2024/09/19
【実銃】キャリー志向のPPCカスタムを実射「Model 65 E.R.STROUP」【後編】
キャリー志向のPPCカスタムを実射
KフレームのPPCカスタムリボルバーがモデルガン化される。それもE.R.ストラウプの4インチモデルだ。アームズマガジンの400号を記念した限定モデルだという。それならば、このモデルをご存じでない若い読者の皆さんにストラウプカスタムの雄姿をご覧いただこう。これは80年代において、最高にカッコイイ実戦的リボルバーだったのだ。
さて、ココで話を戻して、松尾副編も世代的にストラウプ・カスタムには惹かれたクチであり、6インチのカッコ良さは重々分かった上で、より実戦的という意味で4インチのコンセプトに注目したのだと言う。
「作りたかったのは、KフレームのPPCカスタムです。かつてモデルガンが主流だった時代、パイソンやらNフレームの物は出ましたが、肝心のKフレームPPCカスタムは量産品では作られませんでした。ただ、今さらマッチ専用の本格的PPCカスタムを作っても時代に合わないので、マッチにも使えつつ、実用性も併せ持ち、見栄えもするこのストラウプカスタムを提案したのです」
なるほどだ。元々ナガタ氏はストリートで使えるキャリー志向の実用的PPC カスタムを目指していた。その4インチである。さらに一歩、踏み込んだものと言えるだろう。そうやって今一度眺めれば、輝きが増してくる。
黒が主流だったリブサイトをわざわざステンレスで特注したこだわりとオシャレ感。しかも、普通ならサイトラディウスを稼ぐべくリブの後端は思いっきり伸ばすはずが、それも控えてある。
グルーブを落としたスリムトリガーは磨き過ぎていないところが実用っぽいし、ワイドスパーのハンマーは絶対的に頼もしい。
また、ストラウプのロッキングシステムはS&Wと同じだから非常に使い心地が良く、圧巻なのは右サイドのリコイルシールド部に空いたプライマー確認用の小穴だ。ナガタ氏の銃にコレはなかった。ストラウプのオリジナルかどうかは不明だが、「この手があったか」のクレバーなアイデア。
いやはやシブい。競技用のツール然とした凄みに普段使いの軽快さが加わった、言わば公道レーサーのノリ。ベースはモデル65だから、イザとなったらマグナムだって撃てる。上品且つ華やかでありながら、戦闘能力は非常に高い。
後にも先にも、4インチのPPCカスタムはコレ一挺しか自分は見たことがない。6インチを逃したのはもちろん惜しいが、コイツを選んで正解だったと思う。
さらっと撃った。
購入時点で適度に使い込んだ跡があったから、コイツは単なるお飾り銃ではなく、実際にPPCでも撃っていたのだろう。しかしそうなると、バレルの消耗がやや心配。弾着があらぬ方向へ飛ぶフライヤーは、今のところ出てないけどね。
弾はマグナムは避け、38Spl+PのレミントンSJHP(125グレイン)を用意。できれば鉛弾を撃ちたかったが、弾不足の影響でやむなくジャケット弾となった。フロントサイトの幅広ブレイドを10点リングへ静かに乗せ、先ずはDAで発射!
わ~、トリガーがイイ~。力強くて滑らか。絶品のドライブだ。
4インチであっても、これだけ重量があれば(フル装填で1.3kg超え)落ち着いてじっくり狙えるし、リコイルも+Pが+Pに感じない。
コッキングしてSAも試す。こちらも切れが爽快だ。ほんの一息の力で、ストンとハンマーが落ちる。自分はPPC時代、ほぼノーマルのモデル686で撃ち通していたけど、こんなスイートなガンで戦いたかったとしみじみ思いますです。
50発弱で実射はあっさり終了。フライヤーは一発も出なかった。まだまだいけそう? イヤ、もう滅多には撃ちたくない。大事大事の温存コースです。
自分が渡米した80年代後半は、今思えばPPCはそろそろ下火に向かっていた。動きが少なく制限時間もタップリのこの競技は、より現実的なTRC(タクティカルリボルバーコース)とかIPSC等に凌駕されつつあった。コレには、オート銃の性能向上も関係している。弾数が限られるリボルバーは、徐々に活躍の場が狭くなっていた。あのナガタ氏も、その頃にはたったの一度もシャボーに顔を出してくれなかったしね。
しかしながらだ。例えば日本から来た旅行者でも、飛び入りで銃を借りて参加可能なほど緩くてオープンだったPPCマッチは、とても魅力があり温かみもあった。筆者にとってはまさに青春の1ページ。
そんな時代を思い起こさせてくれるモデルガンが、マジで完成する。この11月末より受注開始だ。基本的にはご覧の4インチを再現し、リコイルシールドの穴までちゃんと開く。大昔のPPCモデルガンは強度不足でバレルが折れるトラブルが多発したことを踏まえて、十分な強度も確保。ハンマーはコストの関係上、既存のセミワイドタイプが付き、そしてグリップは今ご覧のNill Grip風の樹脂製が装着される。期間限定の受注生産で、受注した分は100%製造とのことだ。
ああ嬉しい。モデルガン化でPPCカスタムが往年の光を取り戻す…までにはいかないにしても、当時を知る同好の間では懐かしさがこみ上げる逸品となろうし、若い鉄砲ファンにはきっと新鮮に映る違いない。
筆者がPPCに明け暮れた日々から30余年。まさかこんな日が来るなんて、夢にも思いませんでした。
Photo&Report:Gun Professionals サウスカロライナ支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年1月号に掲載されたものです
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