP処理に変更となる。SQP処理は防錆のためにオートマチックピストルのモデルガンのマガジン等で使われている処理で、表面硬度が上がり耐久性も向上する
*写真は従来の黒染めです
この記事は月刊アームズマガジン2026年11月号に掲載されたものです。
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