2024/10/23
.44マグナムの普及に一役買った銃たちとその射撃性能「RUGER .44MAGNUM」【後編】
RUGER .44MAGNUM
.44マグナムといえばS&W モデル29 が真っ先に思い浮かぶ…のは日本での話だ。米国のシューターにとって、.44マグナムといえばスタームルガーとなる。スーパーブラックホークやレッドホーク、さらには.44マグナムカービンなど、幅広い製品を展開して.44マグナムの普及に努めたのは、スタームルガーだからだ。
実射
たぶん読者が気になるのは、.44マグナムとはいえハンドガン、カービンではどれだけMVが異なるのか?ということだろう。次の表を見ていただこう。あくまでもカートリッジよりけりだが、マズルエナジー(Muzzle Energy:ME:初活力)で1.3-1.5倍の違いがあり、これは無視できない威力差だ。
現在、入手できないファクトリーカートリッジもある。この表のデータは1から5までは1990年代にルガー.44カービンを用いてテストした結果なのだ。一方、AとBは今回、新たにリロードしたカートリッジによる結果だ。
ネットには時々、「.44マグナムカートリッジを44マグナムカービンで撃つとジャムるがどうしたらいいか?」といった質問があり、回答として燃焼スピードの遅いパウダー(発射火薬)を多めにチャージすれば解決するという解答が見受けられる。しかし、筆者はこれまで市販.44マグナムカートリッジでジャムったことがない。確かにハンドガンカートリッジ用のパウダーは速燃焼のパウダーが多いことは事実だが、.44マグナムには当てはまらない。リローディングマニュアルデータを見ればこれは判る。
ファクトリーカートリッジ製作側もブレット重量に合わせ、適正なパウダーの選択とチャージ量を決めている。まして銃製造元のスタームルガーにしても、市販されてるすべての.44マグナムファクトリーアモをテストし、ガスポートの径なども決定したはず…筆者の.44マグナムリローディングの場合、既に述べたようにメタリックシルエット競技用が前提で始めたものなので、240grより軽いブレットを使うことはまずなかった。
当然パウダーのチャージ量も赤線を超えた付近のもので、撃ってみてケースのエキストラクションの度合いも考慮、パウダー量を決めたものだ。なぜならスチールターゲットに当たってもこれが倒れなければポイントにならないからだ。特に200m先のラム(羊)ターゲットは25-30㎏ある。雨でぬかるみとなると台座とスチール足の間に粘土が入り、接着剤の役目を果たしており、弾のエネルギーに余裕がないと倒れないことがある。
今回はA、Bの2種類をリロードした。普通、.44マグナムに軽量弾は使わないのだが、何が理由か昔、購入したSierra 180gr JHPがあったので、Aはウインチェスター296を26.6grチャージした。Bは従来通りの240grで、H110を25grとした。リボルバーにパウダーチャージからくる作動上の問題は、ケースの張り付きぐらいだ。
今回、A、B共にレッドホーク、44マグナムカービンともに作動の問題は一切なかった。グルーピングのテストは距離50ヤード(45m)としたが、180grがダントツに良かった。エネルギーではライフル弾である.30-30Winに迫るものがある。ましてや.30-30にはない240-300grの重量級ブレットが使える。
銃そのものの重量は2.8㎏、スコープをつけても3.5㎏内に収まる。全長は945mmで小回りが利く。距離150m以下ならという但し書きがつくが、ヘビーヒッターとして期待できる。リコイルはそれほどではなく、連射もコントロールできる範囲だ。ハベリーナ(イノシシ)、野豚、または中型ディア(鹿)猟に適しているといえる。
眼となるサイトだが、ダットサイトもいいが今回、装着したMarch1x-10x24mmならダットサイトとしてもスコープとしても使える。ここまで書いて、日本じゃ.44マグナムは所持できるのかどうか?と疑問に思った。そこで実際にライフルを所持している松尾副編集長に.44マグナム所持の件で聞いたところ、日本じゃ口径のサイズオーバーで不可能だという。
しかし、.357マグナムのレバーアクションライフル所持はOKということらしい。実際に.357マグナムのライフルを所持している人もいるそうだ。但し、ファクトリーアモは輸入されていないので、100%リロードだという。
近年、リローディングの本場米国でもコンポーネントが高価になり、リローディングしても採算が合わないという話を聞くようになった。しかし最近、アモが更に高価になり、若干割安なリローディングに踏み切るか、または射撃を止めて銃を眺めて楽しむか?いずれその選択をせざるを得ない状況になっていくのではないかと思う。
数年前まで考えられなかったことが現実になってきた。米国なら誰もが射撃できたが、いずれ特定のエリートのみが射撃を楽しむことができるようになってしまうかもしれない。そうなると“射撃を楽しむのは貴族だけ”という、かつてのヨーロッパのような事にもなりかねない(苦笑)。そうならないことを願うが…。
Photo&Report:Gun Professionals テキサス支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年2月号に掲載されたものです
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