ミリタリー

2026/08/30

アメリカ合衆国建国及び米海軍創設から250年の節目となりさまざまなイベントが開催された「米海軍創設250周年記念国際観艦式 Navy and Nation250」

 

アメリカ合衆国建国及び米海軍創設250周年を祝して帆船パレードがスタート。その上空を英空軍のレッドアローズが飛びぬけた。最初は紅白の煙の尾を引いていたが、途中で4機が青へと変え、見事な星条旗を描いた

 

 1776年7月4日、イギリスから13の植民地が独立し、アメリカ合衆国が建国された。この建国を前にした、1975年10月14日、大陸海軍の設立を決め、軍艦を発注。こうして1776年までに海軍としての形が作られていく。そこで、2026年の今年は、アメリカ合衆国建国及び米海軍創設から250年の節目となることから、「Navy and Nation250」として、さまざまなイベントが開催された。メインとなったのが、7月4日にニューヨークで行われた国際観艦式IFR250であった—

 

観閲艦に向けて礼砲を発射したアーレイバーク級DDG-99「ファラガット」(手前)とデンマーク海軍 イーヴァル・ヒュイトフェルト級フリゲートF-361「イーヴァル・ヒュイトフェルト」

 

会場の一つとなったマンハッタンの南側にあるバッテリーパーク上空をMH-60が星条旗を吊り下げて飛行した

 


 

 2026年7月4日、ニューヨークにおいて、アメリカ合衆国建国及び米海軍創設250周年を記念した国際観艦式IFRが開催された。厳密にいうと、米海軍が創設されたのは1794年3月27日の海軍法設立の日となる。しかし、前身となる大陸海軍が、活動を開始したのが1776年のこと。この年は、イギリスから13の植民地が独立し、アメリカ合衆国が建国された記念すべき年でもある。
 そこで、今年は、アメリカ合衆国建国及び米海軍創設から250年の節目となることから、「Navy and Nation250」と銘打ったスペシャルイヤーとし、国内では国、州政府、または自治体によるさまざまなイベントが行われた。米海軍基地でも、大小さまざまなイベントが行われ、それは日本にある横須賀や佐世保のような海外基地においても例外なく挙行された。メインとなったのが、ニューヨークで行われた国際観艦式だったわけである。

 

米海軍原子力空母CVN-68「ニミッツ」。1975年5月3日に就役し、実は本年退役予定であったが、その計画は見直された

 

観閲艦を務めたワスプ級強襲揚陸艦LHD-3「キアサージ」。1993年10月に就役した3番艦だ

 

スペイン海軍の強襲揚陸艦「ファンカルロス1世」。同型艦はない。固定翼戦闘機としてEAV-8Bハリアーを搭載している。同機は、航空観閲式にも参加した

 

モロッコ海軍のフリゲート701「ムハンマド6世」。同型艦はない。仏伊共同開発のFREMM型フリゲートの1隻で、2014年に就役した

 

 実は米海軍はあれほどの巨大組織であり、政治的にも影響力はかなり大きい存在ではあるのだが、他国のように頻繁に観艦式を実施していない。これまでの実施状況を見てみると、1976年に建国200周年記念、1986年に自由の女神落成100周年、2000年にミレニアム記念と過去3回、いずれもニューヨークで観艦式実施してきた。よって今回が4回目となる。
 記念すべき日に、世界50か国から50隻以上の艦艇が参加した。ヨーロッパやアジアなど多くの海軍艦艇が大集合し、日本からは遠洋練習航海の途上であった「かしま」「やまぎり」の2隻が参加した。
 観艦式と言っても、海上自衛隊が行なっているような移動式観艦式ではなく、かといって諸外国で実施例が多い停泊式観艦式でもない。いわば海上パレード式とでも言おうか。それも主役は帆船となる。

 

はるばるやって来たセネガル海軍ワロ級沿岸哨戒艦P-22「ニアニ」。ハドソン川の1番内陸側に写真のように停泊した

 

ドイツ海軍のザクセン級フリゲートF219「ザクセン」。マスト上にあるAPAR多機能レーダーが特徴のマルチ戦闘艦だ

 

ブラジル海軍のニテロイ級フリゲートF44「インディペンデンシア」。1979年に就役したかなりのベテラン艦だ

 

チリ海軍の練習帆船BE-43「エスメラルダ」。帆船パレードの中でもかなり目立っていた

 

 会場となったのはハドソン川だ。湾口に近い場所に、観閲艦を務めるワスプ級強襲揚陸艦LHD-3「キアサージ」が錨泊。そして各国海軍艦艇は、湾口から川上方向へ向かって並び錨を下ろしていく。ニューヨークの象徴である自由の女神像のあるリバティ島、そしてマンハッタンなどの目の前に一定間隔で錨泊し、これら艦艇は、その場を動かない。その代わりに観閲艦や各国海軍の真横を通り抜けていくのが帆船だ。この帆船パレードは「SAIL 4TH 250」という観艦式の中での一つのセレモニーであるが、1番の見せ場でもあった。
 これと同時進行的に、ハドソン川上空では、航空観閲式が行われた。コースは同じように湾口から、ハドソン川に沿って編隊飛行していくというもの。米陸海空軍の航空機の他、他国空軍からの戦闘機なども参加した。
 その編隊飛行の中には、米海軍の「ブルーエンジェルス」、英空軍の「レッドアローズ」、仏空軍の「パトルイユ・ド・フランス」、加空軍の「スノーバーズ」、UAE空軍の「フルサン・アル・エマラート」と言ったアクロバット飛行チームも含まれており、観艦式に花を添えた。中でも「レッドアローズ」は、ハドソン川上空に星条旗を描き、市民から大歓声を浴びた。

 

米海軍のアクロバットチーム「ブルーエンジェルス」。F/A-18E/Fスーパーホーネットを使用している

 

映画「トップガン」でおなじみのVFA-213をはじめとした各部隊のF/A-18E/FスーパーホーネットやVFA-115のF-35Cが顔をそろえた米海軍航空部隊チーム

 

仏空軍パトルイユ・ド・フランスも派手なカラースモークを引いて飛行。アルファジェットを使用している

 

 参加艦艇の中で、特筆すべきものも多かった。まずは観閲艦の目の前に錨泊していたCVN-68「ニミッツ」。世界で初めて量産された原子力空母ニミッツ級として、同型艦は計10隻も建造された。米海軍の力の象徴として、幾多の戦争や紛争のそばにあった。今回は、その艦上に、UAVのMQ-25「スティングレイ」が搭載されており、VIPへのお披露目を実施したようだ。世界初の艦上無人空中給油機として運用する計画であり、今年から配備が開始された。
 地味ながらも遠くセネガルからやって来たワロ級沿岸哨戒艦P-22「ニアニ」にも注目したい。全長62.2m、全幅9.5mと小型の船体であるが、4,500海里を航行できる能力を持ち、海上にて、最大45日間の活動が可能。今回のニューヨークへの遠征は、そうした外洋展開能力を高める訓練としても行われたのだろう。なお、この「ニアニ」、2024年にダカール沖にて、「かしま」「しまかぜ」と親善訓練を実施した過去がある。よって、2年ぶりに「かしま」と再会したことになる。

 

 こうして、250年という節目を迎えた米海軍は、歴史に残る大きなイベントを終えた。すべて順風満帆と行きたいところではあるが、今の米海軍は多くの問題を抱えている。まず、地球の反対側のイランでは、米海軍艦艇がペルシャ湾に展開し、軍事作戦を繰り広げている真っ最中。さらにインド太平洋では、中国海軍と牽制し合う。ここには日本も加わっており、決して対岸の火事ではない。
 もしアメリカが5回目となる観艦式をニューヨークで実施するのであれば、それは2076年に迎える300周年記念日となるのだろうか。その時、世界情勢はどうなっているのか興味は尽きない。

 

NOAA(アメリカ大洋大気庁)のWP-3D。同庁では2機を運用しており、ハリケーンハンターとして海洋の状況把握、気象変動の傾向把握などを調査している

 

米空軍の戦略爆撃機B-2。同じく爆撃機ファミリーであるB-1やB-52とともに参加した

 

加空軍スノーバーズ。1971年からCT-114チューターを使用しているが、今シーズンが最後となる。後継機はCT-157シスキンII

 

UAE空軍のアル・フルサンことフルサン・アル・エマラートも参加。2025年よりアエルマッキMB-339から中国製のL-15Bへと使用機を変更

 

 

Text & Photos:菊池雅之

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年10月号に掲載されたものです。

 

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