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2025/12/11

オールド・モデルガン・アーカイブ:オールドファンを夢中にさせた金属ガバ7選【Part.2】

 

オールドファンを夢中にさせた 金属ガバ7選 Part.2

 

1911オート、モデルガンファンの間では「ガバメント」または縮めて「ガバ」と呼ばれることが多いオートマチックピストル。とても人気が高く、モデルガンが誕生して間もない頃から各社で競作され、2度3度と作り直しているメーカーもあるほど。そんな中から、発禁となって久しい金属モデルガンのガバを7機種、厳選してご紹介したい。

 

【前回の記事はこちら】

 

 

 

マルゴー ガバメント・モデル(1971年)

 

マルゴー製ガバメント・モデル

 

あえて競作に挑んだ独自アレンジのカバ

 

 MGCとCMCの2大メーカーがガバーメントで競作し、盛り上がりを見せていた1971年、マルゴーはあえてこの時期に自社オリジナルのガバメント(マルゴーの表記)を発売した。年末には第1次モデルガン法規制が施行されるというタイミングだ。規制対象となるハンドガンの新製品が激減した年でもある。
 マルゴーはひと味違ったモデルガンを作るメーカーで、六研の六人部登さんに原型製作を依頼しても、そのままモデルガン化せず、アレンジを加えることが多かった。最も原型に忠実で変更の少なかったのがリボルバーのコルト・デテクティブ(マルゴーの表記)とされるが、それでもクセのあるデザインだった。
 ガバメントはマルゴー社内で設計されたそうで、当然というべきか最もクセが強い。なにしろトリガーガードの高さ(上下幅)が異様に狭い。後に伺った話によれば、マルゴーの社長が「これだと入れた指がガタつかず、いつも同じ位置にくるから安定して撃てるだろ」と仰っていたという。モデルガンがオモチャ的な発想から模型的な発想に変わろうとしていた頃のことだ。
 それでもMGCやCMCのモデルガンと違って、全国のおもちゃ屋さんに広く行き渡っていたようで、よく目にすることができた。その結果、これがガバメントだと思っていた人も多い。まちがいなくマルゴーは1つの爪痕を残した。

 

バレルブッシングは強度対策か、分解しやすくするためか、かなり分厚い。また銃口部には独特のライフリングが再現されている

 

話題になった上下幅の狭い独自解釈によるトリガーガード。今では考えられないが、当時はこんなこともあった

 

リアサイトのノッチはスクエアにもUにも見える。ハンマーも独自解釈のようで、ユニークな形状になっている

 

発火はファイアリングブロック方式。ほとんどMGCと同じ形式だが、エキストラクターはコイルスプリングを使うなどの工夫が見られる。ただ細い部分から折れやすかった

 

 DATA 

主材質:亜鉛合金
撃発機構:シングルアクションハンマー
発火機構:前撃針/ファイアリングブロック
作動方式:ショートリコイル、手動
使用火薬:平玉紙火薬
カートリッジ:ソリッドタイプ
全長:21.5cm
重量:1,000g
口径:.45
装弾数:7発
発売年:1971年
発売当時価格:

 4,000円(送料込み、カートリッジ7発付き)
 同価格でコマンダーモデルもあり。

 

※販売目的の所持禁止。違反すると一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 


 

国際産業

コルト・ゴールド・カップ・ガバメント

コルト・コマンダー(1975年)

 

国際産業製コルト・ゴールド・カップ・ガバメント(発売当時のネーミング)

 

国際産業製コルト・コマンダー

 

ガバだけ作られなかった1911オートシリーズ

 

 国際産業がモデルガンメーカーとしてスタートしたのは1973年。そして、すでに人気となっていたモデルを自社でも作り、次々と製品のラインアップを充実させていった。
 そんな中にガバメント(実際に作られたのはゴールドカップとコマンダーで、ガバメントは作られなかったが)もあった。1974年にはMGCがプラスチックのガバメント・ブローバックを発売して爆発的な大ヒットを飛ばしていた。そこで当時の国際産業の社長が、自社にはプラスチックモデルのノウハウがないこともあり、金属のガバメントを作ろうと決めたらしい。
 ただ、国際産業はそのとき手がけていたモデルが複数あり、ブローバック化も念頭に置いたオートマチックを新規に作る余裕はなかった。そのためカトウ技研という新会社に丸投げされることになった。いわゆるOEM。カトウ技研が設計、製造、部品発注、加工・組み立て、パッケージングまですべて行ない、国際産業に納品する。
 実際に発注されたのはガバメントのバリエーションに当たるゴールドカップとコマンダーのみで、ガバメントは国際が自社で作るつもりだったらしい。ところが1976年にCMCとMGCから新たなガバメントが発売され、さらには1977年に第2次モデルガン法規制が施行され、肝心のガバメントが登場しないまま姿を消すことになってしまった。

 

ゴールドカップのリアサイト。資料が少ない時代なので、形状の再現は微妙だが、クリックなしながらちゃんと上下左右の調整が可能

 

マガジンキャッチは板ばね方式。ゴールドカップのトリガーはコマンダーと同じサイズで穴が開いているだけ。ただトリガーストップは実際に調整可能

 

フレームを見ると、エジェクターの横にスリットがある。ブローバック化する時にディスコネクターを入れる予定だったのかもしれない

 

バレルブッシングにはかなりガタがある。おかげで分解組立は楽だったが、ブローバック化した時の強度には不安が残る

 

 DATA 

主材質:亜鉛合金、
ABS樹脂(グリップ)
撃発機構:シングルアクションハンマー
発火機構:前撃針/ファイアリングプレート
作動方式:ショートリコイル、手動
使用火薬:平玉紙火薬
カートリッジ:ソリッドタイプ
全長:21cm、20cm
本体重量:950g、920g
口径:.45
装弾数:7発
発売年:1975年
発売当時価格:各6,000円(カートリッジ7発付き)
オプション:ガバメント、コマンダー共用木製グリップ2,100円

 

※販売目的の所持禁止。違反すると一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。


 

CMC コルト・オートマチック.45口径(1976年)
ゴールド・カップ・ナショナル・マッチ
ガバメントM1911A1 コマンダー

 

CMC製ガバメントM1911A1(スタンダード&ブローバック)Photo by Keisuke.K

 

最後の新規量産モデルとなった金属カバ

 

 量産モデルガンで、完全新規設計で、最後の金属製ガバメントとなったのが、CMCのコルト・オートマチック.45口径シリーズだ。初代のガバーメントの登場からちょうど10年目に当たる。1976年の1月頃に発売されたようだが、1977年12月1日に第2次モデルガン法規制が施行されたので2年ほどの寿命しかなかったことになる。ブローバックモデルにいたっては、1977年に入ってからの発売だったようで、1年にも満たない。それで採算が取れたのか。販売が禁止されたから在庫を抱えるわけにも行かなかったはずだ。
 それはともかく、CMCのニュー・ガバは、メカニズム、外観ともにその時点で最高レベルの完成度だった。これぞガバメントというリアルさ。
 原型製作は六人部登さん。ベースとされたのは六人部さんがウェスタン・アームス時代に手がけた真ちゅうカスタム、ガバメントM1911A1 BLK(1974年)だ。六人部さんにとっては2代目で、いわばGM2にあたる。最初のGM1をウェスタン・アームスの経営パートナーだった国本圭一(くにもとけいいち)さんのアドバイスに従って、よりリアルにリメイクしたもの。それをさらに亜鉛合金の量産モデルに向くようにアレンジした。
 ブローバック作動は快調とは言えなかったが、多くの人の心を捉えた名銃だった。

 

メカニズムはほとんど実銃そのまま。量産モデルで初めてリアルなディスコネクターが再現された

 

マガジンキャッチも板ばねを使わない本式のもの。CMCのニュー・ガバで初めて実銃の方式を知ったという人も多かった

 

タイトさが売りのCMCだが、バレルブッシングにはわずかなガタがあった。ブローバック時には大きな力が掛からないのかもしれない

 

リアサイトはUノッチで、しかも前方がやや広いタイプ。ハンマーはミリタリーのワイド・スパータイプ

 

 DATA 

主材質: 亜鉛合金ダイカスト、ABS樹脂(スタンダードグリップ)、ウォールナット(ブローバックグリップ)、ロストワックスパーツはブローバックモデルのみ使用
撃発機構:シングル・アクション・ハンマー
発火機構:前撃針/ファイアリングブロック
作動方式:手動(ショートリコイル)、ブローバック(ストレート)
カートリッジ:ソリッドタイプ(スタンダード)、オープンタイプ(ブローバック)
使用火薬:平玉紙火薬
全長:210mm(NM)、210mm(GM)、204mm(CM)
重量:1,000g(NM)、1,000g(GM)、980g(CM)
口径:.45ACP
装弾数:7発+1(薬室内)
発売年:スタンダード 1976年、ブローバック 1977年
発売当時価格:

 NM スタンダード 6,500円、ブローバック 9,800円
 GM スタンダード 6,000円、ブローバック 9,500円
 CM スタンダード 6,000円
 (ブローバックは木製グリップ付き、各カートリッジ7発付き)
 *NM=ゴールド・カップ・ナショナル・マッチ、GM=ガバメント、CM=コマンダー

 

※販売目的の所持禁止。違反すると一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 


 

MGC ニュー・ガバメント(1976年)

 

MGC製ニュー・ガバメント

 

輸出モデルの国内仕様版ニュー・ガバ

 

 MGC最後の金属製ガバメントも1976年、第2次モデルガン法規制の1年ほど前に発売された。広告やカタログなどではニュー・ガバメントと呼ばれていたが、MGC社内ではGM3と呼ばれていたらしい。というのも、初代金属製ガバメントGM1に続いて作られたプラスチック製のガバメントがGM2で、それに続く3代目のガバメントだったからだ。ガバメント・ブローバックは、いわばGM1のカスタム化だったので、個別の型式名のようなものは与えられなかったらしい。
 ニュー・ガバは、MGCモデルガンの輸出を担っていたRMI社からの「ショートリコイルする金属製ガバメントが欲しい」という要望から始まったという。国内では新たな法規制が囁かれていた時期だったが、プラ・ガバの基本設計を使い、多くのパーツをプラ・ガバと共用とすることでコストを抑えれば、輸出だけで採算が取れるという判断でゴーサインが出た。
 輸出用の金属ガバ、ニュー・ガバが完成した頃、CMCから金属のニュー・ガバが発売された。すると国内でもMGCのショートリコイルする金属ガバが欲しいという声が高まり、前撃針を取り付けて発火モデルにするなどの修正が加えられて国内発売された。第2次モデルガン法規制直前には、全国のショップで在庫がなくなるくらい売れたという。隠れたヒット作だった。

 

バレルブッシングのガタは少なめながら、手で回すことができるレベル。実銃と違い一方向にしか回らなかった

 

ファイアリングプレートはプラ・ガバそのままだが、外観的なこだわりで、下面にディスコネクターが入る凹みが付けられていた

 

フレームもプラ・ガバそのままだったものの、外観的アレンジで、ディスコネクターの彫刻が加えられている

 

ショートリコイル機構が再現されていたので、バレルは高い位置でスライドとかみ合っている

 

 DATA 

主材質:亜鉛合金
撃発機構:シングルアクションハンマー
発火機構:前撃針/ファイアリングプレート
カートリッジ:ソリッドタイプ
作動方式:ショートリコイル、手動
使用火薬:平玉紙火薬2〜4粒
全長:216mm
口径:.45
重量:1,000g
装弾数:7発
発売年:1976年
発売当時価格:5,500円(カートリッジ別売)
オプション:

 カートリッジ6発 450円

 マッチタイプグリップ 700円

 ローズウッドグリップ 1,000円

 ピストルスコープ 2,200円

 取り付けマウント 400円

 トップリングレンチ 150円

 

※販売目的の所持禁止。違反すると一年以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。

 


 

※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
※拳銃型の金属製モデルガンは、1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルであっても、経年変化等によって金色が取れると銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合は黄色や白色、または金色の塗料を塗るなどの処置が必要です。

 

 

TEXT&PHOTO:くろがね ゆう

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年12月号に掲載されたものです。

 

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