2025/06/06
オールドモデルガンアーカイブ:度肝を抜かれたシューティングカスタム 02
オールドモデルガンアーカイブ
度肝を抜かれたシューティングカスタム
1950年代末から1960年代初めにかけての最初のトイガンブームの頃から、射撃用のトイガンは存在した。そしてモデルガンが生まれ、安全基準が作られ、弾の飛ばない射撃用の銃も作られた。そんなモデルガンの黎明期からプラスチック全盛期に掛けて発売された射撃用銃には、実に驚きに満ちたモデルが存在する。今回はそんなシューティングカスタムとも呼ぶべきモデルガンから、多くの人が度肝を抜かれたモデルをピックアップしてみた。
MGC
PPCヘビーバレルカスタム・シリーズ


MGC 44マグナムPPCヘビーバレルカスタム メーカー:MGC ※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。 |


MGC コルト パイソンPPCヘビーバレルカスタム メーカー:MGC ※寸法などのデータは当時のメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。 |
PPCは「プラクティカル・ピストル・コース」の略で、もともとはFBIで開発された捜査官や警察官向けの実戦的な射撃技術向上のためのトレーニングをベースにした射撃競技のこと。警察関係者の出場者が多かったことから、プラクティカル・ポリス・コースと呼ばれることもあるという。
1980年、日本における銃器界のカリスマ、イチローさんが旧Gun誌で競技や専用の銃などを紹介し、自身最上位のグランドマスターに上り詰めたこともあり、人気が爆発した。そしてカスタムガンの使用が可能なPPCマッチで使われる銃に多くの人が度肝を抜かれた。日本人の銃のイメージから大きく外れるほどの、偉容とも呼べるようなそのスタイルは強烈なインパクトがあった。
当時、日本ではモデルガンが一般的だったので射撃に関しては試しようがなかったが、カスタムガンなら真似できそうだった。プラスチックモデルガンが主流となり、コンバットシューティングが人気で、コンバットシューティングカスタムも注目を集めていた。1979年にはMGCが「第1回カスタム祭り」を開催している。しかし、1911オートやM59など似たようなカスタムが多く、ややマンネリ化の傾向もあった。
そこへとんでもない超弩級のカスタムが、それもリボルバーで現れたものだから、一気に話題が沸騰した。
その機を逃さず、すぐにカスタムモデルを投入したのがMGCとコクサイだ。どちらもイチローさんのアドバイスがあったという。ただコクサイはイチローさんとアドバイザリー契約を結んでいたことから、資料提供や実銃の取材などが可能だったのに対して、MGCはそれができず、独自に資料を集めるしかなかった。
しかもMGCは純粋なカスタム扱いで、社内でもカスタムを手がける部署、MCW(MGC・カスタム・ワークス)で作ることになった。実銃の世界で言えば、S&WのPC(パフォーマンス・センター)のようなものか。
実際のPPCマッチではS&WのKフレーム・リボルバーが主流だったものの、当時プラスチックモデルガンはどこも作っておらず、もちろんMGCにもなかったことから、まず、ごくまれに実銃でも使用者がいるというパイソンがベース銃に選ばれた。しかし結局S&Wリボルバーも出さなければということで、苦渋の選択としてNフレームの44マグナムM-29もベース銃に選ばれた。
発売されたのはパイソンベースがバレル長違いで3種類、M-29ベースがバレル長違いの2種類と、6.5インチラウンドバレルを合わせて3種類の、合計6種類。
見た目のデザインがド派手なのはもちろん、その重量感が多くの人の予想をはるかに超えていた。最大で1,220g ! しかも超トップヘビー。知らずに持つと落としそうになるほど重い。まさに度肝を抜かれる。
バレル上のアリストクラットタイプのサイトリブは新たに金型を起こした。そのとき作られたフルアジャスタブルのボマーサイトは、その後ほかのモデルでも使われることになる。
それ以外のバレルやウエイトなどは、素材のブロックを切削加工して作られている。正真正銘の限定カスタムで、ローズウッドグリップ、特製ガンケース、ネームプレート、カスタムカーリッジ、アクセサリードライバー、スピードローダーなどがセットで発売された。






※モデル名などは、基本的にはメーカー表記に準じていますが、メーカー自身の表記にも揺らぎがあるため、本稿ではその時に参考にした資料に従って表記し、あえて統一していません。
TEXT&PHOTO:くろがね ゆう
この記事は月刊アームズマガジン2025年7月号に掲載されたものです。
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