実銃

2025/06/21

世界を変えた軽機関銃「Breda Bren」チェコスロバキアの技術が生んだ実銃の真価に迫る

 

この1挺は戦うために作られてきた本物の銃だ。
数奇な運命に導かれ、今はこの日本という平和な地で静かに眠っている。
発射機構を排除され魂を抜かれても、その銃の魅力が廃れることはない。
時代と共に歩んだ歴史を、培われた技術体系を銃はその身を持って示してくれる。
その姿は銃に魅了された我々に新たなる知見をもたらすことだろう。
さあ、今回も無可動実銃のことを語ろう……。

 

 

チェコスロバキア発祥のイギリスで生み出されたLMG

 

 ブレンガンは1935年にイギリス陸軍が採用した、チェコのZB30軽機関銃をイギリス仕様に改造しライセンス生産した軽機関銃である。「ブレン」の名前の由来は、チェコ側のブルーノ造兵廠と英国側のエンフィールド王立造兵廠の頭文字を合わせたものだ。

 初期型のMk.1はZBシリーズとほぼ同様の外見を持っていたが、第二次世界大戦でのダンケルク撤退時に大量のブレンが放棄されたことから量産に適した簡易生産型のMk.2へと発展。最終的には戦時中にMk.4まで改良された。

 

バレルテイクダウンレバーは上方に回転させるだけでバレルが着脱できることからバレル交換に手間が掛からず射撃中断の時間を短縮できる

 

レシーバー上部に挿入されるマガジンは緩やかなカーブを描く.30-06弾専用。独特のシルエットを生むブレンガンを象徴する箇所だ

 

 ZBシリーズとブレンガンにより、世界最大規模のLMGの勢力を産み出したが、チェコが社会主義政権になったことでZBシリーズとは完全に袂を分かつことになる。LMGがベルトリンク方式に発展していく中でブレンガンは堅固な造りと高い信頼性により、21世紀の現在でも一部の旧英領諸国では使用されている。ブレンガンは、まだまだ今後も我々が目にする機会がある20世紀が生んだ最高のLMGなのである。

 

 

ブレダブレン軽機関銃

  • 全長:1,073mm
  • 口径:.30-06
  • 装弾数:30発
  • 価格:¥330,000
  • 商品番号:【9169】

 

 

第二次大戦後も普及したLMG

 

 これまでに製造されたLMGの中で最も地位を確立したブレンガンは、第二次世界大戦中の1941年、生産性を向上させるためMk1からMk2に改良されている。変更箇所はリアサイトがドラム調整型から折り畳み式のラダーサイトとなり、マズルハイダー、フロントサイトベース、ガスブロックが別体のパーツとなった。光学機器のマウントベース、コッキングハンドルの折り畳み機能、バイポッドの伸縮機能も廃止されたが、性能が落ちることはなかった。

 

 またストックからショルダーレストやサポートハンドルも廃止され、木部の形状も単純化された。生産性を向上するために機械加工の工程が単純化され、肉抜き箇所が減ったことからMk.1に比べて約500g重くなっている。エンフィールド以外にもカナダなどの工場でも製造され、第二次世界大戦に参加したイギリス領諸国の標準LMGとなった。

 

サイトダイヤルが廃止され、加工工程の省略により側面がフラットになったレシーバーは、シンプルでMk.2とすぐに判別できる

 

ストックのバットプレートは一枚の金属板を加工し上部に膨らみを持たせた固定式ショルダーレストを装備した簡素な造りだ


 イギリス連邦加盟国ではないがイタリアのパルチザンにも空中投下で渡され、第二次世界大戦の後半にはイタリア南部の共同交戦軍にも支給され、戦後のイタリア陸軍でも使用され続けた。戦後はアメリカの支援で冷戦の最前線を担い、大量に入手したアメリカやイギリス製の兵器のライセンス生産も国内で行なわれ始め、LMGは第一次世界大戦から第二次世界大戦を通しイタリア軍の大砲や航空機用の機関銃や歩兵用機関銃などを生産した大手兵器製造メーカーのブレダに託され1959年から製造を開始している。

 

 この前年の1958年にはイギリスのブレンガンも7.62×51mm弾仕様のL4に変更されているので、時期的に足並みを揃えたものであろう。ブレダ製のブレンガンは口径.30-06弾、イタリアでは準軍事警察のイタリア国家警察公安警備隊用に製造され、1970年代半ばまで国内のインフラ警備やテロ鎮圧で使用されるなど抑止力の象徴として使用された。その後は5.56mmNATO弾に変更されたことでFN MINIMIが採用されブレダ製のブレンガンの役割は終了している。

 

リアサイトはレシーバー中央に配置され、サイトピープが左側に張り出したラダーサイトだ。不要時には畳んで収納も可能だ

 

グリップは本体に対してはやや小ぶりだ。LMGながらも命中精度の高さからセミオートポジションも設けられている

 

 

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TEXT:IRON SIGHT

 

この記事は月刊アームズマガジン2025年7月号に掲載されたものです。

 

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