2019/05/07
実銃解説!特殊部隊の「スナイパーライフル」
銃器の世界において、スナイパーライフルは近年でもっとも進化が起きている分野である。より遠距離にある敵を、より正確に撃ち抜くため、より強力な弾丸を使用するモデルが生まれ、その運用テクニックも急激なスピードで進化している。今後のスナイパーライフルは速射性と遠射性を併せ持つセミオートスナイパーライフルと、より強力で1,000mを超える長射程弾薬を使用するボルトアクションライフルに二分されていくだろう。
CSASS(コンパクト・セミオート・スナイパー・システム)プログラムを勝ち抜きアメリカ陸軍に採用されたM110A1 CSASS。ドイツ軍のスナイパーライフルG28がベースだが軽量化されている
Mk17やMk20 SSRから派生したプレシジョンライフルがSCAR20Sだ。口径は7.62mm×51、ショートストロークガスピストン方式、20インチバレルを採用している
セミオートスナイパーライフルは、その自動発射機構のためボルトアクションライフルに比べて強力な弾薬を使用することができない。そのためアメリカ軍をはじめ多くのスナイパーユニットでは現在主流の7.62mmNATO弾よりも優れた弾道係数を持つ6.5mmクリードモア弾のような、ライフル自体の大きさと重さは変化させず、より遠距離まで安定して飛ぶ弾薬の選定を行なっている。対してボルトアクションライフルは、.300Winマグナムや.338ラプアマグナムなど、セミオートスナイパーライフルでは使用できない大型で強力な弾薬を使用するモデルが多く生まれてきている。
異なる口径に変換可能なマルチキャリバーのボルトアクションスナイパーライフルを求めるUSSOCOMのASR(アドバンスドスナイパーライフル)プログラムに提出されたアキュラシーインターナショナルのAXMC。想定射程は1,500m以上、口径は7.62mm×51、.300並び338 Norma Magnumが指定された
新たにデザインされたレバー型アンビ2ポジション・マニュアルセーフティ(従来型3ポジションも装着可能)がトリガー上部に配置されている
右側に折りたたまれるサイドホールディングストックはチークピース、バットプレートのポジション、アングルを任意に調整できる
これらスナイパーライフル自体の進化とともにスコープの倍率、レティクルデザイン、銃や姿勢を安定させるための新型トライポッドやバイポッドなど、周辺機器でも進化は広がっている。そして運用するためのスナイパーテクニックは10年前のものとは全く異なっている。わずか数年前のテクニックやアイテム、そして銃器が瞬く間に古いものになってしまっている――それがスナイパーの世界である。
解説:SHIN
PHOTO:Yasunari Akita
この記事は月刊アームズマガジン2019年6月号 P.44~45より抜粋・再編集したものです。