実銃

2024/05/19

【実銃】カスタムされたHERA AEMS製ARクローンの実力は?「SRB16 & 7SIX2」【後編】

 

HERA ARMS
 SRB16 & 7SIX2 

 

 

 ARクローンが市場に溢れている今、それぞれの製品から特徴を見出すことは難しい。そんな中、ドイツのHERAアームズはかなり個性的でエレガントな製品を展開している。外観だけでなく、製品品質や加工精度も極めて高く、注目に値する存在だ。

 

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実射

 

アトリエで作業中のヨージ氏。ちょっとした加工を頼みたいときは、ビールを持っていくとこの笑顔で気軽に引き受けてくれる

 

 射撃は.223RemのHERA SRBのみだが、できれば、組み込まれているマッチトリガーを活かせるような100m以上のアウトドアレンジで実施したかったが、あいにくそれが叶わなかった。近距離のインドアレンジなので、あくまでもHERA ARMSの撃ち味を確認するに留まったことをあらかじめお断りしておきたい。

 

銃に精通しているからと言って、射撃にも精通しているとは限らない。ヨージ氏にHERA SRBを撃って貰ったら、発射の瞬間目を閉じてしまった。しかしこれはよくあることだ。ヨージ氏は優秀なガンスミスであって、特殊部隊や射撃競技のエキスパートではないのだ


 HERA製のマガジンに弾を詰め込む。MAGPULのPMAGにすっかり慣れた手の中でHERAのマガジンは新鮮な感触だ。HERAは.223のポリマーマガジンだけでも5種類をラインナップしている。


 ワイドなチャージングハンドルを引く。もっともこのパーツはHERA製ではない。高度にセッティングされたセミオートマチックピストルの場合、スライドを引く感触がシルキータッチとなるが、この銃のチャージングハンドルはそれとは少し違う。それでもかなり良質な感触だ。

 


 この銃はトリガープルがとにかく軽い。エイミングしながら、トリガーに指を掛けようとすると、ちょっと触れただけでシアが切れる。そんなマッチトリガーに神経を集中させた。しかし慣れてくると、この軽くキレの良いマッチトリガーが素晴らしく感じる。射撃が楽しくなり、ついつい連射をしてしまう。そんな感触なのだ。


 トリガーを引くと、マズルフラッシュを視認し、ほぼ同時に真っ直ぐなリコイルが伝わってくる。装着されているHERA製のコンペンセイターはLC Gen.2だ。LCとは、Linear Compensator(リニアコンペンセイター)の略で、内部に12個の拡張チェンバーを持ち、マズルフラッシュがシューターに降りかかることないように前方にまとめて吐き出す。そのためマズルフラッシュも大きくなる。このあたりは純粋にスポーツ用ARというわけだ。

 

 

銃の操作は完璧。マガジンを挿入してチャージングハンドルを引く動作など、流れるような滑らかさだ。こうしてみると、16インチバレルはかなり長く感じる。現代のバトルライフルはもう少し短くなっている。SRBは民間向けスポーツライフルなのだ。もちろんショートバレルもあり、7.5”バレルまで用意されている

 

 本来HERA SRBは、CCと呼ばれるマズルコンペンセイターが標準装備なのだが、ヨージ氏がL CGen.2に付け替えた。このLC Gen.2にマズルジャンプを抑え込む機能はないが、素直なリコイルで決して扱い難いものではない。


 ドイツ製らしい高品位な質感は、AR-15をより一層魅力的なものにしている。同じドイツ製でも、HK416とは性格がだいぶ異なる。その性能は使い込んでみないとわからないが、デザインとしてどちらがより洗練されているのはといえばHERAに軍配が上がるだろう。HERAアームズのAR-15は、エレガントな雰囲気が漂うのだ。

 

マズルコンペンセイターLC Gen.2の特徴がよく分かる。マズルフラッシュを消そうせず、まとめて前方に吹き出させる。射撃しているとこのマズルフラッシュは見えるが、視界を塞いでしまうほど無駄に大きく広がってはいない。横に並んだシューターは快適だ


 未来的なデザインのCCSストックもおもちゃっぽさがなくこれまた魅力的だ。単にデザインが良いだけでなく、グラスファイバーを採用するなど質感も高い。他にもCQRストックやHRS LIGHTストックなど魅力的なオリジナルデザインのストックをHERAアームズは用意している。

 CQRストックとCQRフォアグリップについては、本誌2021年11月号に“映画『トゥモロー・ウォー』で使用された銃器”としてAkitaさんがご紹介した。この映画のメインウエポンであるCQBレングスカービンMK.IIIに装着されていたものだ。

 

マグウェルのファンネルのおかげでマガジンの装着も容易だ。このマガジンはHERA製H3Lで、30連の長さがあるが、実際は10連だ。装弾数規制のある国に向けて販売している


 現在AR-15クローンは数えきれないほど市場に溢れている。その中でHERAアームズは独特なデザインで魅力を放つ存在だ。近年はAR-15やAR-10に留まらず、ボルトアクションライフルやピストルキャリバーカービンなども製品化しており、HERAアームズから今後も目を離すことはできない。

 

マッチトリガーとそれにふさわしいハイクォリティなライフルとの相乗効果で、極上の射撃が楽しめる。そんなことがあるのかって?答えはYesだ。例えばガジガジのトリガープルにガタの大きいボルトの銃を撃っても快適ではない。粗雑に作られたAKや安価なショットガンに良くあるが、そういった銃を撃つと、内部メカのガリゴリした音が残響音でこもって聞こえて、決して気持ちの良い射撃ができない。命を懸けた戦闘であれば贅沢が言ってられないが、幸いなことに私達はそんな環境にいるわけではない。射撃は楽しむための道具なのだ。出来の良い銃は射撃を快適なものにしてくれる

 

Photo&Text:Tomonari SAKURAI
撮影協力 : Farkas Arms Kft./József Farkas GIS Technologies

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年3月号に掲載されたものです

 

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