2019/07/08
トイガン上級者向け加工術を紹介!「ハイキャパV12カスタム」
マシンを駆使して理想のカスタムを作る!
パーツを組むカスタムなら初心者から中級者でも比較的簡単に行なえる。しかしそれでは誰かと同じカスタムになってしまう。自分だけのオリジナルや理想のカスタムをしたければ、自分で作るしかない! 誰も教えてくれない機械加工の方法を紹介しよう。
まもなく発売されるであろう東京マルイのV10ウルトラコンパクトの魅力はなんといってもマグナポート部だろう。トイガンとしての性能には何の効果もないが、あのメカニカルな外観には心が惹かれるからか期待値も高い。そこで今回はV10の発売前に兄弟機種のフルサイズモデルV12を製作しマグナポートフィーバーを盛り上げよう。
ベースガンは東京マルイハイキャパ5.1のフレームにMEUのスライドを付けた寄せ集めのハイキャパを使用。サードパーティーのパーツはアルミのアウターバレルだけだ
使用するツール&マテリアル
加工の中心になるフライス盤は平面加工に適した工作機器
フライス盤に取り付けるバイス(万力)の中でも傾斜角が変えられるサインバイスも使用
ノギスと高さを計測する「ハイトゲージ」と呼ばれる計測機器は寸法を確認するのに必須の道具だ
スライドのレール部に入れる冶具を用いて作業時の強度を持たせる。写真の冶具はアルミ材からの削り出して独自に作製したものだ
模型店やホームセンターでも売られている「プラリペア」はメーカーは問わないが黒色のものが望ましい
バーチウッドケーシーのガンブルー液は種類が豊富で使いやすいのが特徴だ。トイガンのパーツにもっとも使われている亜鉛合金を染めるには“アルミニウムブラック”が適している
スティップリング作業に欠かせないハンダゴテは数本用意しておくのが望ましい。コテ先の形状とワット数が重要で、大きく溶かすには250Wを使用し、80Wの低温とステッピングツールを組み合わせは浅くて細かいステッピングを刻む際に用いる
1.ポートを加工する
ハイトゲージを使ってポートを開ける範囲に左右均等の目印の線をケガく。スライドには、加工箇所に目印や余計な傷が入るのを防ぐためにマスキングテープを貼っている
バイスに固定し30°の傾斜を付けて固定。この時にスライド冶具があることでシッカリとバイトに固定され、スライドのよじれや変形を防止する
ケガいた線に沿って穴を開ける。ゆっくりと穴を繋げるように横移動させながら開けていく。樹脂のような脆い素材は負荷を掛けると変形や割れの危険があるので作業はゆっくりと少しずつ行なう
加工が上手くいけば左右均等にポートが開くはずだ。加工部分のツール痕もリアルに再現できた
アウターバレルの穴の位置はいったん仮組みをして銃ごとバイスに固定して決める。最初は貫通させるドリルより小さい径のドリルを使って痕が付く程度でよい
位置出しが決まればアウターバレルを外し穴あけ加工に移る
左右に6つずつ、12の穴をあけて完成
2.セレーションを埋める
今回のセレーションの溝を埋めるのにプラリペアを使用する。標準的な使い方はニードル法なのだが、広範囲を埋める場合は「ふりかけ法」が有効だ
プラリペアが付着しては困る場所にはマスキングをして作業する。まずは薄くパウダーを広げてから混合リキッド液を垂らす。液が少ないと空気が入ってしまうためパウダーがドロドロになる程度が目安だ。プラリペアがスライドより盛り上がるまで同じ作業を繰り返す
完全硬化したらフライス盤で削り取る。ここである程度の平面を出しておくとこの後の仕上げが簡単になり、角のエッジが立つ
紙やすりでの仕上げにはアルミブロックを使って並行にヤスリを掛ける
巣が入らずにプラリペアがつけばほとんど同化してしまうのがプラリペアを使う利点だ
3.スライドに装飾加工を施す
スライド上部のエッジにボーダーラインを切る。スライドが反っている場合があるので高さのバランスを取るように注意。この時は左右の高さより前後のバランスに気をつける
ここでは「エンドミル」と呼ばれる特殊な刃物を、アリ溝を切れるように加工したものを使用する
4.インナーバレルを切る
インナーバレルの先端を押し切りでカットする
自作の刃物を使って旋盤でインナーバレルのマズル部分にテーパーを切る
ほんの数ミリ飛び出していたインナーバレルをカットしただけだが視覚効果は絶大だ
5.セーフティーを削る
セーフティーの材質は亜鉛合金で金属の中では柔らかく、切削カスが刃物にこびり付くのでフライスの回転数を高速にするのがコツ
バーチウッドケーシーのガンブルー液を綿棒に適量付けて切削箇所を補修する。すぐに化学変化を起こして黒く染まる
5.フレーム側の加工
フレームを万力に固定してヤスリを使ってチェッカーをすべて削り取る
サイドのスティップリングは素早く叩くように入れる。そうすれば浅くてキメ細やかに仕上がる
正面のスティップリングはゆっくりと溶かしながら切るように入れると手への食いつきが非常によくなる。完成したら握ってみてエッジが立ちすぎているようならヤスリで調整する
6.完成!
名前の由来にもなっているマグナポートはスライドの開口部とバレルホールのコントラストがマッチしているのが魅力だ
グリップは前面と側面で異なるスティップリングを施工した
プラリペアはパテと違って時間が経ってもヒケが発生せず、ABSよりはるかに強度があるのでラフに扱っても問題がない。1000番のペーパーを掛けてからサーフェイサーと仕上げのスプレーを吹いた
カスタムガンを突き詰めていくと、どうしても技術の壁にぶつかってしまう。手作業での限界や道具不足などがソレだ。今回のようなプロツールはすべての人が使えるわけではないが、DIYショップにある卓上工作機器があるだけでも今までより確実にレベルアップできるはずだ。また加工には専用の工具も必要だが、一度手に入れればその楽しさと創造性の広がりに満足するはずだ。
TEXT:IRON SIGHT
この記事は月刊アームズマガジン2019年8月号 P.54~57より抜粋・再編集したものです。