実銃

2024/08/16

【実銃】蛇の名前を冠したコルト初の.44マグナムリボルバー その射撃性能「COLT ANACONDA」【後編】

 

COLT ANACONDA

 

 

 2021年、かねてより復活が噂されていたアナコンダ .44マグナムが復活した。かつてのアナコンダとは全く異なり、新型パイソンと同じメカを持つ完全ニューモデルだ。アメリカでは発売と同時に売り切れ、現在ではプレミア価格でなければ手に入らないこの新型アナコンダを、チェコ共和国で取材した。

 


 

アナコンダ6 ”(上)とパイソン6 ”(下)を並べて比べてみた。全体的な長さはあまり変わらないが、アナコンダには大幅にマッチョな雰囲気が漂う。これが.44と.357の違いだ

 

 空撃ちでシングルアクションとダブルアクションを試してみた。元々パイソンのシングルアクションは評判が良かった。そのため新型パイソンでも大きな違いは感じない。まずはひと安心だ。ここでシングルアクションがダメだと困ってしまう、そして続いてダブルアクション…。

 おおっ!これは全く別物だ。S&Wのダブルアクションとは違う。いや、S&Wより良いではないか!(少なくとも筆者にはそう感じられた)。ファクトリーグレードを超えて、カスタムメイド、マッチグレードのリボルバーのようだ。

 

COLT PYTHON 6 ”
全長:292mm
バレル長:6インチ
重量:1,320g
使用弾:.357マグナム
装弾数:6発
材質:ステンレススチール
仕上げ:セミブライトステンレス

 

 セミオートに比べればリボルバーの射撃経験は少ないものの、ドイツで盛んなPPCマッチ用のカスタムなどを何度も経験しているので、ハイエンドのダブルアクショントリガーのスムースさは知っている。正にそれと並ぶほどの仕上がりだ。ある意味こんなに素晴らしいダブルアクションだと、パイソンではないみたいだ。

 

パイソンにはウォルナットのターゲットグリップが標準装備だ。この組み合わせがパイソンなのだ。往年のパイソングリップとは少しデザインが変わっている。原稿を書きながら我慢できず筆者のパイソン4インチを引っ張り出して眺めてみた。やっぱり昔のパイソンの方が見た目の風格がある

 

 こうなるとアナコンダへの興味も余計に沸いてくる。事前情報から、新型アナコンダはパイソンと同じメカニズムと聞いている。パイソンに比べ一廻り大きく、太った銃という印象のあるアナコンダ。ずっしりとしたその重量から、.357マグナムとは違うのだと覚悟させられる。グリップもあらかじめHOGUEのラバーグリップが装着されている。パイソンは木製グリップだ。

 

外観上、アナコンダとの違いは大きさとグリップ、そしてバレルの刻印だけだ

 

 先に言っておかなくてはいけないことがある。基本的にマグナムは嫌いだということだ。理由は簡単。手が痛いから。その強力なリコイルは、ただただ痛い。.357マグナムもできれば撃ちたくない。それでもパイソンは大好きだ。だからこれを撃ちたいときは.38スペシャルで楽しむ。

 

スイングアウトしたシリンダーには、アナコンダと同様にシリアルナンバー、口径が刻印されている。ラチェット&ステム(エジェクター)の形状も同じだ

 

 時にはマグナムを撃たなければと箱で弾を購入しても、結局数発撃って後は持ち帰り、そのままいつ撃つかも知れず、自宅に保管されるだけとなる。そのようなわけで、日常的に撃つ.223Remや9mmパラベラムは自宅保管の弾を切らしてしまうことがあるけど、.357マグナムは常に家にあるという状態だ。.357マグナムですら、そうなのだから、.44マグナムは率先して撃つことはない。

 

マズルのデザインもアナコンダと同様、ステップドクラウンだ

 

 とはいえ、当然のことながら、ここでは覚悟を決めてアナコンダを撃つ。迫力のアナコンダ8インチを手にして構えてみると、これがまた不思議で自分が強くなった気になる。まさにハリー・キャラハンになった気分だ。25m先にはメタルのプレートがあるだけなのに、それらが悪人に見えてくる。.44マグナムのリボルバーには不思議な力が備わっていると実感した。思わず歴史に残るハリー・キャラハンの名セリフが頭に浮かぶ…

 

オリジナルのパイソンの印象を崩さず、その欠点を改良した新生パイソン。アナコンダとの違いはもう1カ所あった。新型アナコンダのトリガーはワイドだが、新型パイソンはスリムタイプだ。新型パイソンのメーカー希望小売価格もアナコンダと同じ、$1,499となっている

 

 シングルアクションから射撃する。約1.7㎏というその重量と手に吸い付くホーグのラバーグリップのおかげで、撃てばマグナムの強力なリコイルは感じるものの、それほど手は痛くならない。意外と快適だ。

 

 続いてダブルアクション。.357マグナムよりもはるかに大きな.44マグナムの弾をフル装填した大きく重いシリンダーを、スムースな動きで軽々回転させ、滑らかにハンマーが前進、轟音とともに銃が跳ね上がる。トリガーが滑らかで、切れる瞬間が分かりやすいという事は安定した射撃へ繋がるのだ。

 

並べられたコルトのリボルバー。CZではスポーツハンドガンという位置づけで同じレンジにはCZ Shadow2などが並べられた。もちろん銃の横にある弾は空になると次から次に出てくる

 

 .44マグナムとなれば、巨大なマズルフラッシュを期待して、それを捉えてその迫力をお伝えしたい、と思うのだが、今回はマズルフラッシュがほとんど見えなかった。まあ、マズルフラッシュというものは、そのカートリッジ(使用する火薬)によって違いがあり、巨大な火炎を吐き出す場合とそうでもない場合があるのだが、今回使用した、チェコのSellier & Bellot(セリエ&ヴェロー)のマグナムは後者なのだろう。

 

レンジマスターがうるさくて銃に弾を入れると思うように撮影させてくれない。でもこの写真を撮らないとね。リボルバーなんだから

 

 .357マグナムでも同様だ。パイソンは、フォーシングコーンとシリンダーの隙間、いわゆるシリンダーギャップから豪快に炎が噴射している写真が撮れればと思ったのだが、肩透かしを食らった。

 

 弾にもよるが、筆者のパイソンで射撃をすると、銃を握る手が炎に包まれるのを撃っている本人がわかるほど噴き出す。手も少しだけ熱さを感じる。そんなシリンダーギャップの多いパイソンは初期型から中期型で、後期型はシリンダーギャップも適正になった。当然のことながら、新型パイソンも適正になっているし、アナコンダも同様だ。

 

かつてのS&Wマグナムリボルバーはリセスドシリンダー(カウンターボアード)だった。当時、コルトはそのような加工は採用しなかった。新型も同様だ。リセスドシリンダーは見た目が美しく、リムの形状や厚さ違いでシリンダーの回転に不具合が出る可能性を排除するという利点もある。しかし、その後にS&Wは製造工程の簡略化でこれを省略し、現在に至っている

 

 今回はCZミーティングという事で、筆者ひとりではなく、多くのジャーナリストやYouTuberなどが参加している。そのためルールは厳格に守らなければならず、マズルより前にカメラを持って行けない。個人でメーカーを訪れて撮影しているのとは勝手が違う。

 

1発ずつ.44マグナム弾を装填していく。写真くらいにちょうど弾頭部分がシリンダーに入ったら指を放す。そうすれば自重でシリンダーに収まる。最後にリムの当たる"コトッ”という音もリボルバーの魅力だ

 

 同様にサイドプレートを開いて、内部メカを撮影することもできなかった。松尾副編集長からは、できればサイドプレートを外した状態を撮って欲しいとリクエストがあったのだが、今回は無理だった。こればかりは仕方がない。

 

エクストラクターロッドを押して空薬莢を押し出す。これもまたリボルバーならではのアクション。ここではできなかったけど、舗装路などに空薬莢が落下する音もたまらない

 

 今回のCZミーティングでは良い経験ができた。まさか、コルトの最新モデルをチェコで撃つことになるとは! .44マグナム自体、前述した通り好んでは撃たない。こういったきっかけがないと撃つことはないのだ。それだけに、久々に撃った.44マグナムはある意味で新鮮だ。

 

 1955年以来続いているS&Wモデル29系ではなく、コルトの最新モデルであるアナコンダは、その進化ぶりが素晴らしい。ストライカーファイアのセミオートとか、ハンマーファイアのセミオートとは明らかに違う、リボルバーの魅力を再認識した。射撃した感覚がダイレクトに伝わってくるのだ。その上にスムースなダブルアクションなので、さらに快適に感じる。

 

.44マグナムと言えば派手なマズルフラッシュ…というイメージがあるが、マズルフラッシュ自体もわずかでこの写真のようにほんのり見える程度だ。シリンダーギャップも適正でわずかに見える程度

 

 もし『ダーティハリー』をハリウッドでリメイクするなら、今度はハリー・キャラハンにアナコンダを持たせてみてはどうだろうか。迫力満点となること間違いなしだ。しかし現代のサンフランシスコで活動する刑事が、ロングバレルの.44マグナムリボルバーを持っているという設定は、現実には無理があり過ぎる。

 

 この半世紀、銃の世界は大きく変化した。リボルバーが法執行機関の装備であったのは1980年代までのことだ。そうなるとハリー・キャラハンと.44マグナムの組み合わせで現代を舞台にしたリメイクはあり得ないということになる。

 

 

いつも手伝ってくれるミカエルは銃の知識は素晴らしいが、射撃はそれほどの経験がない。ましてやリボルバー、マグナムというと初心者に近い。その巨大なリコイルをうまく逃がすことが出来ず射撃の度に保持している手をグリップし直さなければならない。そんな彼が撃つとかなり跳ね上がる。8インチと6インチとではこのくらい違う。6インチだとほぼ垂直までマズルライズとなった。それでもラバーグリップのおかげで手は痛くならない。ウォルナットグリップのパイソンの方が鋭いリコイルと感じる。
マグナムだけでなく、フルオートマチックを射撃するときもそうだが、リコイルは腕で受け止めるのではなく体全体で受け止めて足から地面に逃がしてやる。そうすればかなり抑え込むことができるし、銃をコントロールすることができるのだ

 

 6インチや8インチのマグナムリボルバーは、もはやハンティングか、射撃専用、あるいは観賞用だ。ヨーロッパではピストルによるハンティングは行なわれていない。そうなると、現実問題として新型アナコンダの需要はかなり限られてくる。CZが今後、アナコンダをヨーロッパ市場でどのように展開していくのか、注目していきたい。

 

Photo&Report:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年2月号に掲載されたものです

 

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