ミリタリー

2025/12/27

現代アメリカ海兵隊の戦い方 本領を見た! 第31海兵遠征隊 上陸訓練【前編】

 

大変革を進めるアメリカ海兵隊に注目

 

BLT ​​​2/1(第1海兵連隊第2大隊・大隊上陸チーム)​​​​の上陸第1波はブルービーチに上陸後、海岸堡(上陸作戦時の拠点)を確保すべく前進を開始。稜線を意識しつつ、敵から発見されないようにじりじりと匍匐前進する

 

 現在、アメリカ海兵隊は世界的な安全保障環境の変化を受け、戦車部隊を全廃したり、砲兵部隊(通常の火砲を装備)を大幅削減する一方で、歩兵部隊に加え対艦ミサイル部隊、防空部隊、兵站部隊などを擁するMLR(海兵沿岸連隊)を新編したり、ロケット砲兵部隊や無人機部隊を増強するなど大変革を進めつつある。それは、我が国の安全保障とも密接に関係していると言っていいだろう。
 そこで、アームズマガジンWEBでは改めてアメリカ海兵隊に注目。少し前の記事にはなるが、フォトジャーナリスト・笹川英夫による沖縄の31st MEU(第31海兵遠征隊)への取材記事(「月刊アームズマガジン」2023年8月号および9月号掲載)を抜粋、再構成してご紹介していく。取材ではアメリカ海兵隊の主要な職種である歩兵を中心に、各種訓練や装備などを収録しており、この第4回では31st MEUのBLT 2/1(第1海兵連隊第2大隊・大隊上陸チーム)による上陸訓練において、上陸から海岸堡確保までの過程を見ていこう。

 

第1回 M27 IAR編はこちら

 

第2回 M4A1/M16A4編はこちら

 

第3回 Mk13 MOD7/M240B/M18/M9編はこちら

 

 

常時前方展開する31st MEU

 

2025年5月、沖縄県のキャンプ・ハンセンで実施されたMEUEX(MEU Exercise)において、31st MEUにローテーション配備されたBLT 1/7(第7海兵連隊第1大隊・大隊上陸チーム)の海兵隊員たちが、VMM-265(第265海兵中型ティルトローター飛行隊)のティルトローター輸送機MV-22Bオスプレイへの搭乗に備え待機している(Photo:U.S.Marines/DVIDS)

 

 沖縄に配備されている31st MEU(Marine Expeditionary Unit:第31海兵遠征隊)は米海兵隊が編成する即応部隊のひとつで、アメリカインド太平洋軍(INDOPACOM:United States Indo-Pacific Command)が担当する地域においてMEUとしては唯一、常時前方展開している部隊である。
 とりわけ近年、インド・太平洋地域における安全保障上の緊張感が高まっていることから、地理的にも最前線に配備された31st MEUは、抑止力の重要な一角を占めているといっても過言ではないだろう。
 31st MEUの部隊規模は約2,200名。編成には司令部、陸上部隊、航空部隊、そして兵站部隊が組み込まれ、任務は水陸両用作戦や偵察・監視に限らず、人道支援や災害救助(HA/DR:Humanitarian Assistance and Disaster Relief)、非戦闘員避難作戦(NEO:Non-combatant Evacuation Operations)といった内容も含まれている。
 取材した2023年5月時点では、31st MEUは偵察部隊等も含むMEU司令部に加え、BLT(Battalion Landing Team:大隊上陸チーム) 2/1、CLB 31(Combat Logistics Battalion:第31戦闘兵站大隊)、VMM-265(第265海兵中型ティルトローター飛行隊)、およびVMFA-242(第242海兵戦闘攻撃飛行隊)などで編成されていた。なお、歩兵中心の陸上戦闘部隊であるBLT 2/1は、第1海兵連隊第2大隊(1st MEF隷下)を基幹とする。
 31st MEUのBLTは基本的に本国部隊からのローテーション配備とされ、各部隊に前方展開を経験させる貴重な機会にもなっている。また、海軍のPHIBRON(揚陸即応群)の揚陸艦にも定期的に乗船させ、有事の緊急展開に備えているのである。

 

 

第31海兵遠征隊による上陸訓練

 

CRRC(Combat Rubber Raiding Craft)に分乗し、沖縄らしいコーラルブルーの海を進んでビーチを目指すBLT 2/1の上陸第1波。船首側の海兵隊員は小銃を構えて前方を警戒する。CRRCは軍用ボートとしてもおなじみのZodiac(ゾディアック)Milproで、陸上自衛隊水陸機動団にも配備されている

 

 この取材では、MEUEX(MEU Exercise)と呼ばれる演習を見ることができた。MEUEXはローテーション配備に際して定期的に実施される訓練の一つで、新たに配備されるBLTなどがMEUに属する他の部隊と緊密に連携できるように演練。有事におけるMEUの即応能力の維持を目的としている。
 MEUEXの一環となるこの上陸訓練は沖縄県金武(きん)町にある米海兵隊の基地、キャンプ・ハンセンにほど近いキン・ブルービーチ訓練場で、31st MEUにローテーション配備されていたBLT 2/1を中心に実施された。

 

 

上陸開始 

 

上陸第1波は水際での攻撃を受けぬまま上陸に成功。海兵隊員たちは海岸堡を確保すべく速やかに展開する

 

 ビーチについては前日のうちにMRF(Maritime Raid Force :海上強襲部隊)による偵察が実施され、対抗部隊はビーチよりも300mほど内陸側の森林地帯に潜んでいることが判明していた。そこで、BLT 2/1を中心とする上陸部隊は、VMM-265などによる航空支援の下、上陸を開始。彼らはCRRC(Combat Rubber Raiding Craft)に分乗して訓練場の沖合より進出し、2波にわたってビーチを目指した。

 

敵を警戒しM27 IARを構える海兵隊員。ハンドガードにはAN/PEQ-16、レシーバー上にはRMR付きのTrijicon ACOGを搭載。訓練では空砲を使用するため、マズルにはブランクアダプターが装着されている

 

続いてCRRCに分乗した上陸第2波がビーチに接近。ビーチ手前でフローティングベストを着用した海兵隊員が海面に飛び込み、CRRCを引っ張って砂浜にランディングさせる

 

美しく弧を描くブルービーチに上陸。CRRCが流されないように全員で持ち上げて、波打ち際から離しておく

 

フローティングベストを脱ぎ、CRRCに載せてきた各種装備を身に着けて前進のための準備をする海兵隊員たち。なお落水時の事故防止のためか、多くの隊員はプレートキャリアを装着していなかった

 

装備を整え、前進を開始する上陸第2波。なお、上陸部隊であるBLT 2/1の海兵隊員たちは、対抗部隊(仮想敵)との識別のためMARPAT DESERTの戦闘服を着用している

 

 

海岸堡を確保

 

上陸部隊は敵の抵抗を受けることなく海岸堡を確保した

 

草木でカバーされている場所を駆け抜ける海兵隊員たち。植生や地形を利用して被発見を避けつつ、迅速に展開していく

 

 ブルービーチに上陸したBLT 2/1の海兵隊員たちは速やかに展開し、海岸堡を確保した。この後、彼らは内陸側で待ち構える対抗部隊を攻撃し、制圧を目指すことになる。その模様は、次回の「第31海兵遠征隊による上陸訓練【後編】」でレポートしよう。

 

 

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「イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編」

 

 

 最後にちょっと宣伝になるが、「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ最新刊となる『イラストでまなぶ!用兵思想入門 現代アメリカ海兵隊の戦い方編』が発売中だ。

 「用兵思想」とは、戦争のやり方や軍隊の使い方に関するさまざまな概念の総称である。これについて知っておくことで「その軍隊がどのような任務を想定し、いかに組織を作り戦うか」といったことを理解できるようになる。

 本書では現在進行中のアメリカ海兵隊の大規模な変革と、それを必要としている海兵隊やアメリカ海軍、さらにはアメリカ軍全体のあたらしい用兵思想、それを実行するために編成される海兵隊のあらたな部隊とその装備、指揮統制の方法などを、イラストとともにくわしく解説している。

 

 

 

 

 

日本周辺の有事におけるアメリカ軍の戦い方が見えてくる

 

 本書では「イラストでまなぶ! 用兵思想入門」シリーズ(ホビージャパン刊)を手掛ける田村尚也が解説を、しづみつるぎがイラストを担当。現代のアメリカ海兵隊が大変革を進める理由や、その用兵思想がわかりやすくまとめられている。

 日本の安全保障とも密接に関わっているアメリカ海兵隊が抑止力としていかに機能し、有事にはどのように戦うのか。ご興味をお持ちになった方に、お薦めしたい1冊だ。

 

 

 

Text & Photos:笹川英夫/アームズマガジンウェブ編集部

取材協力:U.S.MARINE CORPS 31st MEU

 

 

 

 

この記事は月刊アームズマガジン2023年9月号に掲載されたものから抜粋、再構成されたものです。

 

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