2019/06/14
実銃の「射撃後の汚れ」を再現してみる
模型的アプローチで東京マルイグロック19をよりリアルに仕上げよう
トイガンに模型の塗装術を応用し、使い込まれた実銃の持つリアルさや凄みを表現する……そんなテクニックをご紹介していく本コーナー。今回はエアガン射撃では付着することがない煤汚れなどを追加することで実銃射撃後の状態を再現し、リアルな雰囲気を出してみよう。ベースガンは以前製作した東京マルイグロック19 サードジェネレーション・リアル仕上げカスタムだ。
■まずは実銃の射撃後の汚れ具合をチェック!
汚し加工にとりかかる前に、まずは実銃のグロック19をよく観察してみよう。参考にするのは本誌銃器ライター・SHINが所有するグロック19LAV。ここに掲載されているのは実弾を700発ほど撃った後の状態で、実銃らしくマズル周りを中心に装薬の燃焼後に発生するカーボン(煤)やオイルでかなり汚れているのが分かるだろう。ここではその理由も考えながら各部を見ていこう。
700発ほど実弾を射撃した後のグロック19LAV。マズル周りだけでなくスライドやフレームにもうっすらとカーボンの汚れが付着している
カーボンで汚れたマズル周り。これは銃口から弾丸を追って吹き出す装薬の燃焼ガスにカーボンが含まれているためだ。また、射撃時に高温となるためバレルとスライド内部に塗布された潤滑オイルが染み出し、銃口周りに付着しているのが分かる
フレーム下部も部分的にカーボンが付着
エジェクションポートとチャンバー周り。閉鎖状態では分かりにくいが、よく見るとカーボンやオイルで汚れていることが分かる。また、スライドが前後する度に強く押し付けられるバレル(チャンバー)上部もメロナイトの被膜が薄くなり始めている
実弾を発射した際に発生する汚れの多くは、通常分解を行ないオイルとブラシで簡単に落とすことができる。グロック19の場合スライドやバレルなどに耐食性と耐摩耗性を向上させるメロナイト仕上げ(化成処理により薄い酸化被膜を作る)が施されており、カーボンがこびり付いたりすることもなくメンテナンス性も高い
スライド内部には燃焼ガスに含まれているカーボンとともに、エキストラクターによって削り取られた真鍮製カートリッジケーシングのリム部分の削りカスが溜まっている。ハンドガンの内部のうち、スライドやバレルなどパーツが擦れ合う部分は粘度の高いオイルでコーティングされている
ウェザリングを施して実弾射撃後の状態を再現する
実銃の汚れ具合をひと通り確認したところで、さっそくトイガンに実銃のような汚れを施していこう。ベースガンは以前製作した東京マルイ グロック19 サードジェネレーション・リアル仕上げカスタム。ここでもスケール模型などに用いられる「汚し塗装(ウェザリング)」の技法を応用してみた。
■用意したツール&マテリアル
使用したマテリアルはシリコンオイル、タミヤウェザリングパステルのチャコールグレー、おがくず。筆は傷みやすいので使い古しのものを使うとよい。綿棒はパステルを伸ばすのに使う
■ウェザリング用ペーストを作る
塗料皿など深さのあるものにシリコンオイルを取り出す。周囲に飛び散らないよう、またミストを吸い込まないよう注意したい
取り出したオイルにウェザリングパステルを混ぜて着色する。粒子感を見ながら少しずつ加えるとよい
ケースの真鍮削りカスは、おがくず(木の削りカス)で再現。なお、おがくずはオイルを吸ってしまうので入れ過ぎに注意しよう
パステルとおがくずを入れたら調色スティックなどで攪拌しウェザリング用のペーストを作る。おがくずはパステルにより着色される
■各部にウェザリングを施す
資料写真を見ながらペーストを筆で盛り付けるように塗っていく
やり過ぎたらティッシュペーパーで余分を吸い取るように拭い取る。資料写真と比較しながら納得いくまで工程を繰り返そう
オイル分を含まないカーボン汚れはウェザリングパステルを直接付着させて再現。パステルを筆で擦り付けた後、綿棒で伸ばしたり余分を拭き取ったりして調子を整える
側面もかなりカーボン汚れが目立つ部分なので、同様にパステルで汚れを再現していく。今回使用したオイルとパステルは定着しないため、やりすぎたと感じたら洗い落とせるので気楽に納得するまで繰り返そう
■完成!!
ウェザリングにより実弾射撃後の実銃の姿を再現した東京マルイ グロック19 サードジェネレーション・リアル仕上げカスタム“Ver.3”。ガスブローバックガンは実銃や発火モデルガンとは異なりカーボンの汚れが付かないが、今回のようにウェザリングを施せば実弾射撃後の状態も再現することができるのだ
作例では射撃後の汚れが特に目立つマズル周りへのウェザリングを中心に行なった。シリコンオイルにパステルとおがくずを混ぜたペーストを塗布し、スライド前方には部分的にパステルを擦り付けて変化をつけている
アウターバレルにも少しペーストとパステルを擦り付けて、ホールドオープン時もリアルに見えるようにした
今回はエアガンにウェザリングを施すことで、映画のプロップガンのように実弾射撃後の状態を再現してみた。一般的な塗料とは異なり、シリコンオイルをベースに作ったペーストやパステルは拭き取れば落ちるので、元の状態に戻すこともできる。お手軽に実銃のリアルな雰囲気を楽しめるので、お手持ちのエアガンで試してみる、というのもアリだろう。
WARNING!
- トイガンの分解や塗装など、カスタム行為はすべて自己責任の上で行なってください。
- 本コーナーでご紹介する仕上げ術は、ある程度のトイガン分解および 模型製作の経験・知識があることを前提としています。
- トイガンの分解を行なうとメーカーやショップの保証は受けられなくなりますのでご注意ください。
実銃写真・解説/ SHIN
作例製作・解説/國谷忠伸
作例監修/毛野ブースカ
この記事は月刊アームズマガジン2019年7月号 P.88~93より抜粋・再編集したものです。