2024/09/19
【実銃】キャリー志向のPPCカスタム「Model 65 E.R.STROUP」【前編】
キャリー志向のPPCカスタム
KフレームのPPCカスタムリボルバーがモデルガン化される。それもE.R.ストラウプの4インチモデルだ。アームズマガジンの400号を記念した限定モデルだという。それならば、このモデルをご存じでない若い読者の皆さんにストラウプカスタムの雄姿をご覧いただこう。これは80年代において、最高にカッコイイ実戦的リボルバーだったのだ。
STROUPカスタム
6月の終わりに、編集部の松尾副編から以下のメールを受け取った。
「アームズマガジンの400号記念(2021年10月号)企画として何か特別な製品を出せないかという相談を受けまして、PPC リボルバーのストラウプカスタムを提案したところ、タナカさんがモデルガンで製作してくださることになりました」
コレには少々、面食らった。
同じPPCリボルバーでも、デイビスとかロンパワーとかクラークとかのメジャー処ではなく、ストラウプをご指名とは。しかも、6インチではなく、まさかの4インチで作るのだという―――。
古い読者の方なら、旧Gun誌80年12月号のイチロー・ナガタ氏の記事をご記憶だろう。氏が、PPC競技を超えた実戦使用をコンセプトに特注したPPCリボルバーがストラウプカスタムだった。
まあ懐かしい限り。41年も昔の話だ。当時は多くの読者があの銃に触発されたらしい。自分もその一人だった。しかしながら、若い読者の方々は、PPCと聞いてもたぶんピンとは来ないだろう。
PPCとは、かつて全米で流行ったポリスの射撃訓練コースのことだ。Police Practical Combat、Practical Pistol Course、Police Practical Course または Police Pistol Combat の略とされる。元々はFBIが1949年に考案したコースを軸に、50年代の後半にインディアナの大学がローエンフォースメント系のカリキュラムの一環として確立した。従来のブルズアイ一辺倒の訓練とは異なり、距離を変えシューティングポジションも変え、制限時間とリロードも含み、ウイークハンドも交えて最長50ヤードの距離から縦6インチ横4インチの楕円の10点リングを狙う。最初のPPCマッチは1959年、そのインディアナの大学で行なわれ、ほどなくNRAに公認されて全米へと広がっていった。
競技の性格上、使用する銃はひたすら重く大きくなる傾向があった。リコイルを抑え込むべく極太のヘビィーバレルに分厚いリブと巨大な前後サイトを載せるといったようにだ。そうなると、Practical(プラクティカル:実用的)とは少々言い難くなってくる。デューティガンとして四六時中持ち歩くには当然しんどく、本末転倒感がやや滲み出ていた。
ナガタ氏はこの点に着目し、もしも自分がポリスだったら、銃撃戦において犯人との距離があったり人質がいたらといったシチュエーションを想定し、パフォーマンスと携行性のバランスを重視したデザインを考えた。
すなわち、リブもバレルも細身にシェイプし、前後サイトも小振りにまとめて軽くコンパクトに仕上げ、どんな市販プライマーでも確実に発火できるようスプリングは強めのノーマルのままとし、デホーンドが主流だったハンマーは逆にワイドスパーで慣性重量も稼ぐといった具合にだ。そのアイデアを、当時シスコ界隈のベイエリアで鳴らしていたガンスミスのE.R.STROUPに持ち込んで完成したのがこの“グランドマスター”カスタムだった。
で、だ。ナガタ氏のカスタムは6インチ銃身であり、てっきりそれ一挺のワンオフかと自分は思っていたのが、カリフォルニア在住時代の2006年に、カストロ・バレーのガンショップで一気に二挺の中古を発見。一挺は6インチで、もう一挺はまさかの4インチだったのだ。
実に驚いた。無いはずのものがあり、しかも一挺は4インチ!
どっちを選ぶか、自分は相当に迷った。お値段は各900ドルで、両方はとても無理。一番人気は6インチなれど、4インチには物珍しさとともにあがない難い魅力が漂っていた。一言で言ってしまえば、それはもう「『西部警察パートⅡ』のPPCパイソン4インチ」である。
舘ひろし演じる鳩村刑事が、AGH製の黒ショルダーに収めていたパイソンのPPCカスタム…あのスラブバレルの4インチが異常にカッコ良かった。放映当時(82年)は「4インチのPPC ?しかもパイソンベース?」と、あまりの荒唐無稽を感じつつもクール過ぎて仕方がなく、世間でも人気が炸裂。
自分としては、「パイソンではないにしても、短いPPCカスタムも実在したんだ!」という感動にスッポリと包まれて、4インチの購入を決めたのであった。
なお、それら二挺は、日本人がショップに持ち込んだことがほどなく判明。ただしその人物はセカンドオーナーで、元々は日本人ガンスミスから受け継いだものとの事だった。残念ながら情報はそこでストップ。二挺も持っていたなんて、オリジナルのオーナーは相当な好きものだったのだろう。ああ、もっと頑張って真相を探るべきだったか。
いずれにしても、センスは抜群に良く、かなり魅力的なカスタムには違いないから、恐らくストラウプ氏も気に入ってラインナップに加えていたのではなかろうか。自分自身は、ストラウプ氏との面識はない。が、確か90年代の中頃に、シスコのガンショーで偶然ストラウプ氏のご家族がショップの備品(ストラウプ氏の遺品)を売っていたのを目撃したことはある。また一時期、氏がカスタムした38Splワッドカッターを撃つミッドレンジの1911を所持したこともあった。金に困って売り払ったのが大後悔。今じゃマガジンだけで100ドル突破の代物だ。
Photo&Report:Gun Professionals サウスカロライナ支局
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年1月号に掲載されたものです
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