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2025/06/24

昭和大好きかるた 時代を超えた普遍の良き「何か」を振り返る 第30回「ほ」

 

時代を超えた普遍の良き「何か」を振り返る

 

第30

帽子

 

 令和となってはや幾年。平成生まれの人たちが社会の中枢を担い出すようになった今、「昭和」はもはや教科書の中で語られる歴史上の時代となりつつある。
 でも、昭和にだってたくさんの楽しいことやワクワクさせるようなことがあった。そんな時代に生まれ育ったふたりのもの書きが、昭和100年の今、"あの頃"を懐かしむ連載。 

 第30回は、軍事フォトジャーナリストの菊池雅之がお送りします。

 

 

 

昭和キッズのたしなみ“野球帽”

 

 小学生の頃の私は、ジャイアンツのキャップ帽を被っていた。


 野球は嫌いではなかったが、熱血野球少年というほどでもなかった。地域のソフトボールに参加していた時期はあったが、野球に関しては、友人とちょっとキャッチボールをする程度。


 基本的に見る専門だった。でも、プロ野球のことは、友人たちと熱く語り合えるくらいにはきっちりチェックしていた。
 当時、中畑清選手の人気が高かった。それもマンガ化されるほどである。


 私はと言えば、原辰徳選手が好きだった。愛嬌の良さから助っ人外国人のウォーレン・クロマティ選手も皆に愛され、度々TVのバラエティ番組などに出演していた。
 子どもも大人もプロ野球に夢中になっていた。だから昭和の小学生は、プロ野球チームのキャップ帽を被る子が多かった。私だけが特別ではなかったのである。

 

思い起こすと、昭和時代のキッズ、特に男子は、ほとんどが贔屓のプロ野球球団のキャップ帽をかぶっていたように思う

 

 もちろん1番人気はジャイアンツこと読売巨人軍。


 かつての小学生は「巨人・大鵬・卵焼き」(*)が大好きと言われていたそうだが、それは私の世代ではない。ちなみに私が埼玉出身、いわゆる関東圏であるため、周りに阪神ファンは少なかった。

 

*「巨人・大鵬・卵焼き」:子どもたちに人気のあるものを列挙した昭和40年代の流行語。高度経済成長期を象徴するワードとして使われることが多い。筆者たちの子ども時代の昭和50年代〜60年代には全く使われていなかった。大鵬はとうに引退して、千代の富士そして貴乃花の時代が到来していたし、卵焼きはありふれたおかずになっていた。だが、巨人人気だけは健在だった。全盛期のクロマティ→原→中畑のクリーンアップは実に強力で、キッズたちを熱狂もしくは大落胆させた。

 

 

ボールは友だち!! キャップも友だち!!

 

 やがて『キャプテン翼』(*)が大流行となった。

 

*『キャプテン翼』:1981(昭和56)年に『少年ジャンプ』誌上で連載開始した漫画。作者は高橋陽一。2年後にはじまったアニメも併せて当時のキッズたちに爆発的な人気を呼び、連載終了時には日本の小学生のサッカー人口が倍になったという伝説を持つ。海外のキッズたちの心も熱くしており、フランスのジダンやエムバペ、スペインのシャビやイニエスタ、イタリアのトッティ、アルゼンチンのメッシ、ブラジルのカカなど、世界中の歴史に残るプレーヤーたちがファンだったことを公言している。


 するとゴールキーパーたちのご用達だったアシックスやプーマのキャップ帽を被る子が出だした。ミーハーな私もすぐに飛びついた。


 世の母親は、我々が「欲しい!!」とねだると「ダメ」と即答するのが常だが、私の母親は、帽子に関してはすぐに買ってくれた記憶がある。
 若林源三や若島津健たちが被っているのとおんなじキャップ帽は、プロ野球チームのそれよりもおしゃれでカッコ良かった。


 ただし、私はサッカー自体にはあまり魅力を感じなかった。ぶっちゃけて言うと、下手くそだった。
 今でこそ日本のサッカーは、ワールドカップで活躍しているが、当時は世界的にみてもあんまり強くなかった。そもそもJリーグもまだなかった時代だ。全国的に見ても、今ほどサッカー人気はなかったということなのか……。

 


 そして、中学に入ると、今度は一転、帽子を被ることがダサいと言われるようになった。
 これは、私の住む地域だけの話かもしれない。でも、髪型が気になりだす時期であるのも影響しているのだろう。


 今では、帽子を目深にかぶり、その上からさらにパーカーのフードを被る子を見かけるが、そのスタイルは当時にはなかった。そもそもそういったおしゃれ帽子はあまり売っていなかった記憶すらある。さらに「帽子を被るとハゲになる」という謎説もまかり通っていた。


 流されやすい私は、当然、この時期は、帽子の類は被らなかった。

 

 

帽子遍歴を経てたどり着いた5.11

 

 さらに時代は流れ平成となって、私は高校生になった。
 今度は、『SLAM DUNK』(*)の影響でバスケットボールのブームがやって来た。

 

*『SLAM DUNK』:1990(平成2)年から『週刊少年ジャンプ』で連載開始となった伝説のバスケ漫画。作者は井上雄彦。桜木花道と流川楓という圧倒的なオーラを放つメインキャラクターを三井寿や宮城リョータ、そしてゴリこと赤城剛憲といった魅力的なサブキャラが固めて、一致団結して勝利を目指すという王道の設定。当時のティーンエージャーたちはほぼ全員が熱中した。作中の彼らが「エア・ジョーダン」を履いていたことが、ナイキ・エアマックスブームに一役買ったとも言われている


 たちまち、チャンピオンの帽子、トレーナー、バスケットシューズなどが流行り出す。ここで私は久しぶりにチャンピオンのキャップ帽を被る。
 さらに大リーグ人気が出ると、ニューヨークヤンキースのキャップ帽も買った。

 

 こうして改めて私の帽子遍歴を追うと、やはり私はただのミーハーだったのか……。
 40歳を過ぎ、再びサバゲにハマった今現在の私が被っていのは「5.11」(*)。

 

*「5.11」:サバゲーマーはみんな大好き「5.11 Tactical」。ロッククライマーのロイヤル・ロビンスがはじめたアウトドアのアパレルブランドで、「5.11」は登山の難易度が極めて高いことを意味する専門用語。同社の製品がFBIアカデミーで使用されたり、『コール オブ デューティー:ウォーゾーン モバイル』をはじめとするゲームに登場したことで、品質の高さが知られるようになり、人気ブランドとなった。

 

 

さて、私が還暦を迎える頃にはどんな帽子を被っているのだろう。

 

 

5.11Tacticalをかぶって撮影に勤しむ筆者だが、コブラが鎌首をもたげている姿の方に気が取られてしまう一枚

 

 

TEXT:菊池雅之

 

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