実銃

2025/04/25

なぜヨーロピアンタクティカルライフルを選ぶのか?「ヨーロピアンタクティカルライフルの基礎知識」

 

 

〜なぜヨーロピアンタクティカルライフルを選ぶのか?〜

 

 現在のアサルトライフルはM4カービンを筆頭にしたAR15系/HK416系か、AR15のインターフェースを流用しつつガスピストン方式/モノリシックレシーバー/アンビコントロールレバーを採用したSCARやMCX、自衛隊の20式5.56mm小銃系、そしてAKシリーズの3つに大別できる。特にAR15系/HK416系の影響力は大きく、近年AKシリーズにおいてもAR15系/HK416系の影響を受けて改修されている。

 

 1970年代以降から1990年代にかけてNATO(北大西洋条約機構)の加盟国では各国がアサルトライフルを独自に開発していた。代表機種はドイツはG3(東西統一後はG36)、イギリスはL85、フランスはFA-MAS、オーストラリアはステアーAUG、ベルギーがFNC、イタリアがベレッタAR70/90、強いて言えば自衛隊の89式5.56mm小銃もある。いずれも統一弾薬(SS109=5.56mm×45弾)を使用する以外の共通項はほとんどないといっていい。現在ではすっかり廃れてしまったブルパップスタイルがもてはやされたのもこの時代だ。

 

 先ほども述べたようにAR15のインターフェースを流用するということは操作方法が共通で扱いやすいという一方、没個性的で端的に言えば「どれも一緒」である。それに対して先述した各国のアサルトライフルは形状や操作方法が異なっている。特にL85やFA-MAS、ステアーAUGといったブルパップは操作方法がすべて違う。多くのアサルトライフルを操作してきた私でも、L85とFA-MASの操作方法はよくわからない。開発された当時は「違い」があることがよかったかもしれないが、現在の視点では歓迎すべきことではない。自衛隊が独特なセレクターレバーを持つ89式5.56mm小銃から、一般的なセレクターレバーを持つ20式5.56mm小銃にしたことからも、できるだけ「違い」を排除して世界基準であるAR15のインターフェースに近づけたほうが無難であると判断したのだろう。

 

 AR15系/HK416系とヨーロッパ製アサルトライフルのインターフェースの違いで最も顕著なのがセレクターレバーやマガジンキャッチ、ボルトリリースレバーといったコントロールレバー類の位置と操作方法だろう。そこには各国の設計思想と時代背景が反映されており、1990年以前は今では当たり前になっているレディポジションからセーフティを解除して素早く撃ったり、利き手から利き手ではないほうに銃を持ち替えるショルダースイッチといった撃ち方は考慮されていなかった。しかし、セレクターレバーを確実に切り替えたり、マガジンをしっかり保持するなど、操作性よりも確実性が優先されていた。また、AKシリーズと同じヘッケラー&コックやSG550が採用したセンターレバー式のマガジンキャッチは左右どちらからでも操作でき、そういった意味では利き腕を問わず使用できた。AR15系/HK416系と比べるとデメリットが目立ってしまうが、メリットもあることを忘れてはいけない。

 

 全体のフォルムについても、かつてのヨーロッパ製アサルトライフルは個性的だった。現在のAR15のインターフェースを持つAR15系/HK416系、SCARやMCX系はフォルムが似通ってしまい、パッと見では違いがわからないこともある。ヨーロッパ製アサルトライフルは共有性という点では劣っているが、個性的という点では評価できる。マガジンはAR15系/HK416系、SCARやMCX系はAR15用マガジンが共用できる。しかし、かつてのヨーロッパ製アサルトライフルは機種ごとに異なっており弾薬は共有できてもマガジンは共用できない。各国のアサルトライフルを所有している場合、それぞれに対応したマガジンだけではなくマガジンポーチも専用品を用意しなくてはならない。

 

 現在のアサルトライフルはレールシステムやM-LOKなどのアクセサリーマウンティングシステムを採用することで汎用性が高められている。しかし、かつてのヨーロッパ製アサルトライフルは汎用性が低い。これは開発された時代もあるので仕方がない。汎用性を高める(というよりAR15系/HK416系に近づける)ためにレールシステムやマウントベースを後付けしてモダナイズすることが主流となっている。今回の特集はそうしたモダナイズされたエアガンを中心にピックアップしている。

 AR15系/HK416系、SCARやMCX系が主流の現在において、ヨーロピアンタクティカルライフルはデメリットは多いものの「他人とは異なる銃が持ちたい」という方にベストな選択だろう。

 

ヨーロッパ製アサルトライフルが多く採用しているセンターレバー式のマガジンキャッチ。素早いマガジンチェンジには不向きだが、左右どちらからでも操作でき、マガジンが確実に保持される

 

ヘッケラー&コックのG3やHK33はセンターレバー式とボタン式が併用できる。ただしボタン式はAR15/M4系のようにトリガーフィンガーで操作するのはちょっと難しい

 

ブルパップスタイルのアサルトライフルは素早いマガジンチェンジには向いていない。ステアーAUGのマガジンキャッチははマガジン後方にあり、独特な操作方法が求められる

 

G3/HK33系のセレクターレバーは操作角度が大きいため、グリップを握った状態でセーフ(S)からフル(F)に切り替えるのは少々難しい

 

FALはセーフ(S)からセミ(R)の切り替えは素早くできるが、フル(A)へはセミの位置から180度回転させなくてはならない

 

1990年代に開発されたG36はグリップを握ったままグリップっハンドの親指だけで切り替えられる

 

 

TEXT:毛野ブースカ


この記事は月刊アームズマガジン2025年5月号に掲載されたものです。

 

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