その他

2026/02/09

ものづくりのまち、三条にある「三条鍛冶道場」【ナイフダイジェスト・アームズマガジン版】

 

 人類最古の道具とも言われる刃物。その中でも、実用性と収集性が並び立つアイテムである「ナイフ」にフォーカスして、最新情報をお届けしよう

 

TOPIC

 

ものづくりのまち、三条にある「三条鍛冶道場」

 

 新潟県三条市は、江戸時代の和釘づくりにはじまる鍛造刃物や利器工具類、アウトドア用品などの産地として全国有数の金物産業都市。「金物のまち」「ものづくりのまち」として知られる三条には、見どころも数多くある。
 今回から2回に分けて、特に気になるスポットと人をご紹介したい。

 

 

越後三条の鍛冶文化を伝えていくための“道場”

 

 「三条鍛冶道場」は、三条市の鍛冶たちが積み重ねてきた技術と文化を次世代に健全に継承するべく設けられた研修施設だ。2005(平成17)年の開設以来、後継者の育成、技術の伝承、さらにはものづくりの体験研修や小中学校の総合学習の場として活用されてきている。
 以前からその存在は知っており、筆者も媒体で紹介させていただいたこともあるが、近年、より気軽に鍛冶仕事を体験できるなどの刷新が行われていると聞いて、興味を持って訪れてみた。
 館内に入ると、伝統的工芸品に認定されている三条の鍛造刃物の歴史や、代表的な製品見本などが展示されている。さらに奥の工房では「ものづくり体験」として「和釘づくり」「ペーパーナイフづくり」「包丁研ぎ」が随時行えるとある。

 

JR北三条駅からすぐのところにある。向かって右側が工房


 早速、「ペーパーナイフづくり」をやってみることにした。
 素材は三条の鍛冶文化の源泉とも言える「釘」。これを火床(ほど)で赤めて刃と柄を火造り、焼きを入れる。さらにベルトサンダーやバフレースを駆使して全体を整える。
 不器用なので少々不安だったが、講師の藤島毅さんが丁寧に詳細を教えてくれつつ、素人にはちょっと難しいところはサポートしてくれたから、それらしいものがつくれた。鍛冶仕事の醍醐味と言える、赤めて叩く、赤めてひねるといった作業を体験した上で、実際に使える刃物を作れるのだから満足度は高い。老若男女問わず、年間通して体験希望者がやってきて、満足して帰っていくという話にもうなずける。
 ペーパーナイフを受け取ってから、事務局長の池野泰文さんにお話を伺った。
「運営体制が変わったこともあり、より皆様に三条の「鍛冶」の文化を身近に感じていただくための刷新を行なっているところです。同時に、今後を担っていく次世代の育成にも力を入れていこうと考えています」

 

 その言葉通り、鍛冶の技術は誰もが興味を持って体験を楽しめる「間口の広さ」がある一方で、技術をきちんと身につけようとすると、ー朝ータにはいかない「深さ」がある。その深みへと向かうように魅力を伝えたい。そんな運営責任者の考えもあり、包丁料理人「おいり」さんも、在所していることが多い。おいりさんは、登録者11万人越えを誇るユーチューバー。「包丁を愛しています」という言葉通り、大根かつら剥きの世界記録を保持し、日本の包丁の魅力をさまざまな媒体で紹介してきたが、昨年から三条を拠点に活動している。


 「以前から越後三条の製品はどれもクオリティがとても高いと思っていたんです。その魅力を自分なりに伝えたいと考えていた時に、「庖丁』メーカーのタダフサの社長からお誘いいただいて、こちらで活動することになりました」
 早速、海外の展示会で流す映像の制作など、精力的な活動をしているというおいりさん。


 池野さんをはじめとするベテランたちの知見と若手のアイデアが組み合わせることで、ますます楽しい企画が繰り広げられていく。そんな「三条鍛冶道場」に機会があればぜひ足を運んでみてもらいたい。

 

完成したペーパーナイフはもちろん持ち帰ることができる

 

ペーパーナイフづくりは、約30分。釘を素材にして赤めて叩くところから、仕上げのグラインドまでひと通りを体験できる。丁寧に指導をしてもらえるので、安心して火やハンマーも扱える

 

体験教室は、和釘づくりは大人1人あたり500円(中学生以下1人あたり250円)、ペーパーナイ
フづくりは大人1人あたり1,000円(中学生以下1人あたり500円)、包丁研ぎは大人1人あたり300円、中学生以下1人あたり150円 *価格は近日中に改定予定

 

講師を務めてくれた藤島毅さん

 

事務局長の池野泰文さん(右)とおいりさん。 おいりさんのYouTubeチャンネルは必見。
●「包丁料理人おいり oiri_kitchen」https://www.youtube.com/@oiri_kitchen

 

館内には三条の鍛冶文化の歴史や、代表的な製品が展示されている

 

三条鍛冶道場 
新潟県三条市元町11-53
TEL 0256-34-8080
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日、臨時休館日 12/29~1/3)
アクセス:JR北三条駅から徒歩3分、JR上越新幹線燕三条駅から車で10分、北陸自動車道三条・燕ICから車で10分
https://kajidojo.com/

 

 

SPECIAL CONTENTS

 

気鋭作家×HOBBY JAPANコラボレーションナイフ企画

 

 作家紹介その1  石崎祐也 ISZナイフ

 

 前号お休みをいただいた「気鋭作家×HOBBY JAPANコラボレーションナイフ企画」、今号から各作家にクローズアップした記事を掲載していきたい。

 近日発表予定の商品予約受付開始までの間、ナイフと作家へのご理解を深めていただければればと思う。

 

兵庫県にある工房で制作に没頭する。GUERRILLAなど新シリーズも展開する

 

「自分が本当に持ちたくなるナイフをつくってみたくなったんです」

 

 「あのナイフが全ての基礎になっています。私の感覚では、自分のナイフはいずれもあのモデルのアレンジ、という認識なんです」


 石崎祐也さんがそう振り返る『あのナイフJとは、2022年の第37回JKGナイフコンテストに出品した「ISZ 412V-T」。そっけない見た目である。だが、「あらゆる環境で使用できる高性能ナイフ」と本人がアピールするように、汎用性の高いブレードデザインや、複数の素材を組み合わせたハンドルは、実用を追求するというテーマに対して一定以上の成功を収めていることが感じとれた。
 受賞こそならなかったものの、審査員の間で「期待のつくり手が出現した」ことは話題になった。


 「あえて言葉にすると『究極の実用ナイフ」をつくりたいという思いでした。お披露目のつもりで応募させていただき多くの方の目に触れることで、私なりに手応えも得ることができました。もちろん、用途やオーダーに合わせてデザインや仕様、使う素材も変えています。ですが、現在に至るまで、私のナイフづくりの基礎は変わっていません」
 そう語る石崎さんは、ナイフを作り出してまだ5年ほどの新鋭である。それまでは、大手メディアの営業、ジョージアでの自動車関連の技術者といった職を経て、ナイフ販売業を行っていた。仕事自体は順調だった。だが、心のどこかに「引っ掛かるもの」があった。


 「自分が本当に持ちたくなるナイフをつくってみたくなったんです。ナイフには仕事として向かい合っていたのですが、見たり調べていくうちにだんだん興味が湧いてきて。『あ、オレ、ナイフ好きやわ』って気づいたんです(笑)」
 学生の頃、自衛隊やフランス外人部隊を目指していたという石崎さんだけに、軍用ナイフを重点的に調べていった。その結果、たどり薦いたのが「コンシールドタング」をベースとした丈夫なナイフだった。ブレードタングをハンドル材の中に隠す構造のコンシールドタングは、さまざまな環境下でも安定したグリップやハンドリングができるという特徴がある一方で、タング部分がどうしても細くなるので、ハンドル材にそれを隠さないフルタングと比べて、ブレードの強度にはやや不安が残る。それを解消するためのデザイン、さらにはブレード材選びなどに力を入れていった。

 

2022年の第37回JKGナイフコンテストに出品した「ISZ 412V-T」(写真提供:JKG事務局)

 

最初期のナイフデザイン。この頃から基本のコンセプトはブレることがない


 「何度も何度もデザインのラフ画を描きました。気になったところを修正して、これならいいだろう、となるまで時間をかけて。今も同じプロセスでラフ画には時間をかけています」
 メイキング方法は、動画などを見ながらの独学。それでも約1年でコンテスト応募作をつくるまでになった。

 

 「コンテストの後から、少しずつオーダーを頂戴するようになりました」
 言葉少なに語るが、その後の石崎さんの快進撃はナイフ業界では話題となった。メイキングのための機械類を揃えた。兵庫県にエ房も構え、仕事も「ナイフ作家」をメインとした。だが「ISZナイフ」の人気は凄まじく、現在もバックオーダーが増える一方だ。


 「ご依頼に合わせて、シルエットや装飾のアレンジを加えてきました。ですが実用を追求した頑丈なナイフというテーマは変わることなく、続けてきています」

 

 

212CK-T
全長:232mm ブレード長:120mm ブレード厚:2.9mm ブレード材:VANAX SUPER CLEAN ハンドル材:ブラックアナダイズドチタン

 

フルタング構造を採用。ブレードをハンドル材が挟み込み形で、頑丈さが確保される

 

ブレードバックの角の取り方などブレード処理のディテールは見飽きることがない

 

石崎さんの「ISZナイフ」にはどれも夕フネスさと使いやすさが共存している

 

 今回のコラボモデル「212CK-T」は、そんな石崎さんが提案する「包丁」をモチーフにしたアウトドアナイフだ。水回りで使うケースが増える代わりに、タフな環境下で使うケースは幾分か減る。そんな使用シーンを想定した結果、あえて「フルタング」構造を採用したモデルとなった。

 

 「ホビージャパンという『趣味』とともにあることの魅力を伝えてきた出版社とのコラボであることを考えて、『楽しさ』を前面に押し出したモデルにしたっもりです。このナイフがあることでキャンプをはじめとするアウトドアをより豊かに楽しんでいただければ、という思いで作らさせていただきました」
 その言葉どおり、しっかりした重さと適切な重量バランス、取り回しのしやすいブレードシェイプといった基本を抑え、さらにブレードバックの角の取り方などに気を配ることで、さまざまな人が安心して使える「ナイフ」となっている。

 

 もちろん、ハンドルにチタンを使用してシャープかつ近未来を感じさせるデザインに、なおかつ硬度と靱性が高いVANAX SUPER CLEANをブレード材に採用することで、実用を追求し続ける「ISZナイフ」らしさは十分に保たれている。

 

 「初めての方にも「ナイフ』の魅力を感じていただければ、嬉しいです」

 石崎さんは最後にそう強調した。

 

石崎祐也さん。ナイフを作り出したのは約5年前。30代後半からのスタートだった

 

石崎さんのさらに詳しいインタビューは

以下をご覧ください

 

 

REPORT

 

京都ナイフショー2026

 

京都の市街地にあるみやこめっせで開催された

 

 2026年の1月10日(土)と11日(日)の両日、京都市の「みやこめっせ」にて京都ナイフショーが開催された。

 年始めに開催されるショーとしてすっかり認知された同ショー。今回も23のブースに力作が並べられ、来場者を楽しませた。

 

展示された作品。その一部。上列左から:中山英俊/雅刀/YUUKI KNIVES/露田雅彦、
下列左から:鳩野憲志朗&堀江徳至/キタハガネ/九鬼隆一/市川雷也

 

 

主催の堀居賢司さん。「多くの人のお力添えで続けてきました。今回も予想以上の来場者にお越しいただき盛り上がりました」

 

 

詳細レポートはこちらでご覧いただけます

 

 

NEWS

 

ホビージャバン・ナイフショー出展案内

 

 2月から3月にかけて、東京と神戸でナイフショーが開催される。これらいずれにもホビージャパンも出展させていただくこととなった。ナイフに関する本に加えて、特別アイテムもご紹介する予定。ぜひ足を運んでいただきたい!

 

●東京フォールディングナイフショー
 ■日時:2026年2月7日(土) 11:00~17:00
 ■会場:日本橋プラザビル3F会議室1~4(東京都中央区日本橋2-3-4)
 ■問合せ:https://tfks.tokyo/
 ■X:@tfksofficial

 

●銀座ブレードショー
 ■日時:2026年2月8日(日)10:30~16:00
 ■会場:時事通信ホール(東京都中央区銀座5-15-8)
 ■URL:https://www.ginzablade.jp/

 

●オールニッポンナイフショーin 神戸
 ■日時:2026年3月7日(土) 10:00~16:00、8日(日)9:00~15:00
 ■会場: KIITOホール1階大展示場(兵庫県神戸市中央区小野浜町1-4)
 ■URL:http://waigaya.g1.xrea.com/
 ※1/31まで出展者を募集中
 ■問合せ:masatoknife2006@yahoo.co.jp(雅刀)

 

 

ROBSON Trinity 好評発売中!!

 

 モキナイフ、山秀、そしてHOBBY JAPANが手を組んで送り出す三位一体のコラボナイフ“ROBSON Trinity”。昨年末から好評販売中である。手に取った方からは早速、喜びのご報告もいただいており、チームー同、手応えを感じている。引き続き、手に取っていただきたい。

 Arms Webでは、島田英承さんと五十川英明さんによるインプレッションの完全版も掲載中。

 

ROBSON Trinity(隅定モデル)
全長:280mm ブレード長:150mm ブレード厚:5mm​​​​​ 重量:295g
ブレード材:VG-lOW ハンドル材:グリーンジュートマイカルタ
付属:グリーンレザーシース
価格:¥45,100(税込)

 

 

詳細レポートはこちらでご覧いただけます

 

 

 ホビージャパン 
 HOBBY THE PEOPLE
 https://hobbythepeople.shop/

 

 

Column

 

貴重なコレクションアイテムに出会えるショップ・しんかい刃物店

 

カスタムナイフの数々がディスプレイされる店内

 

 東京・阿佐ヶ谷にある「しんかい刃物店」は、ナイフ、包丁類、ライターという3つの分野それぞれで広く知られているお店だ。


 「元々は包丁や道具類を中心に扱っていました。ですが、問い合わせが多くなってきたことなどが契機となって、ナイフを扱うようになり、仕入れのために米国に行った際のご縁でジッポーライターを扱うようになりました。今ではいずれの分野もご愛顧くださる方がいます」
 店長の藤井高さんがそう語るように、店内は、商品が分野ごとに綺麗に分類されており、興味のあるアイテムを心ゆくまで眺めることができるような気配りがされている。

 

 ナイフやライターに関しては、現在は買取が中心。貴重なコレクションアイテムが数多く扱われており、お店のホームページや店頭に並ぶと、すぐに売れてしまうことも多い。
 「こだわりがないのがこだわりのようなものです」と謙遜する藤井さんだが、レアアイテムが多く集まるのには理由がある。

 

「値付けには私たちなりに気を配っています。買取価格、販売価格、それぞれをできるだけ適正にすることで、どなたにとっても良いお取り引きになるよう心がけています」
 取材に訪れた際も、店頭にはR.W.ラブレスのローンデール時代のユーティリティ、クザン小田氏が制作パートナーとして在籍していた頃のファイター、さらには米国でもなかなか手に入らないJ.N.クーパー、ランボーナイフで知られるジミー・ライルといった伝説的なナイフ作家の作品が並び、好きな人にとっては博物館のようなディスプレイが展開されていた。売り手、買い手のいずれとも信頼関係があるからこその品揃えと言えるだろう。

 

 「ホームページでは、できるだけ端的に特徴や魅力が伝わるような言葉にスペックを添えて、紹介するようにしています。それで興味を持ってくださるお客様もいらっしゃるので、ひときわ気を配っています」
 そう話すのは藤井達也さん。高さんの息子で長年経験を積んできた。

 

 「ナイフに加えてジッポーライターも、コレクターの方々が大事にされてきたレアアイテムを多く扱っています。ホームページでも閲覧しやすいよう注意していますが、もし可能でしたら足を運んでいただいて、実際に手に取っていただければ、より商品の特徴などを実感していただけると思います」

 取材している間も、次々に客が訪れるしんかい刃物店。ホームページでこまめにチェックしつつ、ぜひお店に足を運んでもらいたい。今後もレアアイテムが登場した際などは、この連載でもご紹介させていただく予定だ。

 

ナイフ、刃物、ジッポーライターといったアイテムがすらりと並ぷ

 

握り鋏など伝統的な鍛造品も置いている。「こういった腕利きの職人さんたちの製品に少しでも興味を持っていただいて、日本の鍛冶文化の豊かさを知っていただければという思いです」と藤井高さんは語る
ファクトリーナイフも人気作や話題作がおかれる

 

町中の商店街にあるお店だけに家庭用包丁にまつわる需要も多い。製品販売はもちろん、研ぎやリペアも行っている

 

左から藤井高さん、西野 勉さん、藤井達也さん

 

  しんかい刃物店 

  東京都杉並区阿佐谷南1-35-21

  TEL 03-3311-9116

  FAX 03-3315-8331

  営業時間 10:00-18:00

  休業日 火、水曜日

  https://www.rakuten.co.jp/nzshinkai/

 

 

 

 

 

 

 

藤井高さんのさらにお伺いした話は
こちらでお読みいただけます

 

 

構成:服部夏生(刃物専門編集者)

 

この記事は月刊アームズマガジン2026年3月号に掲載されたものです。

 

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