ミリタリー

2026/01/03

現代アメリカ海兵隊の戦い方 本領を見た! 第31海兵遠征隊 上陸訓練【後編】

 

大変革を進めるアメリカ海兵隊に注目

 

 

 現在、アメリカ海兵隊は世界的な安全保障環境の変化を受け、戦車部隊を全廃したり、砲兵部隊(通常の火砲を装備)を大幅削減する一方で、歩兵部隊に加え対艦ミサイル部隊、防空部隊、兵站部隊などを擁するMLR(海兵沿岸連隊)を新編したり、ロケット砲兵部隊や無人機部隊を増強するなど大変革を進めつつある。それは、我が国の安全保障とも密接に関係していると言っていいだろう。
 そこで、アームズマガジンWEBでは改めてアメリカ海兵隊に注目。少し前の記事にはなるが、フォトジャーナリスト・笹川英夫による沖縄の31st MEU(第31海兵遠征隊)への取材記事(「月刊アームズマガジン」2023年8月号および9月号掲載)を抜粋、再構成してご紹介していく。取材ではアメリカ海兵隊の主要な職種である歩兵を中心に、各種訓練や装備などを収録。ここでは前回に引き続き31st MEUのBLT 2/1(第1海兵連隊第2大隊・大隊上陸チーム)による上陸訓練をレポート。海岸堡を確保した上陸部隊が敵の防御陣地を攻撃し制圧するまでの過程を見ていこう。なお、上陸から海岸堡確保までの過程については、下記の「第4回 第31海兵遠征隊 上陸訓練【前編】」にてレポートしている。

 

第1回 M27 IAR編はこちら

 

第2回 M4A1/M16A4編はこちら

 

第3回 Mk13 MOD7/M240B/M18/M9編はこちら

 

第4回 第31海兵遠征隊 上陸訓練【前編】はこちら

 

 

第31海兵遠征隊による上陸訓練

 

 

 今回取材したのは、沖縄県金武(きん)町にある米海兵隊の基地、キャンプ・ハンセンにほど近いキン・ブルービーチ訓練場で行なわれた上陸訓練だ。この訓練はMEUEX(MEU Exercise)の一環として、31st MEUにローテーション配備されているBLT(大隊上陸チーム)2/1を中心に実施。任務の内容は訓練場の沖合からCRRCによって上陸して海岸堡を確保した後、内陸に進出して対抗部隊(仮想敵)を掃討するというもので、米海兵隊の本領たる水陸両用作戦の一端を見ることができた。

 MEUEXはローテーション配備に際して定期的に実施される訓練の一つで、新たに配備されるBLTなどがMEUに属する他の部隊と緊密に連携できるように演練。有事におけるMEUの即応能力の維持を目的としている。
  

 

内陸へと前進 

 

分隊レベルで相互に援護しつつ、移動と索敵を繰り返す。部隊間通信を活用し、情報共有にも余念がない

 

 BLT 2/1の上陸部隊がブルービーチに上陸した後、海岸堡を確保したのは【前編】でレポートしたとおり。話は前後するが、ビーチは前日のうちにMRF(Maritime Raid Force :海上強襲部隊)による偵察が実施されており、300mほど内陸側の森林地帯に対抗部隊の姿が確認されていた。次なる任務は、この対抗部隊の制圧。上陸部隊は周囲に潜む敵を警戒しつつ、任務遂行のために前進を開始した。

 

写真右側の兵士が背負う、大きな円筒状のアンテナが付く装置は通信機ではなくCESAS(Communication Emitter Sensing and Attack System:通信感知攻撃システム)IIと呼ばれる電子戦装置の歩兵携行型で、脅威通信を検知、妨害する電子戦能力を、歩兵が携行できるサイズで実現。サイバー領域の戦いや無人航空機(いわゆるドローン)への対処などにおいて、電子戦能力は必要とされる要素の一つだ

 

 

M240G

 

5.56mm×45弾のアサルトライフルよりも射程が長く威力が大きい7.62mm×51弾で弾幕を展開できるM240Gは、海兵隊員にとって頼もしい存在だ。トライポッド(三脚架)に載せて運用することで、より安定した射撃が可能となる。機関銃手はレシーバー上に搭載されたTrijicon製の光学サイトTA648MGOを通して前方を睨み、弾薬手は100発入りの弾薬箱から引き出したベルトリンクを装填して射撃に備える

 

SPEC

 

使用弾:7.62mm×51
全長:1,247mm
銃身長:630mm
重量:11.6kg
作動方式:ガス圧利用
装弾数:リンクベルト式

 

 ここで、上陸部隊が装備していたM240G汎用機関銃に注目してみよう。アメリカ軍は7.62mm×51弾を使用するM60汎用機関銃やM73車載機関銃などの後継として、FNハースタルのFN MAGを改修の上、M240として採用している。海兵隊が採用したM240Gは汎用機関銃の名に違わず部品の交換で歩兵用や車載用、ヘリのドアガンなど幅広く用いられ、発射速度は毎分650発から最大950発まで設定可能となっている。

 M240Gを歩兵用にコンバートする場合は、ピストルグリップやバイポッド、フロント/リアサイトなどからなる「歩兵改造キット」を装着する。なお、米海兵隊は第3回でご紹介しているように陸・海軍が使用するM240Bも採用している。M240Bは発射速度が毎分550~650発と低いレートに抑えられ、ヒートシールドやリコイルバッファーが追加されるなど、より歩兵向けのモディファイがなされているが、その分M240Gに比べ1kgほど重いのはデメリットと言える。

 

移動時は機関銃手はM240G本体を、弾薬手は弾薬箱とトライポッドを運搬する

 

リンクベルトを装填する場合は、レシーバー上面のフィードカバーを開ける

 

M240Gは射界が充分に開けた場所に配置された。なお、弾薬手は小銃を携行しているが、機関銃手は個人防御のためM18ピストルを携行している

 

別の位置でトライポッドに載せたM240Gを構える機関銃手。なお、本体に装着されたバイポッド(二脚)はすぐに移動したり、頭を低くする必要があるような場合に使い分けていた

 

 

接敵と制圧

 

 BLT 2/1の上陸部隊が警戒しつつじりじりと前進するなか、林の中で待ち伏せしていた対抗部隊がついに射撃を開始した。審判役の将校は、キルゾーンに入っていた上陸部隊側の海兵隊員数名に被弾判定を下し、被弾を宣告された者はその場に倒れ込んだ。

 

林に潜んでいた対抗部隊が上陸部隊を迎撃。審判は上陸部隊側の数名に被弾判定を下した

 

林の中で行動する対抗部隊の海兵隊員。識別のため対抗部隊側はMARPAT WOODLANDの戦闘服を着用している

 

林に潜む対抗部隊を掃討していく上陸部隊の海兵隊員。写真のM27 IARにはTrijicon VCOGショートスコープやAN/PEQ-16Aに加え、ハンドガード右側にSAFRAN OPTICSのICUGRが装着されている。ICUGRはレーザーサイトとレーザーレンジファインダー(距離計)の機能を併せ持つ装置だ

 

上陸部隊の攻撃によって次第に形勢が不利になり、対抗部隊は撤退を開始した

 

 対抗部隊の待ち伏せで数名を失ったものの、BLT 2/1の海兵隊員たちは遮蔽物や地形を巧みに利用しつつ反撃。数で勝る上陸部隊は着実に掃討を進め、ついに対抗部隊は撤退し、MEUEXにともなう上陸訓練は終了した。

 おさらいになるが、今回の訓練は沖合からCRRCを用いてビーチに上陸した後に海岸堡を確保、然る後に内陸側の森林に潜む対抗部隊を制圧するというものである。水陸両用作戦の要素が凝縮されたこの訓練では、まさにアメリカ海兵隊の本領ともいえる部分を見ることができたのである。

 次回からは、上陸訓練に続いて実施されたコンバットタウンでの市街地戦闘訓練をレポートしていこう。

 

 

電子書籍版も発売中!!
「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」

 

 

 最後にちょっと宣伝になるが、「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ最新刊となる『イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編』が発売中だ。

 「用兵思想」とは、戦争のやり方や軍隊の使い方に関するさまざまな概念の総称である。これについて知っておくことで「その軍隊がどのような任務を想定し、いかに組織を作り戦うか」といったことを理解できるようになる。

 本書では現在進行中のアメリカ海兵隊の大規模な変革と、それを必要としている海兵隊やアメリカ海軍、さらにはアメリカ軍全体のあたらしい用兵思想、それを実行するために編成される海兵隊のあらたな部隊とその装備、指揮統制の方法などを、イラストとともにくわしく解説している。

 

 

 

 

 

日本周辺の有事におけるアメリカ軍の戦い方が見えてくる

 

 本書では「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ(ホビージャパン刊)を手掛ける田村尚也が解説を、しづみつるぎがイラストを担当。現代のアメリカ海兵隊が大変革を進める理由や、その用兵思想がわかりやすくまとめられている。

 日本の安全保障とも密接に関わっているアメリカ海兵隊が抑止力としていかに機能し、有事にはどのように戦うのか。ご興味をお持ちになった方に、お薦めしたい1冊だ。

 

 

 

Text & Photos:笹川英夫/アームズマガジンウェブ編集部

取材協力:U.S.MARINE CORPS 31st MEU

 

 

 

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年9月号に掲載されたものから抜粋、再構成されたものです。

 

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