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2025/09/12

刃物の町•関にある日本随ーの品揃えのナイフショップ「山秀」【ナイフダイジェスト・アームズマガジン版】

 

 人類最古の道具とも言われる刃物。その中でも、実用性と収集性が並び立つアイテムである「ナイフ」にフォーカスして、最新情報をお届けしよう

 

TOPIC

 

刃物の町•関にある日本随ーの品揃えのナイフショップ「山秀」

 

 日本には数多くのナイフショップが存在する。中でも品揃えの豊富さと、ホスピタリティの高さで多くのファンから信頼と支持を集めるお店。

 それが「山秀」だ。


 刃物の町・関で、1940年の創業以来「刃物一筋」を続けてきた老舗であり、早い時期から海外のファクトリーナイフを輸入もしてきた。幅広い層のカスタマーからのニーズを読み取り、海外のショーなどにも足を運んで新しい商品を紹介する……。
 地道な企業努力の繰り返しで、実店舗「世界のナイフショールーム」には常時1,000点以上の商品を並べる「山秀」のナイフショップとしての足跡を振り返りつつ、これからについてお伺いしてきた。

 

店内には国内外の名作ナイフが並ぶ。質問や気になる商品があれば気軽にお店の人に声をかけよう

 

使い手と作り手をつないで「文化」を築き上げてきたショップ

 

「私たち山秀は一貫して『アウトドアナイフ』をご紹介してきました」
 そう語るのは、山秀の西村優一さん。現社長の西村陽子さんのご子息で、実店舗の「世界のナイフショールーム」の接客からウェブサイトの運用まで、先頭に立って行っている。
 その言葉通り、山秀は、国内外のカスタムからファクトリーまで幅広いジャンルのナイフを扱ってきている。国内有数の充実した品揃えを誇り、店舗には常時1,000点以上の商品が並ぶ。


「お求めいただくお客様は、コレクターはもとより、釣りやキャンプといったご趣味を持つ方、猟師などのプロフェッショナル、普段の料理にお使いになる方などさまざま。代々の担当者たちが、皆さまのニーズに合うような商品を集めてきた結果が、この品揃えにつながっていると考えています」
 欧米の展示会には定期的に参加し、新作や新ブランドのチェックをこまめに行っている。さらに、メーカーとの関係性を丁寧につくることで、他にはない独自のレパートリーを築いた。その結果が、米の一大ファクトリー、ベンチメイドのバリエーション豊かな品揃え、ム工ラやジョーカーといった日本では知られていなかった欧州ブランドが並ぶといった「特長」となっている。


 近年は国産のカスタムナイフにも力を入れている。関の刀匠・高羽弘宗さん、越前武生の伝統工芸士・岩井丈さん、愛知県のナイフ作家・萩野力さんといった人々の作品、さらには彼らとコラボレーションしたオリジナル商品なども展開して、ナイフファンたちから支持を得ている。
「今後も引き続き、作家さんたちとのコラボレーションなどの企画を行っていきたいと思っています」
 先人が惜しみなく伝えてくれた実践を通して身につけた幅広い知見。それをベースに、時代に則した変革も行って新たな「山秀」をつくっていきたい、西村さんはそう語る。

 

萩野 力 作「TOUGHNESS MAX -regular-」
Cus-rh2031
全長:220mm
ブレード長:106mm
ブレード厚:4.5mm
重量:296g
ブレード材:DC53
価格:¥55,000(税込)
 13ミリ厚の鋼材から削り出したインテグラル(一体成形)。大人気作家の定番モデルだが、山秀で扱うものは革製のシースがつく

 

ベンチメイド「OSBORNEマグナカット」
Bem940bk-03
ハンドル長:113mm
ブレード長:87mm
ブレード厚:2.6mm
重量:78g
ブレード材:CPM-Magnacut ステンレス(60-62HRC) DLCバトルウオッシュ仕上
ハンドル材: 6061-T6アノダイズドアルミニウムブルークラス
価格:¥51,700(税込)
 人気のブレード材CPMマグナカット&DLCコーティング、ハンドル材にアノダイズドコートされたエアクラフトアルミを採用 写真:玉井久義(HOBBY JAPAN)

 

ベンチメイド「MINIADAMAS マーブルカーポンファイバー」
Bem273-03
ハンドル長:111mm
ブレード長:82.6mm
ブレード厚:3.6mm
重量:126g
ブレード材:CPM-Magnacut(粉末ステンレス鋼マグナカット)
ハンドル材:マーブルカーボン
ファイバーブラッククラス
価格:¥63,800(税込)
 マグナカットに加えハンドル材にはマーブルカーボンファイバーを使用。山秀の折りたたみナイフ部門の人気第1位を誇るヒット作 写真:玉井久義(HOBBY JAPAN)

 

モキ「キングフィッシャー」
mok-kf-5bm-ns
ハンドル長:107mm
ブレード長:65mm
ブレード厚:3mm
重量:105g
ブレード材:VG10
ハンドル材:ブラックリネンマイカルタ+モキオリジナルメダル
ケース:革(ブラック)
価格:¥30,800(税込)
 関のナイフファクトリー、モキナイフの名作。関市の烏として認定されているカワセミのくちばしをモチーフにしたモデルだ 写真:玉井久義(HOBBY JAPAN)

 

モキ「クーフ」
mok-tp-921a
(上から)マスタードイエロー/レスキューオレンジ/グレイッシュブルー
ハンドル長:90mm
ブレード長:63mm
ブレード厚:2mm
重量:37g
ブレード材:AUS-8ステンレス
ハンドル材:グリロン樹脂
価格: ¥4,180(税込)
 リーズナブルなポケットナイフ。片手でのオープンを可能にするサムスタッドや安全性の高いロックバック機構を使った使いやすい1本 写真:玉井久義(HOBBY JAPAN)


「当たり前のことですが、今のお客様たちとの信頼関係を大切にすることが一番。今までと変わらない品揃えはもとより、ショーや各種のイベント開催なども続けていきます。その上で、新たな層の方々にもナイフの魅力をアピールしてきたいですね」
 実際にYouTubeを活用した情報発信、海外からのカスタマーヘの接客などを行うことで「手応え」も感じているという西村さん。スタッフたちとも協力しながら、従来のホスピタリティの高さにもさらに磨きをかけていくそうだ。

 

 昨年、店舗に併設してオープンした「cafe sun」も好評だ。
「関という町が盛り上がっていくために少しでも貢献できれば、という社長の思いから生まれたカフェですが、予想以上に皆様にご愛顧いただいています。カフェを使ったワークショップなども今後は積極的に開催していこうと考えています」
 商品を提供するだけにとどまらず、刃物があることで農かになるライフスタイルの提案もしていく……。そんな創業以来の「伝統」を常に大事に守っていることが、店舗で時間を過ごしていると伝わってくる。ナイフファンはもとより、ナイフに興味を持ち始めた方も、ぜひ店舗に足を運んで、ホスピタリティの高い接客を通して、かけがえのない1本を手にしてもらいたい。


「刃物は、日々をより豊かに、楽しくしてくれる道具です。どなたにとっても最適の1本が見つかるお手伝いができればと思っています」
 西村さんは、そう話を結んだ。

 

西村優ーさん。曽祖父の創業者山田秀雄さんから代々引き継がれてきた志を受け止めながら新たな試みも積極的に行っている

 

併設された「cafe sun」も好評で、オープン以来多くの来客で賑わう

 

 

 

 

 

   世界のナイフショールーム 山秀 

 

  岐阜県関市西境松町46

  TEL:0575-24-5000

  営業時間:10:00~17:00

  定休日:土曜、祝祭日、年末年始、お盆

  HP:https://www.yamahide.com/

 

 

 

 

And more!!

 

西村優一さんにさらに詳しくお伺いしたインタビューはこちらでご覧いただけます。

 

 

*ここまでの特記以外の写真:渡辺干年(HOBBYJAPAN)

 

 

REPORT

 

ナイフショーレポート:銀塵ブレードショー2025夏

 

 7月13日(日)、東京・銀座の時事通信ホールで「銀座ブレードショー2025夏」が開催された。
 同ショーは毎年、夏と冬の2回開催される。いわゆる大御所に加えて、若手や新進の作家たちも参加する間口の広さが特徴。アマチュアナイフメーカー育成のために、ショー会場に「作品展示テーブル」を設置するなどして、業界の裾野を広げる役割も果たしている。
 終日、多くの人が集い、気になる作家たちとの会話を楽しむ姿が見られた。次回は来年(2026年)2月に開催予定。

 

毎回賑わいを見せるショーだが、今回も盛況だった

 

人気のKIKUKNIVESは抽選方式での販売を行った

 

順に以下の方々の作品です(敬称略)
●左列上から丸山律/中山英俊/山本徹 ●中列上から長田渓(A&K Handmade Knives)/大泉好孝/鈴木寛(鈴木刃物製作所) ●右列上から丹後雄一郎/荒川知芳/奈良定守

 

ショーは作家同士にとっても交流できる貴重な場だ

 

 

 

ショーの詳細レポートはこちらでご覧いただけます

 

 

 

NEWS

 

『SOG×KIKU』の新作「HIDAKA」リリース!!

 

 世界的な人気を誇る”KIKU KNIVES’'の松田菊男と、世界有数のナイフファクトリーSOG。
 ナイフ好きなら誰もが知るふたつのブランドのコラボナイフの歴史は2007年まで遡る。
 SOGの創業者、スペンサー・フレイザーカ又松田の研ぎの技術に惚れ込んで「菊さんとならば」とコラボを持ちかけたのである。その作品は、世界的な権威のある「ブレードショー・アワード」で、年間最優秀コラボレーションナイフを受賞した。’'松田菊男’'の名前が世界で知られる大きなきっかけとなった受賞以降も「SOG KIKU」シリーズは、折に触れ新作を発表、いずれも圧倒的な人気を得てきた。


 そんなコラボナイフの新作「HIDAKA」のプロトタイプが完成した。
 フィクストブレード(固定刃)とフォールダー(折りたたみ式)の2種類。フォールダーは前作のXR-LTEと同じく、利き手を選ばないXRロックが採用されている。
 KIKUモデルらしいスマートなシルエット、そして複雑に面が重なるブレードのグラインドを、SOGの高い技術で再現。実用とコレクションいずれにおいても、オーナーを満足させクオリティを実現している。ぜひとも手にしたいモデルだ。

 

[SOG]KIKU HIDAKA(プロトタイプ) 撮影:渡辺干年(HOBBY JAPAN)

 

購入は KIKU KNIVES 公式HP(https://kikuknives.jp/)まで。

 

 

 

ショーの詳細レポートはこちらでご覧いただけます

 

 

 

Column

 

北海道の新星•工藤刃物鍛造所

 

写真提供:工藤刃物鍛造所

 

 北海道・札幌の地に2021年に創業した刃物鍛冶がいる。
 工藤寛汰さん。

 

 高知県の土佐打刃物の工房で5年間の修業を行ったのち、生まれ育った地で鍛冶を始めた。

「仕事場に入った最初の頃は、何もできず、刃物を壊してばかりでした。どうにかできるようになったのは、師や先輩方に時間をかけて教えて頂いたおかげです」
 そう振り返る工藤さん。刃物鍛冶を志したのは高校生の頃だったという。
「もともと木工が好きで、子どもの頃、作業の際に使う刃物に興味を持ったことがきっかけでした」
 中学生になると、ヤスリで鋼材を削ってナイフを手がけるように。「様々な形のものをつくりたい」という思いが高じて鍛造へと目を向け、鍛冶屋になりたいと思うようになった。


「越前武生の鍛造教室なども体験して、気持ちが固まりました。技術を覚えられるところを探していたら、運よく高知県で雇っていただけることになったのです」
 その後、ふたつの仕事場で仕事をしながら技術を覚えていった。
「私は本当に不器用で。中でも荒研ぎ(回転砥石で大まかな研ぎと成形を行う)は苦手で、どうにか身につくまでずいぶん時間がかかりました」と笑う工藤さんだが、いったん身についた技術は確かなものだったようで、ある程度の経験を積んだ段階で師匠が独立をすすめてきた。「自分にできるのか」と悩んだが、自らの志を叶えるまたとない機会だと決断。故郷に工房を構えた。

 

「師匠や先輩がた、父をはじめとする家族などの力ぞえがあってどうにか始めることができました」
 高知県と北海道の気候の違いもあって、なかなか思い通りの品物ができなかったが、設備に改良を加えるなどして販売開始。寿司職人の柳葉包丁や「氷祭り」用のノミといった注文に応えると、土佐で学んだ沸かし付け(鋼と軟鉄を鍛接する製法)をベースにした「硬めでなおかつ欠けづらい」刃物が評判を呼ぶように。今では国内外から注文が来るようになった。
 包丁がメインだが、アウトドアや狩猟用のナタやナイフも手がけている。


「皆さんからの注文にお応えして喜んでいただけることが励みになっています」
 そう話す工藤さん。今後はグリップやヒルト、シースを北海道のメーカーと協業した「北海道産アウトドアナイフのブランド」も立ち上げたいと意気込む。
 要注目、これからの活躍が大いに期待できる若手刃物鍛冶だ。

 

包丁をメインにナタやナイフなども手がける。オーダーメイドにも柔軟に対応する

 

工藤寛汰さん。現在30歳。技術をますます深めていきたい、と真摯に語る

 

 

  工藤刃物鍛造所 

 

  北海道札幌市東区丘珠町510番地

  TEL:090-5984-7572

  定休日:日曜日、祝日

  ※来店希望の際は要事前連絡

  HP:https://kudo-hamono.com/

 

 

工藤寛汰さんにさらに詳しくお伺いしたインタビューはこちらでご覧いただけます

 

 

構成:服部夏生(刃物専門編集者)

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年10月号に掲載されたものです。

 

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