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2025/08/19

昭和大好きかるた 時代を超えた普遍の良き「何か」を振り返る 第34回「め」

 

時代を超えた普遍の良き「何か」を振り返る

 

第34

名ナレーション

 

 令和となってはや幾年。平成生まれの人たちが社会の中枢を担い出すようになった今、「昭和」はもはや教科書の中で語られる歴史上の時代となりつつある。
 でも、昭和にだってたくさんの楽しいことやワクワクさせるようなことがあった。そんな時代に生まれ育ったふたりのもの書きが、昭和100年の今、"あの頃"を懐かしむ連載。 

 第34回は、軍事フォトジャーナリストの菊池雅之がお送りします。

 

 

ショーのオープニングを飾る”べしゃり”

 

 昭和のアニメやドラマを見ていると、オープニングでナレーションが流れるものが多かった記憶があります。


 私はこれが大好きでした。今からこの作品の世界に没入するんだ、と気持ちを切り替えられるしカッコイイものも多いしで、非常にワクワクしたものです。


 オープニングナレーションの内容は、あらすじであったり、主人公の紹介であったり、いくつかのパターンがあります。ナレーションと言うよりセリフのようなものも多かったのですが、ここでは、それも含みます。

 


 幼い頃にがっつりと心つかまれたのが、アニメ『タイガーマスク』です。
 もちろん私はリアタイ世代ではないのですが、再放送で何度も見てました。


 そこでは、「虎だ、虎だ、お前は虎になるのだ! タァー!」というナレーションと共に、OP曲が流れます。私は長らくこの声は、タイガーマスクが所属していた「虎の穴」のボスであるミスターXが呼びかけているのかと思っていたのですが、違うそうです。なお、再放送していたのは、続編である『タイガーマスク二世』が放送されていたからだと思うのですが、こちらは、「力は正義ではない。正義が力だ!」からOP曲に入ります。どちらも最高にカッコいいです。


 アニメにおけるこうした演出は、時代と共に少なくなっていきます。最近ではアニメ『ちびまる子ちゃん』の「さあみんな集まって~ ちびまる子ちゃんが始まるよ~」ぐらいかな、なんて思っていたのですが、それももう古いようで、今ではこの呼びかけではなく「みんな行くよ~」と簡略化されてしまいました。

 

ブラウン管に液晶、有機ELまで我々昭和世代はさまざまなテレビを経験している

 

長めのナレーションはより味わい深い

 

 ドラマの場合は、もう少し長いです。例えば『スクール⭐︎ウォーズ』では、「この物語は、ある学園の荒廃に戦いを挑んだ熱血教師達の記録である。高校ラグビー界においてまったく無名の弱体チームが、荒廃の中から健全な精神を培い、わずか数年で全国優勝をなし遂げた奇跡を通じて、その原動力となった信頼と愛を余すところなくドラマ化したものである」といった長めのナレーションから始まり、麻倉未稀さんの『ヒーロー HOLDING OUT FOR A HERO』が流れてきます。どうです? 痺れませんか?
 この『スクール⭐︎ウォーズ』を制作した大映テレビ株式会社は、当時さまざまなヒットドラマを生み出しており、そのほとんどで、オープニングナレーションを採用していました。


 次に私が好きだったのは、ドラマ『不良少女とよばれて』です。そこでは、「この物語は『不良少女とよばれて』の原作者で、現在民間舞楽界で活躍されている原笙子さんが、かつて青春時代に非行に走り、そして立ち直った貴重な体験をドラマ化したものである」と、ドラマのあらすじではなく、原作者のプロフィールを紹介しています。
 大映テレビ関連は枚挙に暇がないので、この辺で終わりにしますが、いずれもオープニングから視聴者をしっかりとドラマの世界にへと引きずり込むナレーションばかりでした。


 1980年代は、アメリカドラマもいろいろと放送されており、そこでもオープニングナレーションは欠かせないものでした。中でも『特攻野郎Aチーム』は、OP曲に歌詞はなく、そこにフルでナレーションがかぶさっていました。
 まず、「ベトナムで鳴らした俺たち特攻部隊は、濡れ衣を着せられ当局に逮捕されたが、刑務所を脱出し地下に潜った。しかし、地下でくすぶってるような俺たちじゃあない。筋さえ通りゃ、金次第で何でもやってのける命知らず。不可能を可能にし、巨大な悪を粉砕する。俺たち、特攻野郎Aチーム!」で始まります。

 

ホーチミンにあるベトナム戦争博物館

 

 このナレーションは、劇中のAチームを指揮するハンニバルの一人語りの体です。引き続きAチームのメンバーによる自己紹介に移ります。私が好きだったのは、チームのロジスティックを担当するフェイスマンの「俺はテンプルトン・ペック、通称フェイスマン。自慢のルックスに女はみんなイチコロさ。ハッタリかまして、ブラジャーからミサイルまで、なんでも揃えてみせるぜ!」でした。
 そして「俺たちは道理の通らぬ世の中にあえて挑戦する、頼りになる神出鬼没の『特攻野郎Aチーム』(ここだけ全員のセリフ)!! 助けを借りたいときは、いつでも言ってくれ!」と締めくくります。

 


 今のアニメやドラマは、1秒がとても大事だと聞きます。こうしたオープニングナレーションはもう時間の無駄とすら判断されているようです。そもそもサブスクで見るのが主流の今、OP曲すらスキップ対象。なんか寂しいですね……。


 もう、貴重なオープニングを“贅沢”に使う作品は生まれないのでしょうか。
 

 

TEXT:菊池雅之

 

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