ミリタリー

2024/08/02

フランス・パリで開催された国際防衛装備・安全保障展示会「ユーロサトリ2024」

 

フランス全土における対テロ任務(捜査、支援、介入、抑止など)を手掛けるRAID

 

 パリオリンピックを目前に控えた6月。まさにフランス・パリで開催された国際防衛装備・安全保障展示会「ユーロサトリ2024」にて、フランスが誇る軍・法執行機関の特殊部隊による「ダイナミック・デモンストレーション」が報道陣に公開された。パリオリンピックの警備と、テロ・凶悪犯罪抑止に焦点を当てたこの訓練展示には、フランス陸軍のGCP、国家警察のRAIDとBRI、そして国家憲兵隊のGIGNが参加している。ここでは、とりわけ気になる彼らの現行装備に着目しつつ、デモンストレーションの模様をレポートしていこう。

 

 

フランスのLE特殊部隊


 法執行機関(LE)の特殊部隊は国家警察(Police nationale de France)所属のRAID(Recherche, Assistance, Intervention,Dissuasion:特別介入部隊)、BRI(Brigade de recherche et d'intervention:捜査介入部)、そして国家憲兵隊(Gendarmerie nationale)所属のGIGN(Groupe d’intervention de la gendarmerie nationale:治安介入部隊)が参加した。フランスの法執行機関は国家警察が都市圏、国家憲兵隊が地方圏と役割を分担しており(ただし国家警察が一部地方圏を担当するなどの例外はある)、それぞれの特殊部隊の任務も所属機関に概ね準じている。

 

国内のテロに対処する国家警察の特殊部隊「RAID」


 国家警察のRAID(特別介入部隊)は国家警察総局(DGPN)に所属し、2015年4月に国家警察の特殊部隊GIPNがRAIDに統合されフランス全土における対テロ任務(捜査、支援、介入、抑止など)を手掛けるようになった。ペリフェリック(パリ市の境界とされる環状高速道)を境に内側はパリ警視庁所属のBRIが、外側は国家警察総局所属のRAIDと管轄が分かれているが、バタクラン劇場を含むパリ同時多発テロ(2015年11月)など大規模な事件の際は、FIPN(国家警察介入総隊)の下RAIDとBRIが共同で対処する場合もある。さらに、必要に応じて国家憲兵隊所属のGIGNの投入も想定されているようだ。
 このデモンストレーションにおいて、RAIDのシナリオはオリンピックを想定。試合後2階建てバスで移動中のラグビーチームがバスジャックに遭遇し、空港へ向かうところをRAIDが迎撃、解放するというものだった。RAIDはタラップ付きの特殊車輌を用いて、バスの1階部分と2階部分から同時に突入。犯人グループを制圧した後選手たちは保護され、負傷した選手の応急処置まで展示された。

 

RAID

Recherche, Assistance, Intervention, Dissuasion

 

バスジャックされた2階建てバスからラグビーチームを救出すべくRAIDが行動を開始。カナダCambi製Black Wolf装甲兵員輸送車のルーフに備えたタラップを使って1階と2階部分同時に突入する

 

車内に突入したRAID隊員がテロリストを排除する一方、一部の隊員は外側でサポートする

 

解放される選手たち。中にテロリストが紛れているかもしれないので油断はできない

 

負傷して歩けないラグビー選手を救護する

 

車内に爆発装置などがないかK9を使ってチェックする

 

RAIDの突入要員。分厚いバリスティックシールドが付く兜型のヘルメット(かつてGIGNが採用してトレードマークのようになっていた)や鎧のようなアーマーが印象的だ。メインウェポンはHK G36Cで、EOTech HWSやAN/PEQ-15レーザーサイト、SUREFIRE製ウェポンライトなどをセットアップ

 

SIG MCX Virtusを装備するRAID隊員。ブルーの訓練弾仕様となっている

 

RAIDはボックスマガジンタイプのセミオートショットガンに利点を見出し、GENESIS ArmsのGEN-12 10.5インチ(12ゲージ、10連マガジン)を採用。以前はサイガを装備していた

 

RAIDのスナイパー(左の2名)はPGM PRECISIONのULTIMA RATIO(INTERVENTRIONバレル仕様、サプレッサー装備)にNightforce OpticsのATACR 5-25×56を搭載。右の隊員はHK417にSchmidt & Bender 1-8x24 PM IIにAimpoint MicroT-2を組み合わせている

 

シールド担当の隊員はアサルトライフルを携行せず、バディとなるライフルマンの防護に徹する。これは、かつてGIGNのシールド担当が負傷しバディを危険にさらしてしまった教訓に基づいている。代わりにグロックを2挺に加え、法執行機関の特殊部隊らしく犯人の動きを止められる低致死性のTASER(テイザー)を携行

 

TEXT&Photos:Tomonari Sakurai

 

この記事は月刊アームズマガジン2024年9月号に掲載されたものです。

 

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