2024/08/09
首都を担当するパリ警視庁の「BRI」とフランス最強の対テロ特殊部隊「GIGN」【ユーロサトリ2024】
フランスのLE特殊部隊「BRI」と「GIGN」
パリオリンピックを目前に控えた6月。まさにフランス・パリで開催された国際防衛装備・安全保障展示会「ユーロサトリ2024」にて、フランスが誇る軍・法執行機関の特殊部隊による「ダイナミック・デモンストレーション」が報道陣に公開された。パリオリンピックの警備と、テロ・凶悪犯罪抑止に焦点を当てたこの訓練展示には、フランス陸軍のGCP、国家警察のRAIDとBRI、そして国家憲兵隊のGIGNが参加している。ここでは、とりわけ気になる彼らの現行装備に着目しつつ、デモンストレーションの模様をレポートしていこう。
首都を担当するパリ警視庁の「BRI」
RAIDと同じく国家警察のBRI(捜査介入部)はパリ警視庁に所属し、基本的にはパリにおけるテロや凶悪犯罪への対処が主な任務である。部隊章のモチーフはパリを見下ろすノートルダム寺院のガーゴイル。デモのシナリオは現実味のある自爆テロを想定し、主に繁華街において自爆テロ犯を阻止するというものだ。法執行機関は要注意人物が浮上すればマークしてテロを未然に防ごうとするが、テロが発生した際には特殊部隊であるBRI-BAC(Brigade anticommando:コマンド対策部隊)が対処することになる。デモではBRI-BACの隊員がマークされた自爆テロ犯を実行前に無力化し、爆発装置を除去。続いて第7海兵歩兵連隊のコマンドが爆破テロを計画したテロリストのアジトに突入し、CQBを展開した。
BRI
Brigade de recherche et d'intervention
フランス最強の対テロ特殊部隊「GIGN」
国家憲兵隊のGIGNはフランス最強の対テロ特殊部隊である。それは、隊員全員が落下傘降下章を持ち、高水準の射撃技術を維持するため毎日最低50発の射撃訓練が義務付けられていることからも窺える。今年50周年を迎えたGIGNは当初20名からなるチーム4個の編制で、ニコラ・サルコジ大統領の時代に組織の拡張を図り(現在およそ600名)、国内だけなく海外任務にも従事している。なお、フランス国家憲兵隊は法執行機関にとどまらずフランス軍の1部を構成することから警察と軍の両方の特性を持ち、軍と連携する任務もある。イギリスのSASやアメリカのグリーンベレー、SEALsに加え、日本のSATとも国際共同訓練を行なうなど、フランスの代表的な特殊部隊と言えるだろう。
装備する銃器もユニークで、AK弾の利点に着目してCZ BREN2の7.62mm×39AK弾バージョンを近年導入しつつあるが、このデモンストレーションではSIG MCXやHK416など5.56mm×45NATO弾仕様のアサルトライフルを使用していた。
また、オート全盛の時代になっても頑なにマニューランMR73リボルバーを装備し、介入部隊の新人入隊に際し、部隊内の信頼関係を高めるためアーマーを着た新人の胴体にクレー標的を付け、古参の隊員が25mの距離からMR73で撃ち抜くという儀式があることでも知られる。もっとも、任務時にはGIGN隊員もオートを携行し、MR73を携行するのはパレードなどの際にとどめているようだ。
このデモにおけるGIGNのシナリオは、海外で敵対勢力に占拠されたフランス大使館から人員を救出するというもの。政変や紛争で混乱する国からの脱出が困難な場合、大使館員などの救出任務はGIGNが担当するため、様々な状況を想定して訓練されている。
まず、GIGNの隊員大使館周辺で配置につき、民間人に扮したスナイパーが突然観客席から大使館内のターゲットを排除していくというサプライズ演出があった。その後、GIGN隊員が突入を開始する。突入の最中、男が重要書類を持って逃走を図るものの、K9が阻止して書類を奪還。一方、大使館に押し寄せてきた暴徒をランクルのルーフからMINIMIで牽制しつつ、煙幕を展開して保護した大使館員を車輌に乗せ安全な場所へと移動し、デモは終了となった。
GIGN
Groupe d’intervention de la gendarmerie nationale
まとめ
パリオリンピックの警備においてはBRI、RAID、そしてGIGNの各特殊部隊はテロや凶悪犯罪に備えて、それぞれの特性に応じた配置がなされている。すでに要注意人物はフランスの法執行機関や情報機関にマークされ、テロを未然に防ぐべく努力が払われているはずだ。言うまでもないが、有力な特殊部隊が存在していることは、それだけでも大きなテロ・凶悪犯罪抑止力となる。続くパラリンピックも含め、この一大イベントが何事もなく終了できたとしたら、それは「彼らの働きがあったから」と言えるだろう。
TEXT&Photos:Tomonari Sakurai
この記事は月刊アームズマガジン2024年9月号に掲載されたものです。
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