アウトドア

2024/07/17

30年来の相棒カワサキ「GPZ900R ニンジャ」とキャンプと焚き火

 

「キャンプ」と「撮影」と「焚火」のためにカワサキ「GPZ900R」を駆る

 

GPZ900R

 

 コロナ禍の行動制限が緩くなってすぐのころ最初に向かった場所がある。それまで何度となく通ってはいたが、そこを目的地として行ったことはなかった。自分は写真撮影を生業としているが、撮るのはその過半数が銃、ナイフ等のいわゆる物騒なモノばかり。所属する写真家協会の写真展などでも私の仕事というお題で作品を求められるがなかなか物騒なモノの写真は出しづらい、たまには綺麗なモノや清々しいモノも撮りたいものだ。そんなことを思ってフラッとその場所に来るようになった。

 

 バイクにキャンプ道具と撮影機材を積んで、最寄りのICから高速道路で北へ向かった。相棒は今年で33年目を迎えたカワサキ「GPZ900R」。92年に購入し、その後間もなく日本一周、その時はまさかこれほどの長い付き合いになるとは思わなかった。せいぜい10年くらいかなと…。走行距離53,000マイルの時にエンジンの仕様変更を兼ねてオーバーホール、今現在90,000マイルを少し過ぎた辺り、そろそろ2回目のオーバーホールも考えなければならない。

 

GPZ900R
積んできた荷物一式、大体いつもこの物量。これより多くなる時はサイドバッグ追加

 

 実は昨年末、年明けツーリングの準備をしていたところウンともスンとも言わなくなり、ここ20年ほど診てもらっていたショップに行ったのだが、「もうウチじゃ診られない」といわれ、途方に暮れてしまった。幸いなことに、同じGPZ900R乗りの友達の紹介で、横浜にあるGPZ900Rに強いショップで診てもらうことが出来た。診断結果は、電気系全取り換え、しかし既に欠品部品も多くなっていて、やはりどこのショップでも対応できるってわけにはいかないらしい。今回も欠品部品は他車流用と新規製作、仕様変更等で仕上げてもらい、軽く慣らし後800マイル少々を走ったところだ。

 家を出てトリップメーターが400マイルを超えたあたりで高速道路を降り、下道でお気に入りのキャンプ場に向かう。昨年まであまりなかった「クマ出没のため入山禁止」の看板がかなり増えている。途中給油のために入ったGSでも店員さんに、「このあたりはクマ出ているから気をつけてくださいね」と言われた。キャンプツーリングの時は一応クマ除けスプレーはタンクバックの中に入れてあるが、入れているだけで携帯はしていないのが実情だった。理由としてはそれまで持っていたスプレーが大きすぎるからだ。腰に下げても良いのだが、そうしていた知り合いのハンターは、うっかり噴射してしまったという話も聞いた。今回からはカメラ用のウエストバッグに入れて携帯できるような、少し小さなサイズのスプレーを用意した。今まで実際に使ったことはない。この製品には、トレーニング用のスプレーが付いていたので、今回試してみたところ、射程距離4~5メートルってところか。この距離でクマと対峙するのは勘弁して欲しい。できればこのままずっと使わずにいたいものだ。

 

今回用意してきたクマ除け、今まで使っていたモノの半分以下の大きさ

 

 キャンプ場で受付を済ませ、夜のお楽しみも考慮して場所探し。1泊数百円という事も、ついついこっち方面に向かってしまう理由の一つだ。関東より西の方が設備の整ったお高いところが多い気がする。一昔前はどこもこんな料金設定だったと思うが、今は違うらしい。バイクツーリングを始めたころ、今よりも、もっともっとお金がなかった。だから遠くまで行く手段としてキャンプは最適な手段だった。しかしブームになったからなのか、今までに行ったことのあるキャンプ場でもそれまでの何倍もの料金になっていたりする。これじゃ今どきの若者ライダーは厳しいだろうなぁと気の毒に思う。

 サッと設営し、テントの中で軽く山歩きを出来る格好に着替え、再び出発、行先は奥入瀬川。

 

GPZ900R
渓流脇に停めてから歩き始める


 湖を左に見ながら国道を進むと、数分で小さな川に出る。ここが奥入瀬渓流入口。毎回ここを通るときはエンジンの回転数を出来るだけ落として、走りながらシールドを開けて深呼吸をする。すると自分の肺が綺麗になったような気になれるのだ。バイクもきっと嬉しいだろう。エアクリーナーを通った空気がキャブ~シリンダーの中を綺麗にしてくれるだろう(まぁ、気のせいなのだが)。

 路肩にアスファルトが露出しているところを探してバイクを停める。積んできた三脚にカメラを載せた状態で散策スタート。川沿いに遊歩道があって柵やロープが張ってある。それに沿ってしばらく歩いて気になったところで撮影、三脚を担いで歩いて移動、駐車位置に戻ってまたバイクで移動、あとはこれの繰り返し。そうして少しずつ川に沿って下っていく。

 


 こういう撮影をしていると写真学校時代の恩師の言葉をよく思い出す。「プロなら与えられた条件で勝負しろ」 そこ入っちゃダメなんじゃない?て場面で撮影している人をたまに見掛ける。今回は写真を撮っている人ではなかったが、70歳代くらいの老夫婦と思われる2人連れがロープを超えて木の枝を折って何かを採取しているようだった。言葉を交わしたわけではないのでわからないが、注意書きが読めない外国の方か?
こういう風景を撮っていると、心が洗われる気がするのだ。こういう瞬間はこれからも大事にしていきたい。だからあまり深追いはしない、最近はクマが怖いしまた来ればよいからだ。

 


 撮影を切り上げて陽のあるうちにキャンプサイトに戻り、今度は薪割りだ。長年使っている焚火台がそんなに大きなモノじゃないから台に乗せやすいサイズに割る。それと初期段階で火を育てる用の少し細長い木屑を用意する。

 

バイクでの移動には最適なサイズの鉈

 

DEW ブランド d5 kokko ミニ キャンプ 鉈 440C ブラック x グレーマイカルタ DEW HARA KNIFE

¥26,400

“kokko” フィンランド語で「焚火」を意味する名の通り、焚火を行う際のバトニングやフェザースティックといった作業に適した、鉈の良いところをブレンドしたナイフ。DEW原氏のバランスよく和と洋の要素を落とし込んだデザインに道具として使いやすさを組み入れた個性的なモデル。


 そのあと、長いトンネルの先5キロほど離れたところにある温泉に入ってから買い出しだ。米とみそ汁は持ってきているからちょっとした食材と地ビール、飲み物と氷を買った。町中のコンビニと違い、氷も大きなモノしかなくて一人では使いきれないがどうしても、ビールは冷たくないと嫌なので仕方ない。戻るときもまた長いトンネルを通るのだが、ここでクマの目撃情報があったらしい。見た人の証言によると毛が茶色だったそうだ。つまりそれってツキノワグマではなくヒグマじゃないのか。十数年前、秋田の熊牧場から飼育員さんを襲った後脱走したクマがいた。それが山で繫殖したやつなんじゃないかと現地では噂になっていた。最近じゃ東北に限らず関東や北陸でも熊の被害は聞くので注意はしておこう。

 

暗くなると何かと面倒になるので明るいうちに薪割り

 

初期段階で火を育てるための木を細く切る。フェザースティックを作るのと同じ要領

 

まったく洒落っ気のない夕飯、米とインスタントみそ汁と調味料はいつも荷物の中に入っているのでこっちで買った食材は肉とわずかな野菜だけ

 

うっすらと明かりがあるうちに着火

 

少し風が強く、風向きがよく変わる日だった

 

 完全に陽が落ちる前にテントの中で夕食を済ませる。そしてうす暗くなった湖畔で焚火開始。小さい火を育ててだんだんと大きくしていく。ある程度火が安定したあたりで椅子に座り、あとはゆっくりと飲酒しながら火を眺める。毎度キャンプサイトで焚火をする前は、今夜こそ早く寝よう、と思うのだが、いざ火をおこすと、なぜだか時間が過ぎるのがもの凄く速い。そして今夜も時間と酒量を無駄に消費して、あっという間に数時間が過ぎていた。自分はこうやって心の洗濯をしている、またそのうち癒されに来よう。

 

~旅の思い出~
子供のころ一所懸命探したのに1度も見つけられなかった深山クワガタ

 

カワサキ GPZ900R A8型

 

GPZ900R

GPZ900R
本文中にもあるが速度はマイル表記の1992年のイギリス仕様。地球3周半分を走った個体、もうどこもかしこもヤレているがコイツ以上に好きになれる車両が存在しない


 

TEXT:玉井久義(ホビージャパン)

 

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