実銃

2024/08/15

【実銃】蛇の名前を冠したコルト初の.44マグナムリボルバー「COLT ANACONDA」【前編】

 

COLT ANACONDA

 

 

 2021年、かねてより復活が噂されていたアナコンダ .44マグナムが復活した。かつてのアナコンダとは全く異なり、新型パイソンと同じメカを持つ完全ニューモデルだ。アメリカでは発売と同時に売り切れ、現在ではプレミア価格でなければ手に入らないこの新型アナコンダを、チェコ共和国で取材した。

 


 

COLT ANACONDA 8"
全長:381mm(注1)
バレル長:8インチ
重量:1,672g
使用弾:.44マグナム
装弾数:6発
材質:ステンレススチール
仕上げ:セミブライトステンレス

注1: コルトの資料では全長(OAL)15”となっており、これだと381mmになる。しかし、こんなに長いとは思えない。全長はおそらく350mmぐらいのはずだ

 

 映画『ダーティハリー』が公開されてちょうど50年が経過したという。『ダーティハリー』といえば、筆者にとって一番印象に残っているのは1973年の『ダーティハリー2』(Magnum Force)だ。法の網を潜り抜けて街にはびこる犯罪者を、自らの手で次々と処刑していく暗殺集団とハリー・キャラハンの対決の物語。

 

 S&Wモデル29 .44マグナムを使うキャラハンに対し、敵グループが使うハンドガンが、あろうことかコルトパイソンと来た。S&Wモデル29 vs.コルト パイソン、これぞ、“伝統の一戦”だ!もっともこの映画、筆者は年齢的に日本で劇場公開された1974年に観たわけではない。ずっと後になってテレビ放送されたときに観た。読者の方にもそういう方は多いだろう。

 

1990年に登場した旧アナコンダは、バレルバリエーションとして、4インチ、6インチ、8インチがあった。2021年の新型は6インチと8インチのみで4インチ仕様はない。現代において、.44マグナムリボルバーの需要は、ハンティング用か、ターゲットシューティング用、あるいはコレクション用に限られる。いまさらデューティガンとして.44マグナムを選ぶユーザーはいない。となれば、4インチをラインナップしなかったのは妥当な判断だと思う。旧アナコンダには.45ロングコルト仕様もあったが、新型は現時点で.44マグナムのみとなっている

 

 コルト パイソンと言えば、『ルパン三世』のTV第2シリーズ、第66話の『射殺命令!! 』が忘れられない。この回で登場した暗殺者は、コルトパイソンに強力な破壊力を持つダムダム弾を使用した。これをテレビで観た日、筆者は興奮して寝付けなかった。強烈にコルト パイソンが少年時代の筆者の心に刻み込まれたのだ。あの時のことを今でも忘れることができない。その結果、筆者が現在一挺だけ所有するリボルバーはコルトパイソンとなっている。

 

Coltロゴ入りのHOGUE製ラバーグリップを標準装備だ。この銃はコレクターズアイテムではなく、実用に供することを想定して製品化されたことを示している。.44マグナムのリボルバーなら、固いウッドグリップではなく、リコイルショックをある程度吸収してくれるラバーであるべきだ。旧アナコンダもグリップはパックマイヤー製でコルトメダリオン付きのラバーグリップが標準装備だった

 

 それにしても記憶に残る映画やドラマで、パイソンはいつも悪者、敵方のリボルバーというのがちょっと残念だ(現実にはそんなことはないのだが…あくまでも“個人の感想です”)。いつも正しい側が持つ銃は決まってS&Wのリボルバーなのだ(そんなこともないのだが…こっちも“個人の感想です”)。そんな大好きなコルト パイソンが製造終了となったのが2005年。一つの時代が終わったと感じたものだ。

 

新型アナコンダ 8 ”はデカくて長い! S&Wには.44マグナムのフルラグ8インチクラス仕様は現時点でラインナップされていない。このド迫力はアナコンダだけのものだ。(もっとも.500S&Wマグナムや.460S&Wマグナムならフルラグの8.38 ”がある)

 

2020年に復活したパイソン

 

 しかし、パイソンは2020年に復活した。ステンレス製のみ、という部分がちょっと残念だが、メカニズムも見直されて21世紀のパイソンとして甦っている。そして2021年、その.44口径版というべきアナコンダまでもが復活したというではないか!

 

 実際の話、この新しいアナコンダどころか、新型パイソンですら、フランスには輸入されていない。少なくともフランスのガンショップでは見掛けない。アメリカ国内の需要を満たすので手一杯ということか…

 

バレルのデザインは、大きさと刻印以外はパイソンと同じだ。フルレングスのエジェクターロッドハウジングにベンチレーテッドリブを装備、フロントサイトはレッドランプタイプとなっている

 

マズル部は新型パイソンと同様でステッププドクラウンとなっている。フロントサイトは先端部からセットスクリューで固定されている。ここも新型パイソンと同じだ

 

 ところがそんな筆者の元に松尾副編集長より「アナコンダのレポートをやってちょうだい」というmailが届いた。「えぇ~、なんのこっちゃ?」、まさかフランスからアメリカのコネチカット州へ出張取材…そんなバカな…と思い、メールをよく読んでみた。

 

 当時、コロナ禍ということもあり、各国の工業製品は様々な部材の流通のトラブルなどから生産が遅れている。アナコンダもその煽りを受けて数が生産できなかったようだ。そのためアメリカで発売されるやいなや即完売。すぐに希望小売価格の2倍とプレミア付きの価格になってしまったという。普通の価格ではどこにも売っておらず、そんなことからアメリカで取材する予定にしていた銃がなく、今月号に間に合わないというのだ。

 

グリップはHOGUEのソフトオーバーモールデッドラバーが標準装備だ。新型パイソンとグリップの互換性がある

 

ハンマーにはファイアリングピンがなく、フレーム側に組み込まれている。これは1955年のパイソン登場時から続くコルトのハイエンドリボルバーの特徴だ。構造的には新型パイソンの同じリーフスプリングとトランスファーバーの組み合わせとなっている

 

 .44特集号に新型アナコンダが載せられない…焦った松尾副編集長が考え出した奇策が、チェコ共和国のCZで新型アナコンダを取材するというものだった。 新型アナコンダが発表される少し前の2021年2月、CZグループはコルトホールディングカンパニーの全株式を取得、コルトはCZグループの傘下に入った。

 

 そんなコルトの新製品が親会社のCZにないはずがない…というのだ。奇しくも銃器関係のジャーナリストを集めたCZミーティングの開催が予定されており、CZに「ここに行けばアナコンダもあるの?」と聞いてみたら、答えは「もちろんあるよ!」だった。 “BINGO !”

 

シリンダーストップボルトは銃の右側にオフセットされている

 

矢印のパーツがトランスファーバーだ。トリガーを引くことでこれが上にせりあがってきて、ハンマーの打撃力をファイアリングピンに伝える

 

 CZミーティングの行なわれた会場のシューティングレンジでは、CZ社の全ラインナップに加えコルト社の製品も並べられ自由に射撃できるという。CZは以前からDan Wesson(ダン・ウエッソン)を子会社にしている。しかし、過去のCZミーティングにダン・ウエッソン製品が登場したことはない。やっぱりコルトのネームバリューはダン・ウエッソンの比ではないということか…。

 

CZミーティングの女性スタッフに、アナコンダを手にしてもらってモデルをお願いした。こうしてみるとアナコンダ8インチの巨大さがよく判る

 

 会場となったシューティングレンジでは、サービスライフルやスポーツハンドガンなど、カテゴリー別にレーンを分けている。そのスポーツハンドガンの中に目指すアナコンダが“いたっ!”。それも何と! 8インチと6インチが揃っている。それだけでなく今までヨーロッパで実銃を見る機会がなかった新型パイソンも用意されているではないか! CZはおそらく、“コルトの製品をヨーロッパで展開させよう”と本腰を入れているのだろう。

 

COLT ANACONDA 6"
全長:330mm(注2 )
バレル長:6インチ
重量:1,503g
使用弾:.44マグナム
装弾数:6発
材質:ステンレススチール
仕上げ:セミブライトステンレス

注2:コルトの資料では全長(OAL)は13 ”と書かれている。それだと330.2mmなのだが、全長はたぶん300mm程度のはずだ

 

シリンダーをスイングアウトすると、シリアルナンバー、口径が刻印されている。ラチェット&ステム(エジェクター)の形状が面白い

 

 すでにパイソンをアメリカで射撃をしてきた他国のガンライター達から、そのトリガーのフィーリングが良くなったことを聞かされていた。まずは今回の主役であるアナコンダは後回しにして、筆者が少年時代から心に刻み付けてきたパイソン、その新型をまず手に取り、じっくりと眺めた。

 

アナコンダ8 ”との違いは銃身長だけで、それ以外の部分は全く同じとなっている。アメリカにおけるメーカー希望小売価格はどちらも同じ$1,499だ。もっとも品不足なので現時点ではプレミア付き価格で取引されている

 

フレームトップに2本のフラットスクリューが見える。これは光学サイトを装着するためのタップが予め切ってあり、その部分をカバーしているスクリューだ

 

 ステンレス製のみという部分はちょっと残念だが(筆者はやはりブルーフィニッシュが好き)、これは確かに“パイソン”だ。ただシリンダーのロッキングノッチが不格好に長い(見慣れていないせいもある)という部分も気になるが、これがトリガーフィーリングの良さにも寄与しているのだろう。銃は“撃ってなんぼ”という存在だ。見栄えの良さを優先するわけにはいかない。

 

Photo&Report:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年2月号に掲載されたものです

 

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